堂山勇気

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最近の記事

肉体と精神と『本物の愛』

池田晶子は幾つかの著作のなかで、「アンチエイジング」について論じている。そのうちのひとつを引用しよう。 「だいいち、アンチエイジングを掲げて生きられる人生の、その『最後』、人は、どのようにして死ぬのでありましょうか。アンチエイジングという思想は、人はどのようにして死ぬのかということを教えられるものでありましょうか。美と健康こそ人生の幸福とする思想は、必ず訪れる死という現実に対処できるものは持っていない。どう考えてもこの思想は、人間の思想としては、浅薄かつ不可能なものだと言え

    • 「大学教授」にまつわる夏目漱石の記述

      私の幼馴染が某大学の教授に就任していたことを知って、「第二の漱石」を自認する私は(冗談です)、夏目漱石が様々な著作で「大学教授」について記述している箇所をまとめてみました。今回は、大学の教員の方にはデリケートな記事なので、以下は有料記事にしました。

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      • 幸せな苦学の思い出

        京都は大学が比較的たくさんあります。 私が学生の頃には、京都の大学群が協定を結んで、京都コンソーシアムという制度を作って、他大学で学んだ単位を互換してくれる制度が導入されていました。 私は文系でしたが、高校時代には物理や数学に強い関心を持っていたので、単位互換制度を利用して、京都産業大学まで天文学や宇宙物理学の授業を受けに行っていました。 その頃の私は、相当な変わり者で、お弁当を自分で作って、公共交通機関をなるべく使わず、自分の足で歩くことにこだわっていました。 今出川から

        • 池田晶子名文集

          「精神または心と言ってもいいですが、心の喜びということを、我々はいつも忘れがちですね。若さや美貌や、もしくはお金があっても、心が不幸ならその人は不幸だという当たり前からわかるように、我々の幸福は、やはり心の幸福に尽きるんですよ。心さえ幸福なら、若さも美貌もお金も、極論すれば、何にもなくったって幸福なんですよ。だって、何がなくても自分は幸福だと思っている人が、どうして不幸であり得ますかね。 (中略)  そのような外的幸福に対するところの内的幸福というのは、なんというか、もっと微

        肉体と精神と『本物の愛』

          中島敦『弟子』:利用価値と存在価値

          司馬遼太郎は『ロシアの脅威』というエッセイの中で、第二次世界大戦当時の日本軍の状況について次のような分析をしています。 「ところが、それより上にいくと、非常にグローバルにものを見なければなりません。将軍のことをゼネラルといいますが、総合者の意味ですね。諸価値の総合者という意味です。将軍は日本軍にも階級としてはいました。しかし、諸価値の総合者はいなかったのではないか。 」 司馬遼太郎はこのように述べ、当時のGeneralの不在を指摘します。つまり、スペシャリストはたくさんいたが

          中島敦『弟子』:利用価値と存在価値

          社会を変革したいと望むなら

           2010年NHK大河ドラマ『龍馬伝』を見て、坂本龍馬のように天下国家を変革したいと思うのが男子の常。私もその例に漏れませんでした。けれど、これが大きな落とし穴なのです。 文筆家の池田晶子は次のような文章を残しています。 「人はよく、他人や社会を責めて糺そうとするけれども、他人や社会を責めて糺そうとするほど、自分は正しいのか、というふうにはけっして考えない。自分が変わらずに、他人や社会の側に変われというのだから、そんなの無理である。しかし、およそ『革命』という言葉が意味をも

          社会を変革したいと望むなら

          「感謝」の本当の意義

           カエルの眼は動いているものしか見えません。それは人間の眼も同じです。人間の眼が静止しているものを見ることができるのは、絶えずわずかに眼球を動かして、静止しているものを捉えているからです。これを「固視微動」と言います。実際、人間の眼に麻酔をかけて、固視微動を止めると、やがて何も見えなくなります。  あらゆる生物は、「時間的微分作用」を受けます。「時間的微分作用」とは「慣れ」のことです。慣れると、存在しているものを認識できなくなるのです。手足があるのは「当たり前」、親がいるのは

          「感謝」の本当の意義

          紀行文:滋賀県安曇川『藤樹書院』を訪れて

           3年前、京都に住んでいた頃、京都駅から湖西線に乗って40分ほど、滋賀県安曇川駅に行きました。内村鑑三『代表的日本人』を読んでから、江戸時代初期の陽明学者・中江藤樹に強い関心を持っていて、藤樹の主著『翁問答』を愛読していました。その藤樹の故郷が安曇川にあるので、日帰り旅行の気分で、足を延ばしました。  そもそも、中江藤樹に何故関心を持ったかというと、『代表的日本人』にもありますが、藤樹は、弟子の学識を著しく軽んじ、人柄や人格を重んじた、と言われているからです。普通なら、学問に

          紀行文:滋賀県安曇川『藤樹書院』を訪れて

          「生き金」と「死に金」:目に見えないものに投資する

           お金の使い道は古くからある人間の重要なテーマです。美味しい食事に使ったり、流行りの洋服を買ったり、あるいは住宅ローンの頭金にしたり。はたまた、株式や投資信託に“投資”してみたり。  私は、美輪明宏さんの人生訓が好きで、氏の著作を愛読しています。その美輪さんが、お金について語った文章があります。 「お金は“目に見えないもの”に使いましょう。洋服やアクセサリーなど、形あるものは、すぐに流行おくれになり、その価値を失ってしまいます。ところが技術や教養、経験や知識は、目には見えま

