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自作【毎週ショートショートnote】まとめ

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途中参加している毎週ショートショートnoteの記事だけをまとめたマガジンです。
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記事一覧

【毎週ショートショートnote】噛ませ犬ごはん

校舎裏、ぼくは二つのお弁当の一つをもくもくと食べる。

今日で、八連敗中だ。

手作りのお弁当をいっしょに食べないかと女の子を誘うだけなのに、白い目で見られる。

あげく、ぼくが女の子に弁当を拒否られた後、その女の子に告白すれば、すんなりつきあえるようになるってさ。

ぼくは、好きな女の子とご飯を食べたいだけなのに。

満腹になりながらも、もう一つの弁当を手をのばしたときだった。

「腹いっぱいな

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【毎週ショートショートnote】騙せ林檎パン

昼飯時、校舎裏にて私は弁当つくる系男子といっしょに購買で買ったパンを食べていた。

「こんなの林檎パンじゃない。アップルパイだ」

「はあ? これアップルデニッシュだぞ」

「それはズルい」

この弁当つくる系男子は、ひたすらに手製弁当をつくり、いっしょに女子と食べることを夢見ている。

最近は、その弁当を私が食べている。
もちろん、この男子に誘われてではない。
うまそうな弁当につられたのは私だ。

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【毎週ショートショートnote】ネコクインテット

バンド「ネコクインテット」のリーダー猫屋敷(ねこやしき)は、楽器の手入れをしつつ、残り4人のメンバーを待っていた。

最初に来たのは尾出幸次(おでこうじ)だった。
「リーダー早くない?」
「そんなことないよ」

次に来たのは小番(こつがい)だった。
「早っ、もう来てんのかよ」
「遅いぞ、こづかい」
「こつがいだよ」

その次が狩田(かりた)だった。
「どもっす」
「狩田やっほー」

最後は川井いな

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【毎週ショートショートnote】べこクィーン鉄塔

「リーダー、いなちゃんって女の子にモテてない?」
「小番、ようやっと気づいたねえ」
「なんでだよー。俺のファンなんてほぼ男だぞ」
「ファンはいるだけありがたいものだよ」
「なんで、なんであんな不愛想なやつが」

「小番知らないのか? いなちゃんはファンに話しかけられると真っ赤になって、うなずくだけの赤べこになるんだぜ」
「そうそう。でも少し気に食わないことがあると、女王様なみの無表情で対応するから

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【毎週ショートショートnote】名探偵ボディビルディング

名探偵は鋭い目つきで指摘する。

「あなたが首謀者ですね」
「くっそ!」

指名された人間は近場にいた女性をひきよせると、大声で叫びたてた。

「車を用意しろ!」
「やめるんだ! そんなことをしてもなにもならないぞ!」
「うるせえ!」

車が用意され、首謀者は車で逃亡する。むろん、女性は首謀者に、とらわれたままだ。

「ああ、どうすればいいんだ!」
「落ち着いてください。私に考えがあります」

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【毎週ショートショートnote】迷鑑定バディハイキング

「おつかれ! ボディビル!」
「ああ、帰ってたの」

探偵事務所に帰った名探偵ボディビルディングは、助手であるバディにつれない返事をした。

「帰ってたのって、ひどい!」
「いや、好きな人ができたの~とか言って、もう帰りません! とか言ってたじゃない」
「好きな人に恋人がいたの」
「あんたそういうところは疎いわよね。迷鑑定だわ本当に」
「だってえ、好きになっちゃったんだもん。もうやだー、ハイキング

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【毎週ショートショートnote】草食系男子に教えられたこと

「鎌犬(かまいぬ)ー!」
「しーっ! 静かにして!」
「えー、なんでだよ」

そう言いつつ、私は鎌犬にもたれかかる。
鎌犬は顔を真っ赤にしている。

どうやら鎌犬は私を女の子認定しているようだ。
最近、気づいたのだけれど。
気づいたからには、遊ぶに決まっている。

「周囲の目が気になりすぎるから、せめて僕を呼ぶときは、静かに呼んでください」
「えー、なんでだよ。つまんないじゃん」

そう、つまらな

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【毎週ショートショートnote】ビジュアル系男子に教えられた琴

