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音楽の感想記録 東京→バンコク

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Blur キャリアを振り返る

The Beatles, The Kinks, David Bowie, Julian Cope, XTC, The Police。連綿と続くブリティッシュロック、そしてUKアートロックの歴史を、90年代において唯一継承したのがBlurだ。 Summer Sonic 2023へのヘッドライナー参加が決まった今、そんなBlurのアルバムを、その時々のDamonの心情を象徴する歌詞と共に振り返っていきたい。 1st 『Leisure』 (1991)マッドチェスター、シューゲイ

    • Adrianne Lenker 『Bright Future』(2024)

      8/10 ★★★★★★★★☆ またしても完璧な作品。2020年のソロ『songs』『instrumentals』、2022年のバンド作『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』、そして本作と、完全にゾーンに入った圧巻の作品が続く。 『songs』は悲しみと絶望のコレクションだったが、本作は逆に「リラックスした雰囲気の中で何も追求しないことを追求したかった」と、自然体を強調するコンセプトの下で制作が進められた。いつものように、新曲

      • Lo Moon 『I Wish You Way More Than Luck』(2024)

        7/10 ★★★★★★★★☆☆☆ Talk TalkやPeter Gabrielに影響を受けた丁寧で上品なインディアートロック。この手のバンドは2024年も一定数いてどのバンドも知的なサウンドを作っているが、その中でもこのバンドの完成度の高さはデビュー作の時点から圧倒的に抜きん出ている。 音は1st, 2ndとほとんど変わらない。主張は強くないが多彩な音色を使い分けるドラム/打ち込みと基本に忠実なベース、その上でシンセ、ピアノ、コーラス、サックスが柔らかく夢のような叙情を繰

        • 最近聴いているアルバム2024.03

          今月も学生時代に聴いていた懐かしいアルバムを再訪。もう完全に懐古オジサンになってしまった。温泉に入りたい。 The Pale Fountains 『...From Across The Kitchen Table』(1985)元から持っていた独特なポップセンスと歌唱力を、より明るく軽快な方向に推し進めた2ndアルバム。「中途半端に成長した結果かつての良さまで消える」というのはインディロックによくあるパターンだけど、これは違う。翳のある文学青年が翳を保ったまま、世間のしがらみ

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        Blur キャリアを振り返る

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        • 2024新譜
          6本
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        • 最近聴いているアルバム
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        • 2023新譜
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          15本
        • 2021新譜
          27本

        記事

          MGMT 『Loss Of Life』 (2024)

          6/10 ★★★★★★☆☆☆☆ 5th。普通なら使わない変なエフェクトや脈略のない音や奇抜なミックスバランスを駆使して独特のサイケデリアを産むのはThe Flaming Lipsなどから受け継いだUSインディロックのアイデンティティ。それは1stからずっと続いているので今更変わりようもない。彼らに取ってはこれが当たり前で、変える変えないの話ではないんだと思う。 それでもさすがに大人になったというべきか、ただはしゃぎ回るような無邪気な曲はほぼ無い。どの曲にも少しずつノスタル

          MGMT 『Loss Of Life』 (2024)

          Twenty One Pilots 『Clancy』発売前にコンセプトをおさらい

          Twenty One Pilotsの『Trench』(2018)、『Scaled And Icy』(2021)、そして『Clancy』(2024年5月17日発売)は、一連の物語を描いたコンセプトアルバムの連作になっている。『Clancy』発売の前に、物語をおさらいしておきたい。 (1) 前提Twenty One Pilotsのボーカル、Tyler Josephは長年メンタルイルネスを患っている。良化と悪化を繰り返す彼の苦悩と苦闘をテーマにした物語がここ三作品では描かれてい

          Twenty One Pilots 『Clancy』発売前にコンセプトをおさらい

          Real Estate 『Daniel』 (2024)

          9/10 ★★★★★★★★★☆ 春の風は迎える者への駆け足ではないし、拒む者への面当てでもない。自ら来て、自ら往く、自然の意だ。物憂げに俯く者の心うちなど遠慮無しに通り過ぎ、春の街へと吹き込む。草原を走る春の水は幅を変えながら春の海へと流れ込む。私たちがいてもいなくても、春の風は変わらず海を越え世界を意のままに吹き渡る。いつまでも。 本作が珠玉のギターポップであることは論を待たないが、何より歌詞が私の理想に近いものであったので、私の中のイメージと合わせながら以下に意訳して

          Real Estate 『Daniel』 (2024)

          最近聴いているアルバム2024.02

          今月も学生時代によく聴いていたアルバムを再訪していた。思い出が蘇る懐かしいアルバムと、新鮮な驚きがあるアルバムの2タイプに分かれる。 The Pale Fountains 『Pacific Ocean』(1984)青春の音。トランペットが青空の下で切なく響く。モリッシーのアクがどうしても好きになれない私にとっては、「The Smiths的なバンド」の方がThe Smithsより好きだったりする。これはまさにそういうバンド。自分が社会の中でどのくらいの力を持っているのかとか、

          最近聴いているアルバム2024.02

          The Pineapple Thief 『It Leads To This』 (2024)

