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自己紹介代わりの本10冊

少し前にTwitterで「#名刺代わりの本10冊」というハッシュタグをよく見かけました。今日は、それにならって、「私の人生をつくってきた本たち」を自己紹介もかねてご紹介していきたいと思います(ちょっと長いです)。


カラマーゾフの兄弟

いまを去ること30年以上も前、高校3年の現代国語の課題で、「小説を書いてみましょう」というのがあったんですね。

もともと本を読むのは好きでした。でも、それまで文章なんて書いたことありませんでした。ましてや小説を書くなんて考えたこともなかったんですね。でも、思いついたことをいろいろ書いているうちに、なんだか形になってきたんです。

書いているうちに楽しくなってきて、気がついたら100枚近く書いていたんですね。何か自分にとって大切なものを探すというような話だったと思うんですが、とにかく先生に提出して読んでもらいました。

「よく書いたね。つくだくんは『カラマーゾフの兄弟』を読んでみたら、面白いと思うよ」

昔のことなのでよく覚えていませんが、そんな話を先生はしてくれたんです。さっそく書店で買って読んでみました。

なんだこれ! 小説って、すごいな。もう夢中で読みました。あの頃は体力もあったせいか3~4日で、読み切ってしまって、『悪霊』も読みました。

高校を出てからマスコミ系の学校に行くことにしたんですが、もうもろにその先生のひと言と、『カラマーゾフの兄弟』を読んだことがきっかけです。

秋山晶全仕事

マスコミ系の学校にいくなかで出会ったのが「コピーライティング」という仕事です。リクルートがまだB-ingやとらばーゆという就職情報誌を出している時代に、アルバイトでもぐりこんでコピーライターをはじめました。

そのとき、手本にしたのがライトパブリシティの秋山晶さんのコピーを集めた『秋山晶全仕事』です。

秋山さんというと「男は黙ってサッポロビール」のコピーで有名ですが、私は中でもキューピーマヨネーズの広告が好きで、よく原稿用紙やノートに書き写していました。

ストロベリー・アイスクリーム・ソーダ

ちょうど同じ頃、よく書き写していたのが、アメリカの雑誌「ニューヨーカー」によく作品を発表していたアーウィン・ショーの作品。元編集者で直木賞作家でもある常盤新平さんが翻訳した文章を、何度も書き写していました。

なかでも好きだったのが、短編集『夏服を着た女たち』に収録されていた「ストロベリー・アイスクリーム・ソーダ」です。

本作品は、ある夏の日、田舎町で暮らす兄弟たちが遭遇した出来事を描いたものです。作品でのタイトルの扱い方がとても素敵で、読むたびに人間にとって誇りとは何かを考えさせてくれます。

いい言葉は、いい人生をつくる

その後編集者となり、ぶんか社で書籍の編集をしていたとき、版元側の進行担当として受け持つことになったのが、齋藤茂太先生の『いい言葉は、いい人生をつくる』です。編集を手がけたのは、フリーランスの編集者として数々のヒット作を送り出しているYさん。

単行本版もそこそこ売れたのですが、他版元から文庫が出ることになってYさんが再度編集したところ、これが売れに売れて、100万部を超えてしまいました。編集の力って、すごいと実感させられた出来事でした。

このときから、作品の魅力を時代に合わせて引き出していく編集力の大切さをより強く感じるようになりました。

老子

『いい言葉は、いい人生をつくる』の単行本を担当して以来、名言を集めるのが好きになり個人的に集めるようになりました。特に興味を持ったのが中国古典の老子の言葉。「上善は水のごとし」「大器晩成」など、世間の常識でこわばった心を、老子の言葉はほぐしてくれます。

好きが高じて、フリーランスでの企画第一弾として、守屋淳先生にご監修いただいて、老子の言葉の本まで書きました。いまでも、何かで行き詰まるたび老子の言葉を思い返します。

建築家安藤忠雄

「できること」と「やりたいこと」の間にはいつも距離があります。ときにはその距離の大きさに潰れてしまいそうになることがあります。そんなとき読んでいたのが、建築家として数々の優れた作品を手がけてきた安藤忠雄さんの自伝です。

学歴もコネもない中からプロの建築家になり、世界を舞台に仕事をしている安藤さんの言葉に触れると、「よし、もう一度頑張ろう」と元気が湧き出てきます。

きょう、反比例 編集者・竹井正和

コピーライター時代に『秋山晶全仕事』を耽読したように、編集者になってから折に触れて読んでいる本が2冊あります。その1冊が本書。出版社リトルモア、そしてフォイルの創業者の竹井正和さんの自伝的著作です。

本がただの商品として扱われることに対して、竹井さんは「めっちゃ切ない」と本書で吐露しています。なぜなら、「人が本と出会うってことには、ロマン、センチメンタル、卑猥さ、もう無限大に含まれてる」からです。「本は人間と同じように奇跡を生むことができるはず」だからです。

「なぜ自分は編集者という仕事を選んだのだろう」という原点に、自分を立ち戻らせてくれる一冊です。

圏外編集者

そしてもう一冊が都築響一さんの『圏外編集者』です。「POPEYE」編集部の雑用アルバイトから編集者人生をスタートし、「POPEYE」や「BRUTUS」で、現代美術や建築、デザインなどの記事を10年にわたって担当。

その後、『TOKYO STYLE』や『ROADSIDE JAPAN』などを出版、66歳のいまも現役の編集者として活躍し続けていらっしゃる都築さんの半生を描いたものです。

『建築家安藤忠雄』も『きょう、反比例』も『圏外編集者』もそうなんですが、壁なんて気にせずに「好き」に向かって前に向かっていく話が好きなんですね(このあとご紹介する『9番目の音を探して』もそうです)。

9番目の音を探して

47歳にしていままでのキャリアを捨ててニューヨークでジャズを学び、ミュージシャンとして再スタートを切る。大江千里さんのそうした生き方は、ライフシフトの見本として話題になりましたね。本書は、その大江さんのニューヨークジャズ留学の様子を描いたものです。

47歳で20代の同級生と一緒になってジャズを学ぶ。全く別ジャンルからの挑戦ではなく、音楽自体はやっていたものの、なかなかできることじゃありません。ときにその同級生に「ジャズができてない」といわれる。挙げ句の果てに無理な練習がたたって、肩を壊す。

何が大江さんをそこまで駆り立てていたんだろう。おそらくそれは「変わりたい」という願望ではなく、ただ「ジャズが好きだ」という感情だと思いました。

ジャズが好きで、ジャズができるようになりたくて、好きから始まるまっすぐな道を一歩一歩歩いていた結果、大江さんはニューヨークでプロのミュージシャンとして活動するようになったのだと。

もちろん「好き」と思っているだけではダメで、行動したからこその結果ですが、同じ行動するなら「好きなこと」のために汗をかいて知恵を絞ろうと思うようになりました。

それは今の自分が壁の前で足踏みを続けているせいでもあるんですが、せめて気持ちだけは前を向いていたい。だから、エネルギーをチャージするために読んでいるという感じですね。

長田弘全詩集

最後の一冊は、詩人・翻訳家・エッセイストの長田弘さんの全詩集。時々引っ張り出してきては、読んでいます。その言葉が紡ぎ出す情景の美しさに、口に出すときの言葉の気持ちよさに、心を洗われます。

最後まで読んでくださりありがとうございました。
よい一日を!

ただいま4刷り 構成を担当した書籍が発売されました!


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