徒然 文フリレポと出店での注意ポイント
体験しなければ分からないことがたくさんある。
文学フリマレポ
文学フリマ大阪の会場に向かう電車の中、私の隣に座っていた兄はこういった。
兄は以前にも3回ほど文学フリマに参加していた。だから、この人が一緒に行ってくれるということで安心感があったんだ。
そして、彼は私の本の編集を全て行ってくれた。就職先も出版社であるから、この言葉は重い大事な言葉だろう。
でも、まだ「売れるか」「入場の仕方大丈夫か」とかそのレベルの不安を感じていたから「なるほどなぁ」ぐらいの返答をしていた。
そして、私たちは会場に着く。
私は兄について行くだけでよかった。その楽さは素晴らしく有難いことだ。
うおー!
人がいっぱいいる!!!
わぁー!とうとう始まっちゃうよ!
よしっ!と、2人で準備を始める。
『はみ出す青』の空のページを開き、
その後ろに兄の本。
『もう醒めない』は閉じたままで表紙を見せる。
そうすることで、青が強調される。
そして、私は青い可愛いワンピースを着てきたのだ。
この行動のおかげで大きく私の捉え方が変わる。そこについては、後にまとめる。
さて、始まった。
声をかけられても確かに興味のあるジャンルでなければ、「あ、すみません、買うつもりないです……」って思う。私もそうだ。だから、兄のその言葉は真理だと思う。
そして、コロナ禍であるということを思うと大きな声を出すことは足踏みしてしまう。
ところで、私たちは不織布マスクの上にユニクロのエアリズムマスクを着けていた。
「とはいえ、気になるなって思ったときに声かけてもらえると「呼ばれたからなぁ」っていい意味で言い訳作れるから見れるよね」
と私が言うと「そうなんだよ、線引きが難しいね」
そんな手探り状態で私たちは販売を始めた。
兄が帰る14時までに売れたのは11冊。
感覚としては、男性のお客さんが多かった。
そして、意外なことにショートショート集である『もう醒めない』のほうがよく売れるのだ。
「どんな話ですか?」
聞かれて詰まる自分がいた。
ホラー?怖い話?そうだと思う。
でも、怖いかと言われたら恐怖ではないと思うのだ。
とはいえ、ホラーではないとも言い難い。
「意味が分かると怖い話みたいな話です」
って言いたかった。
「意味が分かると怖い話みたいな少し不思議な話。でも、ちゃんとオチが付きます。読んだ後にあー!って言ってもらえると思います。一本一本が短いので気軽に読めます、楽ですよ」
なんて売り文句。長すぎる。
でも、そうなんだよなああああ!
そんな悩みの結果、兄が書いた売り文句はこれだった。
『意味が分かると、ちょっと怖いショートショート』
こうすることで足を止めてくれる人が増えた。
こうすることで私の売り文句も明確になった。
「意味怖好きなんですよ」
「怖いんですか?」
会話をしてくれる人が多くなったのは嬉しかった。
一人になり、十冊売れたことでひとまずの安心感があった私は、
コミュニケーションをお客さんととりたいなと強く思うようになった。
それは、私がごはん休憩に出て兄が一人で店番をしていた時、
カタログを見てきてくれたお客さんの言葉があったからだ。
伝言を兄から聞いた内容は「小説の一個目を読んで『面白い』って言ってくれてたよ、両方気に入ったから買ってくれたし、とかげ本人にも会いたいからまたくるって!」ということだった。
私と会話がしたいと思ってくれている人がいる。
「これ、一人で書いたんですか?すごいですね」
と言ってくれる人が何人かいた。
一人で書いたという事実がすごいという認知が私にはなかったから、そう聞かれるのが意外だったんだ。
また、一人でぶらぶら会場を回った時に気付いた。
阪大と京大が多い。
芸大生がいない!!
大阪という地元なのに、大阪芸術大学の文芸学科生はいないのか?!
おいおい、どうなってんだよ。文芸サークルだっていくつもあるだろう?漫画系だってあるのによぉ……。
そう思って、私は自分が「大阪芸術大学文芸学科在学中」であることを主張しようと思った。
やはり、大学名には引きがある。具体性がある。安心感がある。
きっと、「けっ!」と思う人もいるだろう。だけど、それは裏返しであって、印象が少しだけ残りやすい。
同じような小説売りの中で、一つ印象として「大学名」という具体性を持つことが出来る。
だって、その言葉は知っているから。普遍過ぎず、知っている言葉。
そうすることで、「芸大生なんですか?」と言われることも増えた。
ジーっと下に書いてあった『大阪芸術大学文芸学科在学』の文字を読んでくれる人は多くいた。
「卒業生だよ」「頑張ってるね」なんて会話を振ってくれるようになった。
そして、これは最後に繋がる。
早退組が帰りだす15時。
16時。ああ、もう終わる。
人が少しずついなくなっていく。
私のブースはもともと、隣のブースその隣のブース、反対隣りのテーブルが二つ空いている。そんな浮島のような場所だった。
しかも、他の道よりも広い道の前だったから、すっからかんって気持ちになるそんな場所だったんだ。かなしい。
なんか、他のところ歩いてると道が混むからゆっくり歩いてゆっくり見てられる。
でも、私たちの道歩きやすすぎて、止まりにくい…。
そんな嘆きを胸に頑張っていたから、周りがいなくなるとより寂しくなってしまうんだ。誰もいないな?ってそういう気持ちに。
もう売れないかも。
誰も手に取ってくれない。
止まってくれない……。
でも、そうやっていても意味がない。
よし、あと五冊売れる。
『もう醒めない』は今ある三冊売れて完売、『はみ出す青』も後2冊売れる。
そう決めたんだ。
するとどうだろう。ゆっくり売れていくんだ。
そして、終了時刻の三十分前に『もう醒めない』が売れた。
最後の一冊が。
これは売れるぞ。
大丈夫、あと2冊売れる。そう決めたんだもん。
だから、頑張らないとね。
15分前。
「みてみてくださいね!」
声をかけた男性は、足を止めて「ほぉ~」と見てくれた。
「芸大生なの?」
はい。
「僕、芸大で講師してるよ」
……?!
