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書評

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2018年11月の記事一覧

原田マハ(2008)『カフーを待ちわびて』宝島社文庫



ドラマ。ある日突然、平凡な日常に起こる一連の珍しい出来事。運命の出会い、傍にいてくれること、失われるふるさと、涙のわけ、包み込む温もり、生きて死ぬこと、勘違いとすれ違い、思い出のなか、カフー。

ずっとここでしか生きてこなかった。それでも、ドラマは起こる。少し踏み出せば、幸せが手に入る。世界に一人きりでない限り、いつかきっと巡りめぐってその時は訪れる。ただ待っているだけの人の許を除いて。

碧野圭(2018)『駒子さんは出世なんてしたくなかった』キノブックス



ハプニング続出に見えて、長い目で見ればそれは「変わらない毎日」だったりする。大変なことがたくさんある人生だけど、なんとか乗り切ろうと頑張っていれば晴れ間が見えてくるっていう生き方の大原則はここにも。

人の心の中にある、あんまり綺麗じゃない感情が、生まれては消えていくどろっとした黒い感情が、余すことなく書かれている。でも現実って確かにこんなもんかもしれない。もちろん温かな幸せな気持ちもあるわけ

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蒼井ブルー(2015)『僕の隣で勝手に幸せになってください』KADOKAWA



言葉が伝える大きな力。生きる力だったり、愛する力だったりする。そんな力をこの本から少しもらっちゃおうかな。写真をとってみたい。言葉を発してみたい。きれいに真っすぐ生きてみたい。

心が綺麗な人が、美しい言葉を紡げるのだろうか。正しい人が、人を動かす言葉を持っているのだろうか。たぶん間違っていないけど、ホントのところわからない。正直な思いなら、なによりも強い気がした。

藤岡陽子(2016)『手のひらの音符』新潮文庫



なにをするまでもなく、ふとそこに与えられているような繋がりというものがあったみたい。その繋がりに、幸運にも振り回されて生きる人の、果てしなく幸運な物語のようだ。

帰る場所とか、馴染みの深い面々とか、感動の再会とか、きっとつらく悲しい日々の中で育った人にも少しは与えられている福音を描くのか。今そこで普通に働いているあの人の過去は、どんなだったろうか。