C-1 三秒間停止 私は、呪われてゐる。 しかし、それほど極端なものではない。 しかし、 下手をすれば命に関わる、かもしれない、呪い。 最初の呪いは、 …
序. 才能が無い 私には、 才能が、 無い。 正確には、 才能の有無や、 才能のレベルを判断できる才能、 だけを、持っている。 自慢じゃないが、 私…
一節 ズガイコツ という響き 部屋の掃除をしていた私は、 頭蓋骨に、つまづいた。 ゴルフボールくらいの、小さな小さな、 人間の、頭蓋骨。 最初、何か…
第一章 変貌田中 田中の、顔が、変わった。 いや、顔だけではない、全身、肉体、すべてが。 整形だとか、印象が変わったとか、 そんなレベルの話ではない。 …
1節 指先パルス 安くて美味しくて、オシャレでメジャーな。 そんなイタリアンレストランに、 私と、刹華(せつか)は、来ている。 都心の週末、おまけに昼時…
死後の世界 わたしは死にました。 確実に、死んだはず。 港の巨大倉庫、その壁面に、120キロで激突したのだから、死んでいないわけがない。 車も大破しただろう。 半分…
お母さん お母さんが、おかしくなった。 私が朝ごはんを食べながら話しかけるが、 どうにもわけのわからない返事しかしない。 まったく通じない会話をもう、5分は続けて…
指 先生は今日、指を失くした。 両手両足、すべての指を。 杖を使いながら、僕たちの教室に入って来る。 困ったように微笑みながら、僕たちを見回す。 廊下には、政府…
絶華掌(ぜっかしょう)の 華織理様 華織理(かおり)様が "導きの間" から出て来られた時、 明らかな、濃い、血の匂いがした。 親衛隊である鴉(からす)が2名、音も無く近寄…
冷蔵庫を開けると、生首が入っていた。 叫ぶとか気絶するとか、何らかのアクションを起こすよりも早く、あまりにも自然に、こう言われたためか、 私は無表情、無言のまま…
釘を、吐いた。 文字通り。 文字の通り、釘を。 私が、釘を、吐いた。 1本や2本ではなく、数えたら15本も、吐いた。 呑んで吐いたわけではない。 大道芸人じゃあるまい…
融合 溶解 私 コミュニケーション。 ほとんどこれがすべてと、言っていいくらいのもの。 コミュニケーション。 人間としての、幸も不幸も、大半はここから生じる。 …
「そんなことよりわたしとはなしをしましょう。」 のんびりとSNS巡りをしていた僕に、 はっきりと声が聴こえた。 想像してみてほしい。 1人で部屋にいて、突然、至近距離…
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ この一本だけ。 小説、ではなく、体験談、です。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ モラトリアムの果てに モラトリアムという言葉。 ご存知の方もいらっしゃる…
クロスレイ
2024年8月11日 09:09
C-1 三秒間停止私は、呪われてゐる。しかし、それほど極端なものではない。しかし、下手をすれば命に関わる、かもしれない、呪い。最初の呪いは、自分自身の肉体だけの、三秒間停止。体が、まったく予想のつかないタイミングで、三秒間、完全停止するのだ。そして、回数の制限も無い。全身、1ミリも動かなくなる、呼吸も瞬きも、何もかもが、不可。想像、し
2024年7月14日 18:29
序. 才能が無い私には、才能が、無い。正確には、才能の有無や、才能のレベルを判断できる才能、だけを、持っている。自慢じゃないが、私が発掘し、その後、花開いた才能は、10や20どころではない。演技の才能、文章の才能、美しさの才能、運動の才能、交渉の才能、音楽の……絵の……etc etc……発掘した、とは、言い過ぎかもしれない。要は
2024年6月10日 20:08
一節 ズガイコツ という響き部屋の掃除をしていた私は、頭蓋骨に、つまづいた。ゴルフボールくらいの、小さな小さな、人間の、頭蓋骨。最初、何か、わからなかった。あまりにも小さいから。何だろう、と、這いつくばって、よくよく見てみれば、間違いなく、人間の、頭蓋骨なのだ。しかも、こんなに、小さな。床から生えるように出ていて、取ろうとしてみたが、ビクと
2024年6月9日 18:53
第一章 変貌田中田中の、顔が、変わった。いや、顔だけではない、全身、肉体、すべてが。整形だとか、印象が変わったとか、そんなレベルの話ではない。まったくの別人、でしかない。なのに、友人知人は皆、何一つ、変わりなく田中と接している。オレだけが、田中を、受け入れられない。まだ知り合って半年。仲は良かったが、そんなに田中をよく知っているとは、言い難い。が
2024年5月25日 21:51
