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Alex Cameron 『Oxy Music』(2022)

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7/10
★★★★★★★☆☆☆


オーストラリアの英雄、4thアルバム。この人の曲は、アウトサイダーの物語であり、シェルターでもある。ネットで出会ったナイジェリア人の男に恋をしたゲイの話や、落ちぶれた売春婦の悲哀など、「普通」の枠から外れた人間に寄り添い、優しく抱擁し続ける姿勢。そのスタンスで言えば、それこそDavid Bowieに近いものを持っていると思う。

タイトルは言うまでもなくRoxy Musicのもじり。安定感あるスクエアなリズムや、サックス/ピアノ/ミュートギターで味付けをするあたりは、確かに『Manifesto』等に似ていなくもない。だがサウンド自体と言うよりは、変人がAOR風のムーディな音楽をやっているが、どこかが明らかにヘンで、ネタなのかマジなのかよく分からない、その立ち居振る舞いそのものがよく似ている。"Roxy"(煌めきの意味)からRを取り除いて"Oxy"(ドラッグのスラング)とするところがなんとも彼らしい。

この人はとにかくメロディの書ける人で、本作も例外ではない。どちらかと言うとエモーショナルで"クサい"メロディを書くタイプだが、それがわざとらしくなく、スッと胸に入ってくる。捨て曲は一切無いが、特にラストのタイトル曲は真骨頂。ゲスト(Sleaford Mods)を招き、一見ファニーな雰囲気だが、そこから漏れ出す真摯な優しさと鋭さに、ノックアウトされる。感動する。

常に弱者の側に立ち、異様なカリスマがあり、胸熱くするストーリー性があり、裸で変なダンスをしている。私の中でロックスターとはこういう人のことを指す。


よく海岸で変なダンスを踊っている。

↓最高傑作『Forced Witness』(2017)より


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