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2022年 ベストアルバム (新譜)

今年聴いた洋楽新譜アルバムの中から、好きなアルバムを30枚。




30位 Lo Moon 『A Modern Life』

モダンインディアートロックの理想形。すりガラス越しの夜景と親密な肌触り。あまりに完成度が高く破綻の無い、教科書のような作品。整ったスタイリッシュなインディロックが好きな人は是非。




29位 Leland Whitty 『Anyhow』

街を出て森の中の小屋で演奏される自然派ジャズみたいな印象。暑苦しくなく爽やかなのが良い。




28位 Kokoroko 『Could We Be More』

熱気や迫力というより、控えめで丁寧な印象を受けるシティジャズ/アフロビート。脱退したOscar Jeromeと真逆の作風なのが面白い。




27位 The 1975 『Being Funny In A Foreign Language』

前作を2020年の1位かつ彼らの最高傑作と思っているタイプのファンとしては、小さくまとまったし面白みが無いなという感想。4月6日のライブ@バンコクは妻と参戦予定。




26位 Denzel Curry 『Melt My Eyes See You Future』

一曲目にRobert Grasperを起用しているところからして、凡百のラッパーとは別次元を向いていることがすぐ分かる。サウンドデザインもコンセプトもフロウもめちゃくちゃかっこいい。(ただ、何かあと一つだけ、何かが足りない気がする)。




25位 Tom Chaplin 『Midpoint』

いつになく地味な作風の中で、彼の声が優しく、寂しく響く。励ますことも甘やかすこともない、ただそばにいてくれるだけのかけがえのない存在。




24位 Mansur Brown 『NAQI Mixtape』

EP2枚の合体版。去年の『Heiwa』より更に前衛的で孤高の存在に達した作品。極厚の低音とアコギのアルペジオが徹底してハードボイルドなサウダージ感を醸し出す。




23位 Alex Cameron 『Oxy Music』

インディロックに斬新さや衝撃など求めていない私は、エキセントリックなポストパンクバンドを横目にAlex Cameronを聴く。ざらついた心が丸くなっていく。




22位 The Big Pink 『The Love That's Ours』

2007年〜2012年頃のUKインディロックは今では酷い時代だったかのように扱われているが、本作はその時代の音楽を素直に高レベルで更新している。良いものは良い。感動の佳作。




21位 Cloakroom 『Dissolution Wave』

コア経由のシューゲイザーは2010年頃から地味にずっと継続している流れだが、その最新系と言っていい。「虚ろコア」と勝手に命名。




20位 Soccer Mommy 『Sometimes, Forever』

安易な"90年代オルタナ風"で茶を濁さず、「めちゃくちゃ良い曲」がしっかりと何曲も入っている。ボーカルが無表情なのは少し気になるけど、それを埋めて余りあるほどソングライティングはしっかりしている。"Bones"は今年最高の名曲の一つ。




19位 Hatchie 『Giving The World Away』

Soccer Mommy同様、シンプルにソングライティング能力が高い。話題性や周辺情報で誤魔化さず、「めちゃくちゃ良い曲」をしっかり書いている。サウンドは1990年頃のイギリス風。




18位 Nilufer Yanya 『Painless』

インディロックの歴史を足早に駆け抜ける傑作。いかにもサブスク世代といえる手際の良さ。




17位 Jeremiah Chiu & Marta Sofia Honer 『Recordings From the Aland Islands』

サイゴンからクチに行くバスの中で何度も何度も聴いていた。悲劇の土地が今は美しい緑に覆われている。なぜかそんな場面にとてもフィットしたアルバム。




16位 Nosaj Thing 『Continua』

様々なゲスト/ボーカリストを迎えているが、彼特有の冷や汗滲む曇った空気感は変わらない。とにかく曲が良いしフレーズの一つ一つが印象的。今年の深夜都心アルバムNo.1。




15位 Porcupine Tree 『Closure / Continution』

ロックアルバムとしての単純な完成度では今年最高峰だろう。プログレというだけで"一般的ロックファン"の観測範囲/守備範囲から漏れ続けているのがもったいなさすぎる。




14位 Editors 『EBM』

80年代シンセポップは大流行だが、大半は没個性。ここまで爆発的/個性的な音に変換してみせた例が他にあるか? UKロック界において常にサブ的存在と見られてきた彼らこそが、実は心技体ともに最も優れた真のトップバンドだったのだ。




13位 Sam Gendel & Antonia Cytrynowicz 『Live A Little』

Ingaを除いたSamの作品の中で間違いなく一番好き。Antoniaの即興ボーカルのタイムレス/クラシカルなメロディに終始うっとり。それでいて私好みの陰鬱で不穏な霧深さもある。たまらない。