1節 指先パルス安くて美味しくて、オシャレでメジャーな。そんなイタリアンレストランに、私と、刹華(せつか)は、来ている。都心の週末、おまけに昼時だから、かなり混雑していた。恋愛や仕事、最近観た映画の話で、さんざん盛り上がったあと、話疲れて、しばらく沈黙していた時。私たちのテーブルの横を、通り過ぎた少女。12〜14歳ほどに見えるその子は、あまりにも
2022年11月7日 06:23
死後の世界わたしは死にました。確実に、死んだはず。港の巨大倉庫、その壁面に、120キロで激突したのだから、死んでいないわけがない。車も大破しただろう。半分は、潰れたのではないか。記憶があるのは衝突時の。轟音からの耳鳴りと、ひしゃげるボンネット、潰れるフロントガラス、それらのスローモーション。血の味、血の匂い。もちろん、自殺である。最近では、自死と言うべきなのか
2022年10月30日 13:46
お母さんお母さんが、おかしくなった。私が朝ごはんを食べながら話しかけるが、どうにもわけのわからない返事しかしない。まったく通じない会話をもう、5分は続けている。「ねえ。朝から何?ふざけるのやめてよ、怖いって。」「ふざけるって何の話?味噌汁もちゃんと飲まないとダメよ、いつも残すんだから。」お母さんはお茶を飲みながらテレビを見ている。やっぱりふざけていたのか、と安
2022年10月23日 16:18
指先生は今日、指を失くした。両手両足、すべての指を。杖を使いながら、僕たちの教室に入って来る。困ったように微笑みながら、僕たちを見回す。廊下には、政府から派遣された監視役が4人。高そうな黒いスーツは、朝日に鈍く光っている。先生は、深呼吸をするように、長い息を吐く。「えー、校長先生から今朝、説明があったように。私は選ばれたので、そのようにプログラムは進みます。私は
2022年7月23日 03:11
絶華掌(ぜっかしょう)の華織理様華織理(かおり)様が "導きの間" から出て来られた時、明らかな、濃い、血の匂いがした。親衛隊である鴉(からす)が2名、音も無く近寄り、華織理様の両手を、タオルで丁寧に拭き取る。ぬらぬらと紅に光る、両手を。今はもう絶縁済みの旧人間関係では、カルト教団などと言われていた、私が属する組織、絶華掌。華織理様との出会いを振り返りながら、私は、微
2022年7月17日 05:39
冷蔵庫を開けると、生首が入っていた。叫ぶとか気絶するとか、何らかのアクションを起こすよりも早く、あまりにも自然に、こう言われたためか、私は無表情、無言のまま、しばらくのち、受け入れてしまった。「寒いんだけど。」生首自己紹介少し震えがあるのと、頭がぼーっとすること以外は平静なまま、私は生首をテーブルに置き、向かいに正座した。何度も深呼吸を繰り返し、ようやく声が出た。「あ
2022年7月11日 20:51
釘を、吐いた。文字通り。文字の通り、釘を。私が、釘を、吐いた。1本や2本ではなく、数えたら15本も、吐いた。呑んで吐いたわけではない。大道芸人じゃあるまいし、釘なんか呑むわけが無い。バイトが終わって家に帰ってすぐ、玄関で吐いた。もちろん混乱したから、20分くらいは釘を眺めていた。五寸釘、というやつだろうか。長くて太い釘だ。病院……とは考えたが、身に覚えもないが突然
2022年7月9日 22:16
融合 溶解 私コミュニケーション。ほとんどこれがすべてと、言っていいくらいのもの。コミュニケーション。人間としての、幸も不幸も、大半はここから生じる。そういう鬱陶しいことを考えながら、私は街を歩く。イヤホンからはポピュラークラシック。タイトルも曲の背景も何も知らない、興味が無い。ただ、おだやかな気分に、少しでもしてくれれば。すべて完全に無視しているが、ナンパだか
2022年7月2日 08:09
「そんなことよりわたしとはなしをしましょう。」のんびりとSNS巡りをしていた僕に、はっきりと声が聴こえた。想像してみてほしい。1人で部屋にいて、突然、至近距離で、人の声がする恐怖を。全身が総毛立ち、瞬間的に冷や汗をかく。何が起こったのかと、アドレナリンに体が痺れる。「きこえていますか」さして間を置かず、再び。鼓動音がバクバクと体内に反響する中、声以外にも異常があること
2022年6月28日 17:08
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈この一本だけ。小説、ではなく、体験談、です。┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈モラトリアムの果てにモラトリアムという言葉。ご存知の方もいらっしゃるでしょう。猶予期間。要するに、何も決めず曖昧に先延ばし、保留にしたまま(逃げたまま)、猶予期間に留まりたがる人のことを、モラトリアムと呼ぶ。僕は正にこれでした。いろんな仕事を転々としながら、長くは落ち着かず、フラフラフラ