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The Jesus Lizard 『Rack』 (2024)

8/10
★★★★★★★★☆☆


何が信じ難いかと言えば、彼らの強い個性が前作から26年経っても「健在」どころか、ますます猟奇的に研ぎ澄まされていっている点だ。ロックを長いこと聴いていると人間の仕業ではないようなアルバムに出会うことが稀にあるが、これはまさにそれ。

シンバルを全拍で連打しながらスネアの音で人をいてこましたると考えていそうなMac McNeillyもなかなかにヤバいが(“What If”は12/8拍子で4と11拍目にスネアを叩く)、「どうしたらそんなフレーズを思い付くのか」的フレーズしか弾かないジャズ出身Duane Denisonのギターも非常に怖い。”Grind”のギターソロなどはかなりの名演だ。David Simsは”Lord Godiva”や”Swan The Dog”などを聴けば分かるようにギターにユニゾンしながら1弦までフルで使いゴリゴリに隆起するベースを弾いている。冷静さのかけらもない。

David YowはDavid Yowで完全にイってしまっている。「あいつは精神異常者だ!嘘つきだ!殺人者だ!狂っている!」などと狂気の詩を叫んでいるが、本当にそうなのかは相手の言い分も聞いてみないと分からない。何しろ天井に唾を吐きかけそれが垂れてくるのをまた舌で受け止めるような人間なのだ。彼の話は鵜呑みにしない方がいい。

Steve Albiniはかつてこのバンドを「90年代で最高のバンド」と評したが、きわめて不当な評価だろう。この演奏に太刀打ちできるバンドは90年代どころか、ロック史全体を見回しても稀有なのだから。


なんだこの顔つきは



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