あっ!鍵本先生!
去年、情報処理概論という授業でお世話になった先生だった。
オンライン授業と対面どっちでもいいという授業で、私は数人しかいない対面授業に出ていたのだ。
そのとき「文芸生なら文フリ出るの?出てるからおいでよ、声かけてね」と言われていたんだ。そして、私は会場を回るたびに先生を探していた。でも、見つからなくて「今年は出てないんだな」と思っていたら!!
「ああ~!なら、買わないといけないじゃん。わー嬉しいな、最後に回ろうと思ったら!」
こうして、売れたんだ。
これは、願いが叶うのではないか。いや、叶う。叶うように頑張る。
そして、16時28分。
もう無理か、と思ったところで前を通った男性。
「最後にどうですか?!」
ノリのいい方で、止まってくれた。
「最後だもんね、あと、二分か」
「仕方ないな~!頑張ってるもんね」
と購入してくれたんだ。
そして終了の構内アナウンスが流れる。
幸せだった。
私の願いは叶う。
きちんとした願い方をすれば。
疲れてはいるけど、テンションの高い体で撤収作業をした。
終わった。
私の初めての文フリが終わった。
私の初めての本が売れた。
その結果は満足いくものだった。
家に帰って、兄や母に「すげえええ!」と驚いてもらえた。
この事実がすごいことなのか分からなくなってしまっていたけれど、これはすごいことなんだ。
現地に持って行った本は合わせて30冊。
そのうち、22冊が売れた。
本当にありがとうございました。
楽しかったです。
買った本の紹介
個人サークル「怠慢乙女」さん
後ろのブースの方で、最後の最後までずっと一緒に背中合わせにいたので、私としては戦友みたいな気持ちになってました。
始まったころに私の作品を買ってくださったお優しい方でした。文章がしっかりしていて、ショートショートを書く同志として!
日本民主主義文学会 大阪北支部様
植月のぞみさん
Twitterのいいねがきっかけで、私のブースに来てくださった植月さん。
気さくな方で沢山お話してくださいました。
初めて書いた小説がのった『わんど』をいただきました。
「小説を書くにはいろんな本を読まないと!」と私の作品も買っていただき、向上心のある素敵な方でした。
そして、最後。
今回の参加を通して分かったこと・出店でのポイント
【名刺は大量に作る】
【ショートショートを載せたポストカードを無料配布する】
周りを見てて無料配布をしている人がとても多いと思いました。
ああいうのって、税金対策だと思っていたんですよ。副業にしないためのやつ。
「無配は特典、会場でなきゃもらえない特別感」だと思ってたんです。
でも、これは違うなと!今回強く思いました。
私はお馬鹿でした。
私は、noteで沢山の文章を毎日書いているので、買ってもらうではなくてもnoteやTwitterに誘導出来たらそれだけでも価値がある、と感じています。
少しでも多くの読者が欲しいと日々思っているのですが、それはたくさんの人に読んでほしいという思いです。
確かに、購入していただくことはありがたいですし、めっちゃ買ってほしい。めっちゃ売れてほしい。買ってくれ!とは思うのですが、
それよりも私のファンを増やすこと、Twitterでの知り合いを増やすこと、文フリに出るたびにお話しできるような方を増やすことが重要だと思うのです。
なので、名刺を大量に作って配るべきだと思いました。
今回不手際で十枚しか作れなかったのですごく後悔。
「名刺だけもらっていいですか」と言ってくれる方、「名刺だけもらってください」と言ったら受け取ってくれる方、たくさんいました。
でも、すぐ捨てられるとも思うので、期待しすぎず。少しだけでも刷り込むことが大事でしょう。
そして、『ショートショートをポストカードに』も同じ理由に繋がります。
途中経過として「どういう作風なのか」がわかる点でショートショートを載せるのはより『売る』につながると思います。
ですが、「長いと読むのめんどくさくなる」「重くなるから捨てたい」という思考もわかる。だから、短いショートショート。パッと読んでもらえることに期待をするのです。
そうすることで、Twitterに誘導もできますし、休憩時間に読んでくだされば買ってもらえるかも?