          7/10 ★★★★★★★☆☆☆ Porcupine Treeと並びイギリスのネオ・プログレッシヴロックを20年以上リードしてきたThe Pineapple Thiefの14枚目のアルバム。 プログレの枠に括られてはいるが、8作目の『Someone Here Is Missing』(2010)以降はどれも10曲前後で約45分とタイトかつシンプルに仕上げられている。高度な演奏技術と高いメロディセンスを持っているが決して誇示することなく、奥深く薄暗い、言ってみればUKロックの原

          The Pineapple Thief 『It Leads To This』 (2024)

          最近聴いているアルバム2024.01

          今月分だけでなく、ここ数ヶ月よく聴いていた旧作を記録しておく。高校生の時に聴いていたのを再訪するのが今のマイブーム。 Teenage Fanclub 『Thirteen』(1993)当時のグランジムードを引きずったノイジーで怠惰な作品だが、その中に綺麗なハーモニーがあるから彼らの音楽は特別だし、良い。カートの死を経て次作以降は綺麗なハーモニーとメロディに注力していくが、本作と一つ前(『Bandwagonesque』)にしかないこの折衷モードが今も私を魅了する。イギリスのバン

          最近聴いているアルバム2024.01

          Bill Ryder-Jones 『Iechyd Da』(2024)

          6/10 ★★★★★★☆☆☆☆ Pavement的というよりはGorkey’s的なスラッカーロックの捻りの中で寂しい歌心を見せていた『West Kirby County Primary』(2015)。クリーントーンギターとディストーションギターのダイナミックな交差に荘厳なチェロを織り交ぜたスロウコア路線の名作『Yawn』(2018)。前二作ではどちらもインディロック的なサウンドを中心に据え、その中で喪失や暗中模索といったテーマを切実に、真剣に歌っていた。 一方、本作ではシ

          Bill Ryder-Jones 『Iechyd Da』(2024)

          Leave Yourself Alone 『Leave Yourself Alone』(2023)

          10/10 ★★★★★★★★★★ 何しろ情報がない。一番情報が載っているのがBandcampだが、それでもバンクーバー出身で、メンバーが5人いて、これがデビュー作で、"Cinematic long-form dream-state post-shoegaze"を自称していることくらいしか分からない。 Ryan Stephenson - vocals, guitars, keys Ethan Henthorn - vocals Ellen Kibble - vocals G

          Leave Yourself Alone 『Leave Yourself Alone』(2023)

          2023年 ベストアルバム (新譜)

          今年聴いた新譜の中からよく聴いていた16枚。2位のアルバムが一番おすすめ。 16位 Militarie Gun 『Life Under The Gun』簡潔なパンク/オルタナバンド。”銀シャリのみ”みたいなバンド。簡潔なくせに少し切ないところとか、完全に分かってるヤツらだと思う。"Never Fucked Up Once"は今年最も好きな曲の一つ。こういう曲をどんどん作ってくれたら良いな。 15位 Bruno Major 『Columbo』60’sブリティッシュロック方面

          2023年 ベストアルバム (新譜)

          2023年を振り返る (プライベート編)

          本ブログで2年以上書いてきた音楽レビューだが、今年に入りなぜか全く書けなくなってしまった。なにしろ筆(キーボード)が進まない。飽きたんだなと思いほったらかしていたが、やっぱり何か書きたいと思いはじめたので、まずリハビリとして今年のプライベートな出来事を書いてみる。 ①ペナン島にハマった の巻ペナン島はマレーシアの島で、島自体が世界遺産になっている。私の住んでいるバンコクからだと飛行機で約1時間半と近く、価格もべらぼうに安い。綺麗で立派なホテル2泊+往復航空券合計で3万円を切

          2023年を振り返る (プライベート編)

          最近聴いているアルバム2023.02

          Travis 『12 Memories』(2003)純朴なFran青年を怒りの淵に追い込み、落胆の底に突き落としたのは、イラク侵攻だった。初めての荒ぶる感情を筆圧の濃いペンに込め、灰色のメロディに託した。Andyのギターはかつてなく乱暴なプレイでFranに見事に応えた。怒りと祈りに溢れた素晴らしい力作。 ここでの目覚めがバンドを一皮剥けさせ一段上のステージに向かわせるかと思いきや、次の4年後のアルバムでは子供が産まれた喜びを素直に表現していた。あのアルバムでのFranは心か

          最近聴いているアルバム2023.02

          Fiddlehead 『Between The Richness』 (2021)

          7/10 ★★★★★★★☆☆☆ 米マサチューセッツのハードコアバンドHave Heart解散後、ボーカルのPatrick Flynnらが英サフォークのオルタナバンドBasementのギタリストと結成したバンド。2018年のデビュー作に続く2作目。Drug Churchと対バンをしたり、Turnstile・Snail Mailと3バンドでツアーを展開したりもしている。 爽快感のあるエモ・オルタナ・ハードコア。そのちょうど合間を絶妙に駆け抜ける。ボーカルはガナりも入れながら、

          Fiddlehead 『Between The Richness』 (2021)