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2023年に亡くなった方々8名を追悼します

こんばんは、烏丸百九です。
毎度月末ギリギリの更新となってしまい、申し訳ありません。

今年最後の更新ということで、今回は2023年のまとめとして、2023年に亡くなった中から8名の方々を追悼し、故人の業績を烏丸なりにご紹介すると共に、どうか故人が安らかな眠りにつかれますよう、お祈りしようと思います。

2023年のサイテーな政治活動家については、YouTubeで別途まとめ配信をしましたので、よければそちらも合わせてご覧下さい。

本当に辛いことばかりの2023年でしたが、どうか2024年もよろしくお願いいたします。ともに生き延びましょう。

※以下、故人に関する辛い表現が含まれます。また、一部敬称を略しています。


ryuchell

ryuchellさん。

7月12日、タレントのryuchellさんの死去が報じられました。27歳でした。

ryuchellさんは沖縄県出身で、高校卒業後に上京し、原宿でショップ店員として働きながら、読者モデルとして活躍しました。

その後、パートナーのpecoさんとともに徐々にテレビ露出が増え、国民的な有名人となりました。また、バイセクシャルである事を公言していたことから、日本の代表的なLGBTQアイコンの一人でもありました。

一方、2022年には「夫として生きることにつらさを感じるように」なり、pecoさんと夫妻としての関係を解消することを選んだという内容のメッセージを発信。以降は既に生まれていたお子さんを育てつつも、pecoさんとの同居生活を終えていました。

しかしこの「離婚」騒動以降、週刊誌メディア等を中心に激しくバッシングを受けるようになり、急速にフェミニンな見た目になったことも手伝って、根拠の乏しい中傷や憶測がSNSなどで繰り返されるようになりました。

そうした状況のため、丁度一年前の今日、私はryuchellさんを擁護する内容のnoteを投稿しています(当時は「彼」という代名詞を用いていますが、晩年のryuchellさんはジェンダーを特定しない表現を好んでいたようです)。

しかし、このように非常に残念な結果となった今、無意味で不十分な活動だったのではないか? 生前の同氏のためにもっと何か出来たのでは? と慚愧に堪えません。

どうかryuchellさんが安らかな眠りにつかれますようお祈り申し上げるとともに、死後も一切自らの責任を認めないどころか、今なお故人の誹謗を続けている一部の中傷犯たちに、然るべき裁きが下ることを心より望みます。

ローラ・アン・カールトン

ローラ・アン・カールトンさん。

8月18日、ローラ・アン・"ローリー"・カールトン(Laura Ann "Lauri" Carleton)さんは、カリフォルニア州シーダーグレンにあった、自身が経営する衣料品店で、暴漢に銃撃され殺害されました。66歳でした。

カールトンさんはアメリカのアート・センター・カレッジ・オブ・デザインに学び、アパレル会社勤務後に独立。9人のお子さんを持つ母親でもありました。

彼女は熱心なLGBTQ支援(アライ)活動家であり、お店にもレインボー・プライドフラッグを掲げていましたが、それがきっかけでアンチLGBTQであった犯人から一方的に憎まれ、突然に襲われて殺されました。

犯人は以前にこのnoteでも紹介したことのある反トランス・反フェミニズムデマゴーグで極右のマット・ウォルシュの熱心な支持者であったようですが、事件後駆けつけた警察に銃撃され死亡したことから、詳しい動機は今も明らかになっていません。

カールトンさんは死後、その生前の業績を称えられ、ジェイミー・リー・カーティスなどの著名人からも死を悼まれました。ご遺族は次のようなコメントを残しています。

「私はただ、彼女が誰であったかを世界に記憶してもらいたい。そして彼女が大切にしていた場所で、大好きなことをして、彼女にとってとても大切なものを守って亡くなったことを」

ニューヨークタイムズ記事より

カールトンさんが安らかな眠りにつかれますようお祈り申し上げます。

坂本龍一

3月28日、音楽家の坂本龍一さんが長年闘病していたガンのため、帰らぬ人となりました。71歳でした。

彼のミュージシャンとしての偉大な業績については、ここで特に語る必要もない(私にそんな能力ないし)と思うので省略します。晩年の演奏で私が最も好きなのは上の動画です(聴いたことない人は是非)。

近年では社会活動家としても多大な存在感を発揮していました。左派には脱原発の主張が知られていますが、晩年はなんと言っても新宿外苑再開発問題について、率直なコメントを続けていたことで有名です。彼の死後には、追悼を兼ねて大規模な反対運動も形成されました。そして亡くなられてから約一ヶ月後、彼が生前に小池東京都知事宛に送っていた手紙が公開されました。