なるほどな、なるほどなあああ!
みんなの策略がわかり一つ大人になりました。
勉強になるううううう。
【サークル名よりも『どんな作品を売ってるか』を大きく書く】
周っていて、「何を売っているかわからない」と思いました。
情報量が多い。
そもそも、大量の出店者が広いとはいえぎゅっと集まっているため、ごちゃごちゃして見える。
そして、サークル名を大きく書いている方が多かったように思います。
それはもちろん、そういう指定があるからなのですが、サークル名って意外と売っている本の情報はないわけです。
そして、お品書きを印刷している方。めっちゃいいと思うし、凄いと思う。
そもそも、お品書き作れる人凄い……、その能力が私にはない……と尊敬するのですが、複数本出品している方は一枚に全部の情報を書いているため、必然的に文字が小さくなってしまうのです。見えない。歩いているときに分からない、そうすると『情報がない』と認知してしまうのではないでしょうか。
「情報を知るために近づく=ほしい」
ではないわけですから、そこで客引きをされるとビビります。
というよりも「近づいてみたら声かけられるだろうし、買わないだろうから近づかないでおこう」という思考が先に働くのではないかと思うのです。
私はそう考えながら歩いていました。
ので、出来るだけ大きく、簡潔に書くべきだと思うのです。
私の場合は『意味が分かると、ちょっと怖いショートショート』です。
二冊あるうち、一冊だけの情報を大きく書くことで
ボーッと通っていても「あー、怖いショートショートなんだな」と思っていただけるんだと思います。
『ショートショート』という単語を知っている。
『意味が分かると怖い話』という単語を知っている。
故にパッと理解できるのです。見た瞬間に頭の中で保管される。
そして、好きな方は「おっ」と寄ってきてくれます。
この方法は、『大学名』と同じようにお客様の脳に負荷をかけない情報の出し方だと思います。
負荷がかかった時点で、「やんぴやんぴ(やめたやめた)」と思うのではないでしょうか。
もちろん、そうでない方もいっぱいいると思います!
能動的に情報を取りに行く方のほうが多いかもしれません。ですが、そうではない方に届くようにすれば能動的な方にも必ず届きます。
何故か先に細かい話をしてしまいましたが、
そもそも「小説だとしても純文学?ライトノベル?ショートショート?書評の可能性もあるし、短歌とかの可能性もあるな」と思うのです。
ジャンルすらわからない。
もちろん、ブースの場所はジャンルごとで分けられているわけですが、
出店者側でも私はよくわかってませんでした。
何度も来ている方ならわかるのかもですが、細かく見ればわかるのかもですが、フラーっと見ている人にはわからないんです。
表紙の情報しかない小説を手に取るには結構な労力が必要となります。
和食食べたかったのに洋食屋だったよ、なんてことになったらマイナス印象になりませんか?その店は悪くないのに、騙されたーって思っちゃうのは私だけでしょうか。
そんな風に本でも同じことが起きます。
どんな小説なのか、
どんなジャンルなのか、
そこが重要です。
ですので、私は次回からはちゃんと大きく印刷した二十文字以内の内容説明を置こうと思います。字体もおしゃれさ大事ですが、読みやすさに重きを置きたい。
これを兄は「帯の大事さがわかったね」というのです。
そうだよ、帯だよ。漫画にだって帯がある。小説にだって帯がある。
そういう役割のものを置くべきだったと後悔したので、ぜひ皆さん大きい文字で!書いて掲示してください。
人の多さと本の多さで怯えた私に優しくしてあげてください!
【出品する本は2,3冊がベスト】
何度も何度も出ている方は、本の冊数が増えていくと思います。
実際、何冊も並べている方が多かったです。
販売するものが多いのは良いことだと思います。それだけ作品を作れる人だという事実は伝わってきますし、凄いなと尊敬するのです。
ですが、これも情報量が多すぎて!わからん!ってなるのです。
テーブルの上に溢れかえる情報量に私はうっっと思いました。手に取るとしてもどんな作品なのかもわからない上に、大量にある……、怖い、とダメな私は思ってしまうのです。
ある程度、すっきりとしているほうが手に取りやすいのではないでしょうか。
多くても四冊まで……、そうすることに決めました。
確かに過去の作品も売りたくなると思います。ですが、私はその欲を抑えて、テーブルの上をすっきりとわかりやすくしたいと思ってます。
もちろん、いっぱい作品が並んでいるもの素敵でした。
きっとそういうのが良い人も多いでしょう。
ですが、作風と同じようにあっさり味わえるようにしたいんだ。
情報量は少なく、明確に伝わるように。
それが私なのです。
そして、そういう風が良い人も多くいると思うので、ぜひ、迷ったらそうしてみてほしいです。
長い文章失礼致しました。
よかったら、通販もやってますので覗いてみてくださいね。
文フリ楽しいなぁ……。楽しかった。
京都も出たくなってるのです。
それまでに新刊が出来るのかは謎ですけども。
いつか、東京にも出たいと思ってます。
応援してくださる方に出会いたい。
よろしくお願いします。
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