林檎(りんご)ちゃんは、見た目だけなら、ビジュアル系男子だ。

プラチナブロンドの短い髪に、耳にピアス。
僕より大柄で、一番背の高い生徒が履くズボンの丈は足首より上だ。

そんな林檎ちゃんは、僕に構ってくる。

「鎌犬(かまいぬ)ー!」
「しーっ! 静かにして!」
「えー、なんでだよ」

なんで後ろから抱き着くの、もう。
女の子だって、意識する。

時刻は昼休み。
僕の弁当が目当てなのはわかるけど

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【毎週ショートショートnote】ヘルプ商店街

「商店街でライブ?」
「そ、シャッター商店街になりつつあるから、ライブして盛り上げてってね、お願いされたの」
「そうなんすね」

小番はリーダーである猫屋敷から渡されたチラシをみる。
チラシには、大きな文字で『ネコクインテット』と書かれていた。

小番の心がじいんと震えた。

「こづかい、嬉しそうだな」
「小番。俺、地元でライブやるの夢だったんですよ」
「安い夢」
「なんだと!」

小番を挑発した

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【毎週ショートショートnote】アルプス笑点かい?

「テレビの前のみなさん! こんばんは。アルプス笑点のお時間です。司会の山上です。今日はですね。出張版でして、地域活性化をしていこう! とのことで、商店街をぶーらぶらと歩く企画となっています」

「あれ? アルプス笑点じゃね!」
「おや、私を知っておいでですか」
「当たり前じゃん。ほら、川井、止まれって。本物の山上さんだぞ」
「面倒くさい」

「おや、そちらのお嬢さんに見覚えがありますね」
「俺は?

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【毎週ショートショートnote】ダウンロードファーストクラス

飛行機に乗るだれもが憧れるファーストクラス。
そんなファーストクラスを家にいながらも体験できるインディーズゲームができた。
それが「ダウンロードファーストクラス」だ。

だれが買うのだろう。値段がお手頃なので、俺は試しに買ってみた。

結果、普通のゲームだった。
飛行機に乗りながら、ひたすら時間を潰すゲームだ。
食べ物も飲み物もゲーム内にあるが、食べれるわけでも飲めるわけでもない。座り心地がいい椅

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【毎週ショートショートnote】外道一組

「また、ゲームしてるのかよ」
うるさいやつが帰ってきた。
「別にいいだろ。俺の勝手だし」
「よくねえよ。ブレーカーとんだら怒るじゃねえか」
「そら、そうだろ」
「納得すんな。ほら、飯にするからゲームやめろ」
うるさいやつだ。言われた通り俺はゲームをやめた。
「飯食ったら、ずらがるぞ」
「え? 明日まで大丈夫じゃなかったのか?」
「急な予定変更らしい」
「なら、しょうがないか」

俺は相棒が作った手

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【毎週ショートショートnote】だんだん高くなるドライブ

憧れの高嶺さんとお出かけの前日、彼女は「ドライブで遊びに行きませんこと?」と、おしとやかに私を誘ってくれた。

ああ、嬉しい。
彼女が車を運転できるなんて思いもよらなかったが、そういったギャップすらも、愛おしく思えてくる。

そして、わたしの家にやって来た高嶺さんのマイカーはタクシーだった。

「高嶺さん。わたしの目がおかしいのかな。どう見てもタクシーなのだけど」
「その通りですわよ。どうかしまし

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【毎週ショートショートnote】星屑ドライブ

高嶺さんとのドライブ、未だ車中である。
ときどき、パーキングエリアで停まり昼食を済ませたり、トイレにいったりしたが、ほとんどが車内だ。

「高嶺さん、どこに行くの」
「秘密ですわ」

うれしそうな高嶺さんに、わたしもうれしくなるけれど、不安もうずまいている。タクシーのメーターはとっくにふりきれている。わたしはそんなタクシーをはじめてみた。

やがて、目的地に着いたのかタクシーが止まった。
山の上で

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