東京都都知事
小池百合子様
突然のお手紙、失礼します。
私は音楽家の坂本龍一です。
神宮外苑の再開発について私の考えをお伝えしたく筆をとりました。
どうかご一読ください。
率直に言って、目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません。
これらの樹々はどんな人にも恩恵をもたらしますが、開発によって恩恵を得るのは一握りの富裕層にしか過ぎません。この樹々は一度失ったら二度と取り戻すことができない自然です。
私が住むニューヨークでは、2007年、当時のブルームバーグ市長が市内に100万本の木を植えるというプロジェクトをスタートさせました。環境面や心の健康への配慮、社会正義、そして何より未来のためであるとの目標をかかげてのこと、慧眼です。NY市に追随するように、ボストンやLAなどのアメリカの大都市や中規模都市でも植林キャンペーンが進んでいます。詳しくはこちらの記事をご参照ください;
https://globe.asahi.com/article/14629731
いま世界はSDGsを推進していますが、神宮外苑の開発はとても持続可能なものとは言えません。持続可能であらんとするなら、これらの樹々を私たちが未来の子供達へと手渡せるよう、現在進められている神宮外苑地区再開発計画を中断し、計画を見直すべきです。
東京を「都市と自然の聖地」と位置づけ、そのゴールに向け政治主導をすることこそ、世界の称賛を得るのではないでしょうか。
そして、神宮外苑を未来永劫守るためにも、むしろこの機会に神宮外苑を日本の名勝として指定していただくことを謹んでお願いしたく存じます。
あなたのリーダーシップに期待します。
令和5年2月24日
坂本龍一

東京新聞記事より

これに対し小池は「(開発を進めている)事業者に言えばいい」などと一蹴したそうですが、彼女は自分がイスラエルの軍事企業と提携してパレスチナの虐殺に加担している伊藤忠商事とか、アーティストが提供した作品をグチャグチャに改造して弁償もしない三井不動産とかの金の亡者のクズみたいな企業の手先でしかなく、政治家としての能力が全くないと暗に自白しているように思います。

坂本龍一さんが安らかな眠りにつかれますようお祈り申し上げるとともに、故人の望みが実現するよう、私も出来る限りの支援をする所存です。

イヴァン・ロドリゲス・メンドーサ&アブディエル・ディアス

イヴァン・ロドリゲス・メンドーサさん(画像左)とアブディエル・ディアスさん。

11月7日、地元の教師仲間であったイヴァン・ロドリゲス・メンドーサ(Iván Rodríguez Mendoza)さんとアブディエル・ディアス(Abdiel Díaz)さんは、パナマ共和国の西パナマ県チャメ地区で殺害されました。没年齢は公表されていません。

二人の死は、カナダに本社を置くグローバル大企業のファースト・クォンタム・ミネラルズ社が、パナマ政府と10月に数十億ドル規模の銅鉱山支配に関する契約を結んだことに関連して起きました。この契約は搾取的で、パナマの憲法に違反しているとも指摘されており、また現地住民は長年ミネラルズ社の強引な土地開発による飲料水の不足などに苦しめられていました(参考記事)。ハリウッド俳優のレオナルド・ディカプリオなどもミネラルズ社に反対する声明を出したことから、地元民の間で大規模な抗議運動が盛り上がりました。

しかし、抗議活動により道路を閉鎖されたことに不満を抱いたアメリカ人男性が、抗議中のメンドーサさんとディアスさんを突然襲って射殺し、自身の車を強引に通行させようとしました。男は殺人容疑で逮捕されました。

捕まった殺人犯と、メンドーサさんと思われる男性の後ろ姿。

事件後、ネット上ではこの白人の殺人犯が「かっこいい」「環境活動家と戦う闘士だ」などと絶賛され、メンドーサさんとディアスさんは”環境活動家”などではなかったにもかかわらず、その死を嘲笑されつづける羽目に陥りました。現在、地元では二人の評価は高まっており、パナマ国家をグローバル企業から守ろうとした英雄だと見る向きもあるようです。

イヴァン・ロドリゲス・メンドーサさんとアブディエル・ディアスさんが安らかな眠りにつかれますようお祈り申し上げるとともに、凶悪な殺人鬼に然るべき法の裁きが下ること、また殺人鬼を賞賛した人々が、メンドーサさんとディアスさんの名前を二度と忘れなくなることを強く望みます。

今井美亜里

2020年、ABEMA NEWSに出演した今井さん(画像右)。

2月某日、今井美亜里さんは交通事故で死去しました。没年齢は公表されていません。

今井さんはXジェンダーの当事者であり、パートナーの近藤佳さんと(法律上は)同性カップルの関係にありました。2020年には日本でもかなり早くパートナーシップ制度を利用した人物の一人となり、ABEMA NEWSに出演されるなどして、LGBTQの人権擁護を訴えていました。

