堂山勇気

堂山勇気

最近の記事

「生き金」と「死に金」:目に見えないものに投資する

 お金の使い道は古くからある人間の重要なテーマです。美味しい食事に使ったり、流行りの洋服を買ったり、あるいは住宅ローンの頭金にしたり。はたまた、株式や投資信託に“投資”してみたり。  私は、美輪明宏さんの人生訓が好きで、氏の著作を愛読しています。その美輪さんが、お金について語った文章があります。 「お金は“目に見えないもの”に使いましょう。洋服やアクセサリーなど、形あるものは、すぐに流行おくれになり、その価値を失ってしまいます。ところが技術や教養、経験や知識は、目には見えま

    • 『智者道徳に遠し』:偏差値と中庸

      内村鑑三の『代表的日本人』を読んで以来、二宮尊徳の思想に関心を持って来ました。代表的な著作は『二宮翁夜話』と『報徳記』でしょうか。その『二宮翁夜話』のなかに、第101節として、『智者道徳に遠し』とあるのです。少し引用してみましょう。 「翁はこう言われた。才智すぐれた者は、多くは道徳に遠いものだ。文学があれば、申不害や韓非子の刑名の学を唱え、文学がなければ、『三国志』や『太閤記』を引く。『論語』『中庸』などには一言も及ばないものだ。なぜなら、道徳の本理は、才智では理解できない

      • 「陛下の赤子(せきし)」:人間の社会性を考える

        日露戦争、旅順攻略戦において、二百三高地を陥落させるべく、乃木に代わって児玉が第三軍の指揮をとることになった。児玉が出す命令は、第三軍の将校たちにとって驚くべきものであった。二十八サンチ砲という巨大な大砲によって、二百三高地を駆け上がる兵たちの援護射撃を断続的に行う、というものだった。佐藤鋼次郎砲兵中佐は即座に反論した。 「となれば、味方を射つおそれがあります。おそれというより、その公算大であります」 児玉は平然と、「そこをうまくやれ」と答えた。 佐藤は、激した口調で反論

        • 教育の「本末」

          4年前まで、薄給ながらも、英語や数学で口を糊していました。そして今、新しい職探しをするに当って、どうしても英語や数学を利用して働く気になれないのです。もちろん、それには4年間のブランクが影響しているからですが、もう一度、英語や数学をブラッシュアップして、ブランクを乗り越えようとは思えないのです。一言で言うと、英語や数学がつまらなくなってしまったのです。 夏目漱石の『野分』に次のようなくだりがあります。 “英語を教え、歴史を教え、ある時は倫理さえ教えたのは、人格の修養に附随

        「生き金」と「死に金」:目に見えないものに投資する

          10円を笑う者は10円に泣く:「積小為大」の精神

           将棋の強い人は、「歩」の使い方が上手だと言われます。初心者などは、「歩」の価値を軽んじて、大駒ばかり求めます。一方、プロの棋士、女流棋士のなかには、「一歩千金」と揮毫される先生も多数おられます。  菊池寛は、「人生は一局の棋なり」と言いました。将棋の棋力を人生に拡張すると、たとえば、10円玉や1円玉が、そこら辺に転がっているようでは、「一歩千金」の境地からは遠いと言わざるを得ません。精神科医の樺沢紫苑先生は、「小さな幸福(プチ幸福)に気がつけない人は、大きな幸福にも気がつけ

          10円を笑う者は10円に泣く:「積小為大」の精神

          我が節約生活の始まり②:micromaniaに陥らないために

          コンビニで買ったジムビームのミニボトル(200mL)が517円(税込)。大切に飲んでいると、4日持つことが分かりました。つまり、1日当たり130円。 酒屋さんの自動販売機で350mLのビール1缶240円を買うのと比較すると、明らかに大きな節約です。 私にとって、節約額も大事ですが、同じくらいアルコール量も大事です。 ビール350mL1缶の場合、350×5%=17.5mL ジムビーム200mLを4日で飲む場合、200×40%÷4=20mL 明らかに、ジムビームの方がアルコー

          我が節約生活の始まり②:micromaniaに陥らないために

          金銭的報酬と社会的報酬:利他的行動の起源

          脳科学者・中野信子は、著書『脳内麻薬・人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』のなかで、我々人間には、ドーパミン報酬系の快楽として、大きく分けて3種類があると述べている。1つは、食べ物や性行為といった「生理的報酬」、もう1つはお金を得るという「金銭的報酬」、そして、もしかしたら人間だけが持つ3つ目の報酬が「社会的報酬」である。  「社会的報酬」とは、具体的には、「承認」「評価」「信用」「信頼」「尊敬」、「友人関係」「知名度の向上」等である。これらの、言わば「非物質的な無形の報

          金銭的報酬と社会的報酬:利他的行動の起源

          我が節約生活の始まり①

           諸事情により、節約生活を始めなければならなくなりました。嗜好品と交際費に充てる予算は、月15000円。  タ、タバコが高い!インターネットで「一番安いタバコ」で検索すると、『フィリップ・モリス』シリーズと『キャメル・クラフト』シリーズが同率1位で430円。これまで吸っていたのが、『メビウス・Eシリーズ』で500円。差額70円×30日で2100円の節約です。  それでも、430円×30日=12900円。目標は1日1箱。  次は、酒です。ローソンで、ジムビームのミニボトルが51

