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読書で「うつ」をやり過ごす

2016年、うつ病になって初めてのお正月が過ぎ、2月に入った頃、なんとか減薬を終えて新しい抗うつ薬のNaSSAを飲み始めました。効果が出るまで、また数週間の我慢です。


襲い来る自死願望

そんな時期でも容赦なく、希死念慮(ざっくり言えば、自死願望。わかりやすさを優先し、これからは自死願望と書くことにします)は襲ってきます。

耳を塞いでも、何をやっても「死にたい」「消えたい」と自死を訴える声は脳内から消えてくれません。

自死願望を押さえ込むために抗不安薬を使うのですが、効果は2~3時間のこと。またすぐに浮かび上がってきては、脳内で騒ぎ立てます。

しかも私の使っている抗不安薬には強い依存性があるため、一日に使う回数が限られていました。まさに死ぬより他に出口なし、といった心境だったのです。

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本という精神安定薬

そんな私を救ってくれたのは本を読むことでした。
子供の頃から本は好きで、夜遅くまで読みふけって怒られても、まだ読んでいました。というのも、本を読んでいると時間を忘れて没頭しちゃうんですよね。まぁ、暗がりでも本を読んでたせいで、目は悪くなっちゃいましたけれど。

でも、本好きだったおかげで、自死願望が襲ってきたら物語の世界に避難することができました。そして、うつの人が書いた闘病記や、うつの取説としての医学エッセイや医学書は、私にうつと向き合う勇気をくれました。いわば私にとって本は、自死願望をやり過ごす精神安定薬のようなものです。

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調べてみると、読書はうつの改善に何らかの効果が実際にあるみたいで、こんなデータを見つけました。

アメリカのイェール大学で行われた研究ですが、8週間、週に3回、30分の読書をしたうつ病患者と、同じ条件で健康教育のビデオを観たうつ病患者で効果を比べてみたそうです。

すると、読書を続けたうつ病患者について、抑うつ気分や不安、不眠、無気力、集中力低下といった症状の改善がみられました。

同じような研究は国立精神・神経医療研究センターでも行われていて、こちらでもQOL(生活の質)の改善が確認されています。

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私の事例でいうと、『うつ病の脳科学』という本を読んだことが、心の安定につながりました。

それまでにもうつの本は読んでいたのですが、本書は「脳科学からみたうつ病」という切り口が斬新だったので何度も読みました。うつ病をめぐる問題点や、「なぜ抗うつ薬は、効くまでに何日もかかるのか」など、知りたかった情報がいろいろ紹介されていました。

おかげでうつ病のメカニズムについて、抗うつ薬のことについての理解が進み、ある意味うつ病に対する覚悟ができました。

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「うつを生きる」ために、おすすめしたい本

いままで読んできた本の中で、うつの方におすすめしたい本を5冊挙げてみました。ただ、なにしろうつ歴10年なものですから、本によっては書店よりも古書店で探したほうがいい本もあることをお許しください🙇

まず1冊目は、細川貂々さんの『ツレがうつになりまして。』です。うつになって最初に読んだ本で、その後のツレがうつになりまして。『7年目のツレがうつになりまして。』と、シリーズ全巻読みました。

3巻を通してうつ発症から、寛解して社会復帰するまでのドラマが描かれています。その意味で自分がどうなっていくかが見えやすいので、参考になります(まさか自分のうつ歴がツレさんの7年を超えるとは、はじめて読んだときには思いもよりませんでしたが)。

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2冊目は、日本漫画家協会賞大賞、手塚治虫文化賞漫画大賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、日本SF大会星雲賞ノンフィクション部門などを総なめにしたノンフィクション漫画失踪日記吾妻ひでおさんのマンガ日記『うつうつひでお日記DX』です。

日記ということもあるのですが、この作品、事件も波乱も何も出てきません。ただ、ご飯を食べて、本を読んで、薬を飲んで、寝て、たまに仕事をするという日常が淡々と描かれているだけです。それでも読ませてしまう吾妻さんの力はすごいです。

うつになった私の毎日も、本を読んで、ご飯を食べて、薬を飲んで、たまに仕事をするという毎日の繰り返しでした。いまはそこにnoteを書くというタスクが増えただけです。

