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最近聴いているアルバム2024.09


今月は新譜を聴くので忙しかったので、旧譜は昔から愛聴しているのをちょっと聴いてただけだった。


Pearl Jam 『Vs.』 (1993)

"Go"

あれだけ鮮烈だったデビュー作『Ten』が遅鈍に思えるほど完璧なバンドアンサンブルが展開されている。特に素晴らしいのが新加入Dave Abbruzzeseのドラムで、乾いた高いスネアのキレの良い音は前作には全くなかった大きな魅力だ。Eddie Vedderをはじめ相当ピリピリした雰囲気で製作されたようだが、その緊張感が良い方向に作用している。グランジ云々は評論家による枠組みでしかないが、本作はそれを飛び越える普遍的な名盤としての風格を当初から備えていた。


Oasis 『Definetely Maybe』 (1994)

"Digsy's Dinner"

私は『(What's The Story) Morning Glory ?』と『The Masterplan』は大好き、他は曲単位でいくつか好き、というくらいのリスナーで、本作もこれまで良さがあまり分かっていなかった。

しかし30周年記念盤のMonnow Valley Versionを聴いて、荒いだけだと思っていた曲たちのあまりのメロディの美しさに気付いてしまった(遅すぎ)。ノエルの書くメロディは、リアムの地声が出る高さのギリギリのハイノート(F4#くらい)に何回もピークがくるようなメロディになっている(※)。その時のリアムの声の切なさと言ったらない。私のように大ファンでないという人こそ必聴。

※例えば、"Rock 'n' Roll Star"なら"I live my life for the stars that shine. People say, "It's just a waste of time"の太字のところ、"Live Forever"ならMaybe I just wanna fly. Wanna live, I don't wanna die. Maybe I just wanna breathe. Maybe I just don't believe"の太字のところなど。


Suede 『Sci-Fi Lullabies』(1997)

"This Time"

もちろん退廃的な美を追求した『Dog Man Star』やグラムロックの意匠を借りた『Coming Up』といった"本編"も大好きだが、私はむしろ素朴なシングルカップリング曲の方が好きだ。悲劇的なムードがあくまでサラッと演奏されているのがたまらない。特に"This Time"はSuede史上最高傑作曲だと思っている。だからこのBサイド集が一番好きだったりする。

空っぽになった退去直前の部屋、幼少期に住んでいた街の過疎化、子供の私と笑顔で写る両親の写真、誰もいない夕暮れの草原、そういうものを見る時の感覚に近いものがある。「失われていくものへの切なさの大きさは、それを愛した感情の大きさに等しい」。Adrianne Lenkerの言っていた通りだと思う。


Massive Attack 『Mezzanine』 (1998)

"Risingson"

前2作のヒップホップ/アーバンソウル路線から逸脱し、オルタナティヴロックの暗さと激しさを大胆に取り入れた実験的な作風に。そこに至るまでにはメンバー間の意見の対立が存在し、相当緊張感に満ちた雰囲気で製作されたらしい。実際に創設メンバーのAndrew Vowles(aka Mushroom)は本作後に脱退している。イヤホンよりも、低音のよく出るスピーカーで聴きたい。部屋の空気をコレで満たした時の快感は他では得難いものがある。


Happyness 『Floatr』(2020)

"Seeing Eye Dog"

雑な言い方をすると、PavementSparklehorse系統のインディロックの歴史の中で一番良いメロディを歌っているアルバム。"Undone"とか"Seeing Eye Dog"とかはもうメロディから水しぶきが飛んでいる。本作からもう4年。似たアルバムを探して新譜/旧譜を聴きまくったけど、結局これを超えるものには出会えていない。全く音沙汰が無いけどまだバンド続けてるんだろうか。


Leave Yourself Alone 『Leave Yourself Alone』(2023)

"Goodness Gracious"

出会ってからまだ10ヶ月ほどしか経たないが、上のどのアルバムよりもこのアルバムへの愛着は強い。インタビューどころかレビューすら一つも無いので、どういう素性で何を考えている人達なのか全く分からないのがもどかしい。

だけどその「謎」がまた良い。隠されれば隠されるほど知りたくなる。絶対に音楽を続けてほしい。かつてのMy Vitriolのようにフェードアウトしていくのだけはやめて欲しい。2020年代前半の好きなアルバムベスト50を作っているけど、このアルバムの順位は一つしかない。


















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