しかし今年交通事故で突然他界されてしまったことで、8月の事故の公判では(LGBTQ理解増進法の成立後にも関わらず)近藤さんは裁判所から遺族としての陳述を認められませんでした

今井美亜里さんが安らかな眠りにつかれますようお祈り申し上げるとともに、故人の望みでもあった一刻も早い同性婚の法制化を願います。

ブリアナ・ゲイ

ゲイさん。彼女は有名なTikTokerでもあった。

イングランド北西部のチェシャーで2月11日、トランスジェンダー少女のブリアナ・ゲイ(Brianna Ghey)さんが暴行により殺害されました。16歳でした。

彼女はバーチウッドコミュニティ高校に通う学生であり、トランスであることでイジメや嫌がらせの目に遭ってもいたと言われるものの、明るくカリスマ性があり、また人気のあるTikTokerでもありました。

犯人は同世代の男女二人組のティーンエイジャーで、生前のゲイさんを虐めており、また「殺しを経験してみたかった」ようで、「殺人計画書」を作った上、犯行前にゲイさんの毒殺も試みていた事が明らかになりました。(参考記事

事件の裁判ではゲイさんがトランスジェンダーであったことが殺害の動機だったかが焦点となりましたが、警察は憎悪犯罪を認めず、結局二人は通常の殺人の罪で12月20日に有罪判決を受けました。量刑は来年以降決まるようです。

ブリアナ・ゲイさんが安らかな眠りにつかれますようお祈り申し上げるとともに、トランスジェンダー当事者に対する憎悪や攻撃が無くなるよう、社会全体で努力することを今後も訴え続けると誓います。

レファート・アラリール

レファート・アラリールさん。

12月6日、レファート・アラリールさん(”Refaat Alareer”。名前の日本語表記には「アラレア」「アラリエール」など揺れがありますが、ここでは実際の発声に近い「アラリール」で統一します)が、パレスチナのガザ地区でイスラエル軍の空爆により、親族と共に殺害されました。44歳でした。

アラリールさんはパレスチナを代表する作家、詩人、教授、活動家のひとりでした。ガザ・イスラーム大学で英語・英文学の学士号、2007年にユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで比較文学の修士号、2017年にマレーシアプトラ大学より英文学の博士号を取得しており、「We Are Not Numbers(我々は単なる数字ではない)」という、パレスチナの若者を作家として教育する企画を主催し、ニューヨークタイムズにもコラムを書くなど、パレスチナの解放のために積極的な活動を行っていました。

ガザ虐殺の開始以後は当然ながらイスラエルを激しく非難し、Twitter上でハマスの嬰児虐殺疑惑について「イスラエルの捏造だ」と比較的早い段階で断言。疑惑の支持派を嘲弄したことから、「反ユダヤ主義者」「ハマスのシンパだ」と継続的な中傷を受けることになりました。当たり前ですが、ハマスの嬰児虐殺疑惑は完全な嘘だったと現在では判明しています。

虐殺の開始以後、アラリールさんはイスラエルから殺害予告の電話やメッセージを継続的に受けるようになったようです。パレスチナの危険極まる状況からか、あるいは自身の死期を悟っていたのか、11月1日には自身の創作した詩「If I must die(もし私が死なねばならないのなら)」をTwitterに投稿し、プロフィールに固定していました。

イスラエル軍の攻撃は、本人に対する更なる殺害予告が事前にあった上でのピンポイント空爆であり、「誤爆」では有り得ず、間違いなくアラリールさんの命を狙ったものだと考えられています。

皮肉にも、アラリールさんの死により「If I must die」は爆発的に拡散され、世界各国の言語に翻訳、さらにパレスチナ解放/反イスラエル運動を世界中で盛り上げる結果になりました。イスラエルが世界で最も金の掛かった武器と脅しと情報操作とプロパガンダを用いても、アラリールさんの作品一つが広まるのを止めることは出来ませんでした。

詩の中で象徴的に描かれる「白い凧」は、東日本大震災での日本の犠牲者を追悼するため、毎年ガザの人たちが行っていたイベントと無関係ではないかもしれません。これは国連UNRWAの呼びかけで行われていたもので、日本が国連を支援していたことに由来しています。

レファート・アラリールさんが安らかな眠りにつかれますようお祈り申し上げるとともに、一刻も早い停戦とパレスチナの解放のために、出来る限りの支援をし続けると誓います。

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