          「生き金」と「死に金」:目に見えないものに投資する

          『智者道徳に遠し』:偏差値と中庸

          内村鑑三の『代表的日本人』を読んで以来、二宮尊徳の思想に関心を持って来ました。代表的な著作は『二宮翁夜話』と『報徳記』でしょうか。その『二宮翁夜話』のなかに、第101節として、『智者道徳に遠し』とあるのです。少し引用してみましょう。 「翁はこう言われた。才智すぐれた者は、多くは道徳に遠いものだ。文学があれば、申不害や韓非子の刑名の学を唱え、文学がなければ、『三国志』や『太閤記』を引く。『論語』『中庸』などには一言も及ばないものだ。なぜなら、道徳の本理は、才智では理解できない

          『智者道徳に遠し』:偏差値と中庸

          「陛下の赤子(せきし)」:人間の社会性を考える

          日露戦争、旅順攻略戦において、二百三高地を陥落させるべく、乃木に代わって児玉が第三軍の指揮をとることになった。児玉が出す命令は、第三軍の将校たちにとって驚くべきものであった。二十八サンチ砲という巨大な大砲によって、二百三高地を駆け上がる兵たちの援護射撃を断続的に行う、というものだった。佐藤鋼次郎砲兵中佐は即座に反論した。 「となれば、味方を射つおそれがあります。おそれというより、その公算大であります」 児玉は平然と、「そこをうまくやれ」と答えた。 佐藤は、激した口調で反論

          「陛下の赤子(せきし)」:人間の社会性を考える

          教育の「本末」

          4年前まで、薄給ながらも、英語や数学で口を糊していました。そして今、新しい職探しをするに当って、どうしても英語や数学を利用して働く気になれないのです。もちろん、それには4年間のブランクが影響しているからですが、もう一度、英語や数学をブラッシュアップして、ブランクを乗り越えようとは思えないのです。一言で言うと、英語や数学がつまらなくなってしまったのです。 夏目漱石の『野分』に次のようなくだりがあります。 “英語を教え、歴史を教え、ある時は倫理さえ教えたのは、人格の修養に附随

          教育の「本末」

          10円を笑う者は10円に泣く:「積小為大」の精神

           将棋の強い人は、「歩」の使い方が上手だと言われます。初心者などは、「歩」の価値を軽んじて、大駒ばかり求めます。一方、プロの棋士、女流棋士のなかには、「一歩千金」と揮毫される先生も多数おられます。  菊池寛は、「人生は一局の棋なり」と言いました。将棋の棋力を人生に拡張すると、たとえば、10円玉や1円玉が、そこら辺に転がっているようでは、「一歩千金」の境地からは遠いと言わざるを得ません。精神科医の樺沢紫苑先生は、「小さな幸福(プチ幸福)に気がつけない人は、大きな幸福にも気がつけ

          10円を笑う者は10円に泣く:「積小為大」の精神

          我が節約生活の始まり②:micromaniaに陥らないために

          コンビニで買ったジムビームのミニボトル(200mL)が517円(税込)。大切に飲んでいると、4日持つことが分かりました。つまり、1日当たり130円。 酒屋さんの自動販売機で350mLのビール1缶240円を買うのと比較すると、明らかに大きな節約です。 私にとって、節約額も大事ですが、同じくらいアルコール量も大事です。 ビール350mL1缶の場合、350×5%=17.5mL ジムビーム200mLを4日で飲む場合、200×40%÷4=20mL 明らかに、ジムビームの方がアルコー

          我が節約生活の始まり②:micromaniaに陥らないために

          金銭的報酬と社会的報酬:利他的行動の起源

          脳科学者・中野信子は、著書『脳内麻薬・人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』のなかで、我々人間には、ドーパミン報酬系の快楽として、大きく分けて3種類があると述べている。1つは、食べ物や性行為といった「生理的報酬」、もう1つはお金を得るという「金銭的報酬」、そして、もしかしたら人間だけが持つ3つ目の報酬が「社会的報酬」である。  「社会的報酬」とは、具体的には、「承認」「評価」「信用」「信頼」「尊敬」、「友人関係」「知名度の向上」等である。これらの、言わば「非物質的な無形の報

          金銭的報酬と社会的報酬:利他的行動の起源

          我が節約生活の始まり①

           諸事情により、節約生活を始めなければならなくなりました。嗜好品と交際費に充てる予算は、月15000円。  タ、タバコが高い!インターネットで「一番安いタバコ」で検索すると、『フィリップ・モリス』シリーズと『キャメル・クラフト』シリーズが同率1位で430円。これまで吸っていたのが、『メビウス・Eシリーズ』で500円。差額70円×30日で2100円の節約です。  それでも、430円×30日=12900円。目標は1日1箱。  次は、酒です。ローソンで、ジムビームのミニボトルが51

          我が節約生活の始まり①