          我が節約生活の始まり①

          努力が苦にならない、それがあなたの「道」

          あだち充のコミック『H2』のなかで、こんなくだりがあります。 比呂「がんばってますなァ。」 春華「国見くん達の練習ほどじゃないわ。」 比呂「勉強と比べられてもなァ。」 春華「目標に向かって  がんばってるのは同じでしょ。」 比呂「ふ――む。」 「どうして  この根気と集中力が  ほかのことには回らねえんだろ。」 春華 「その道を行けっていってるのよ、  自分が力一杯がんばれる道を――」 「みんな探してるのよ、  そういう道を――」 道教の影響か、日本人は「道」という概念が

          努力が苦にならない、それがあなたの「道」

          人生に悩んだら「一事」を思い定める

           悠久の進化の歴史の中で、人間の脳は極度に発達してきました。その結果として、高度な文明・文化を発展させてきた一方で、言わば「頭でっかち」な種として、懊悩の絶えない生き物になってしまった感があります。  物事を必要以上に複雑に考え、煩瑣な事柄に苛まれ、やがては自ら命を断つ人も少なくないのです。生き延びるために発達させてきた脳に、命を奪われるとしたら、これほど本末転倒なことはないでしょう。  そういう悩みに対して古今の賢人たちの言葉は私たちにヒントを与えてくれるのです。 「され

          人生に悩んだら「一事」を思い定める

          「心を耕す」とは比喩ではない

          大学時代にラテン語を教えていただいた先生に紹介された文章のなかに、キケロ―の印象的な一文があります。 Cultura animi philosophia est. (哲学とは心を耕すことである。)  私はこの一文を読んだ時、『ブッダの言葉・スッタニパータ』の『田を耕すバーラドヴァ―ジャ』の章を想起しました。少し長い章なので要約すると、バーラドヴァ―ジャというバラモンが耕作に勤しんでいるところに、ブッダがやってきました。バーラドヴァ―ジャは、厳しい農作業のあと炊き出しを行い

          「心を耕す」とは比喩ではない

          何故「政治」よりも「教育」が大事なのか

          明治時代の初頭に、岩倉使節団が渡米したとき、新島襄は使節団に協力したことから、新島は中央政界に太いパイプを築いていた。そして、新島が帰国した際、木戸孝允は新島に中央政府入りを勧めたという。けれども、新島はその誘いを固辞し、自分は私立大学設立に尽力したいと述べたのである。私たちの感覚からすれば、もし自己の理想を社会に反映したいと望むならば、中央政府に入ったほうが賢明であると思うだろう。しかし、新島は教育事業を選んだ。このことには、深い哲理が潜んでいる。 明治時代は現代と比べて

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          数の概念と精神の成熟

           人間誰しも、快楽を希求して日々活動しているわけですが、必ずしも快楽ばかりが幸福ではありません。明治時代の碩学、大西祝は、『悲哀の快感』『辛苦』などを著し、私たちにとってマイナス(負)である「悲哀」や「辛苦」もまた幸福にとって欠かせないと述べています。  私たちは、小学生の時代、やがて習う負の数という概念に触れることなく、正の数の範囲のなかで算数を学びます。正の数、負の数に、数の概念が拡張されるのは中学校に入ってからのことです。  じっさい、小学生は快楽(+)だけを求めて、日

          数の概念と精神の成熟

          人間の【実】力

          【実るほど頭を垂れる稲穂かな】 意味:「稲の穂は、実が入ると重くなって垂れ下がってくる。学問や徳行が深まるにつれて、その人柄や行為がかえって謙虚になることのたとえ」 立派なタラバガニを買って楽しみにしていたのに、いざ食べてみると【中身】がスカスカだった経験は誰にでもあると思います。 人間も同じで、イケメン、美女、立派な肩書きに期待して、いざ深く交際してみると、がっかりする【内面】だったりもします。 そういう経験をしないために、最初から人間の【実力】を推し量る目安は無い

          有料
          100

          人間の【実】力

          「感謝」とは「あるもの」を認識すること

          私たちは、膨大な自明性の上に生きています。 自動車、電車、スマホ、水道、電気、ガスに始まり、お米、机、ペン、コーヒーカップ、ベッド、布団を経て、空気、大地、水に至るまで、膨大な条件の上に生活しています。 でも、それらはあまりに「当たり前(自明的)」すぎて、普段私たちはそれらを「認識」できません。 「存在しているのに認識できない」ものが、この世には沢山あるのです。 そこで、存在しているものを認識できるようにするのが、「感謝ワーク」です。 「感謝日記」に「あるもの」を書

          「感謝」とは「あるもの」を認識すること

          人とウィスキー:『響30年』は70万円

          30代の頃、ウィスキーにハマりました。 ウィスキーは一般的に熟成の期間が長いほど価値が高いものです。 精神科医の樺沢紫苑先生は、余市蒸留所を訪れ、0年、5年、10年、15年の原酒を試飲したことがあるそうです。 年数を経るにつれて、とげとげしさが抜け、まろやかに美味しくなっていくとのことです。 樺沢先生は、「これは人間の成長そのものだ」と感じて、さらにウィスキーのファンになったと言います。 人間は普通、年を取るに連れて、価値が逓減していくと考えられていますが、それは、

          人とウィスキー:『響30年』は70万円