あなたの生活はどうですか? この本を読んでいると、そんな単調な毎日でもいいんだ。焦らなくてもいいんだと心を落ち着かせてくれます。

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3冊目は、ドクター秩父山などの作品を発表し、noteでも活躍されている漫画家・田中圭一さんの『うつヌケ』です。

ご自身のうつ病脱出体験をベースに、うつ抜けに成功した人たちをレポートしたドキュメンタリーコミックです。

登場するのは、大槻ケンヂさん、宮内悠介さん、精神科医のゆうきゆうさん、内田樹さんなど、ご本人を入れ18人のうつ抜け体験が描かれています。

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4冊目は和田秀樹先生『うつの壁』です。和田先生は、「うつ病は、脳のハード面とソフト面の両方が故障して起こる病気」と述べられています。

ハード面の不調(脳内の神経伝達物質の減少から起こる)は、薬でよくなることが多いですが、ソフト面の不調(考え方や、ものの見方の偏り)をあらためないと、かなりの確率で再発してしまうというのです。

実は、いま拝読している最中なのですが、「まさに同感」と思ってしまったのでご紹介しました。認知行動療法などの心理療法が重要なのは、ここに理由があります。

2023年の9月27日に刊行されているだけあって、最新のうつ事情も網羅しているのでおすすめです。

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最後は加藤忠史先生『うつ病治療の基礎知識』です。2014年2月12日刊行と時間は経っていますが、うつ病について知りたいことがすべて紹介されています。先述の『うつ病の脳科学』と合わせて本書を読むことで、客観的に自分の病状を把握することができました。

医師がうつ病と診断する基準は何かというところから、治療の流れ、処方される薬の効用や注意点、心理療法やその他の療法について、良い主治医の見つけ方まで、いま手に入るうつ病の解説書の中では最良のものだと思います。刊行から10年経っていますので、できれば増補改訂版を出してほしいところです。

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本が読めなくなったという方へ

うつを患う方の中には、本が読めなくなったという方がいらっしゃます。
実は私もうつになった当初は、ビジネス書や自己啓発書を読むことができませんでした。この「読めない」というのもうつの症状の1つです。

ですから「読めない自分にイライラする」などと思い詰めないでください。無理して読書をしようとするほうが、状態を悪くしてしまいかねません。

たとえば、絵本や写真集、マンガなど文字の少ないものを、読んでみるのはいかがでしょう。それから好きな音楽を聞いたり、映画を観たりして、心がリラックスできるなら、それでもかまわないのではないでしょうか。

でも、やっぱり本が読みたいという場合は、まずは自分が興味を持てるジャンルの本を短い時間から。そして徐々に時間を延ばしていくと、無理がないです。

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あるいはオーディオブックで聞く手もあります。たとえば、Audubleは12万以上もの作品が聴き放題だそうです。

うつのときの読書は「楽しさ重視」です。あなたが、年300冊読むという猛者の方であったとしても、うつのときは「月○冊は読まなければ」などという目標は設定せずに、無理せず自分のペースで読書をするのがいいようです。

うつ状態が改善すれば、自然と読書を楽しむことができるようになるはずです。私も症状の改善に伴って、それまで読めなかったビジネス書や自己啓発書を読むことができるようになりました。

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今回のまとめ

今回は「読書」でうつ抜けするヒントについて考えてみました。

自分が好きな本を読むと、気分転換になりますし、小説の場合、登場人物に共感することで、「自分も社会とつながっているんだ」と孤独感を和らげてくれます。

また、本を読んで新しい知識を身につけると視野が広がり、自己肯定感が高まります。何より好きな本を読むことはリラックスになります。

私のうつ抜けの道はいつになることやらわかりません。しかし、本を読んで焦らずにその日を待とうと思います。

人生は、いつからでも、何度でも新しくはじめることができます。そして、どんな状況からであっても、人は必ず這い上がって「その人なりの幸せ」をつかむことができると私は信じています。

及ばずながら、あなたがうつ抜けする日を心より祈っています。

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ちなみに、うつ病については、いわばエピソード0としてこんな記事も書いています。

毎週金曜日を目標に更新しています。
(今週金曜日は都合によりお休みさせていただきます)


はじめましての方も、いつも来てくださる方も、
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

これからも「うつ抜け」に役立ちそうな記事を書いていきますので、
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明日が、あなたにとって穏やかで心安らぐ日になりますように!


「つくだって、こんな人」というのをまとめています。

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