12位 Drug Church 『Hygiene』

ハードコアとオルタナティブロックの狭間を突く。「オルタナコア」と勝手に命名。100%の力で突き抜けるが、凶暴になり過ぎない塩梅がちょうど良い。整っている。




11位 Loyle Carner 『hugo』

サウスロンドン大集合という感じ。フロウで誤魔化すのではなく、リリックとサウンドの完成度が群を抜いている。参加しているAlfa MistとPuma Blueの新作も期待大。




10位 High Vis 『Blending』

ロックファンの中には、メインストリームポップにロックの意匠が取り入れられてるってだけで喜んでいる人もいる。「アイドルがギターソロのある曲リリースした!」みたいな。でも、本当にロックを欲しているのであれば、ストレートにロックしてる本作みたいなのを聴けば良いのでは? という単純な疑問。




9位 Arctic Monkeys 『The Car』

言い方は悪いが、ギターバリバリロックしか聴けないファンを振り落とすことに遂に成功した本作こそが、このバンドの第二のスタートだろう。3月9日のライブに参戦予定。




8位 Valleyheart 『Heal My Head』

今年のポップロックで最高のアルバム。他のアルバムのことをそう呼んでいる人がいたらその人は嘘をついていると思ってよい。ソングライティングは言うまでもなく完璧だが、一曲の中での緩急の付け方、少しずつ違うテイストのサウンドの曲を揃えるバリエーション、シャウトから囁きまでこなすボーカルまで、全ての要素が完璧。往年のポップロック名盤と比較しても何ら劣らない。




7位 Fontaines D.C. 『Skinty Fia』

永遠に現世に戻れない絶望とともに地獄のそこに突き落とされたような、理性が崩壊していく中でたんぽぽを見つけたような、そんな作品(どんな?)。若手ポストパンクバンドは数多いるが、追っていく価値のあるバンドは実際3〜4つくらいで、もちろんこの人たちはその筆頭。




6位 Caroline 『Caroline』

インディアート高踏派。心地良い孤独に浸る。今年最も静寂を上手く使った作品。今後も即興スタイルを維持するかもしれないが、カッチリ作り込むことを選んだ作品も聴いてみたいと思う。




5位 Knifeplay 『Animal Drowning』

コア/シューゲイザー/聖歌。大真面目に狂ったロック。ライブは今ひとつパッとしないが、音源でこれだけのものを作れる時点で圧倒的に勝ち。




4位 alt-J 『The Dream』

表面的には淡々としていて無表情に聴こえるが、実は重く複雑なテーマを詩情たっぷりに描いている。今年最も真摯で感動的なアルバム。"Happier When You're Gone"は心が震える名曲。DVという重いテーマを淡々と歌うが、音からは哀切な感情が漏れ出してきている。




3位 Oscar Jerome 『The Spoon』

ムードは陰鬱だが演奏は覚醒している。苦悩と葛藤が滲むリリックと、キレッキレの演奏のバランスが良い。Ayoのドラムは今年最高の鳴り。




2位 Big Thief 『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』

「ロックは死んだ」「ロック復活!」のフレーズを発する人はどちらも信用できないが、このアルバムは例外だ。2014年のThe Voidz、2017年のBrand New以来、久しぶりに本物の極上のロックに出会った。本当に久しぶりの感情。




1位 deathcrash 『Return』

個人の抱負として2022年は過去を振り返らず前向きな年にしようと思っていたのに、結局こういうアルバムを1位にしてしまった。私のような人間にとっては、好き嫌いを超えて、聴いた瞬間に1位にせざるを得ないタイプの音楽。




宣言

来年は「ローリングストーンズおじさん」と「サブスク500枚おじさん」の中間でいたいと思う。

「ローリングストーンズおじさん」は、年がら年中飽きもせずローリングストーンズばかり聴いている。どの曲のどの歌詞やどのフレーズも全て頭に入っている。リイシューは全て買う。永遠にローリングストーンズのことを好きでいる自信がある。しかし、ローリングストーンズ以外のことは何も知らないし、知りたいとも思っていない。もちろん「ローリングストーンズ」を「レッドツェッペリン」や「ビートルズ」に置き換えても良い。

「サブスク500枚おじさん」は、サブスクで毎年500枚もの新譜を聴いている。聴いたアルバムの枚数を毎月Twitterやnoteに投稿し「いいね」をもらう瞬間が無上の喜び。しかし曲名やクレジットや歌詞は頭に入っておらず、どのアルバムがどのアルバムだったかよく分からなくなることがある。それでも毎週金曜日の新譜発掘活動は怠らない。

私はこの中間でいたい。死ぬまで同じ曲の話をするおじさんにもなりたくないし、500枚聴くが目の前の曲のことを何も知らないおじさんにもなりたくない。どのアーティストに対してもまず「好き」という感情を持つことを忘れないでいたいし、同時に新しい音楽を発掘する喜びも忘れないでいたい。見つけたアルバムはじっくり時間をかけて愛聴していきたい。


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