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記事の小説まとめ

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記事で書かれた小説をすべてまとめています。
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#毎週ショートショートnote裏お題

【毎週ショートショートnote】 怪人制御冷や麦

「ひやむぎん?」
「当店の看板キャラクターです」

変なポスターだと思っていたが、看板キャラクターだったとは…。

「冷や麦でできたモンスターですわ。そうめんでできたヒーローのソウ・メンが、自分と似ているから、この世から消すために、うどん怪人をあやつって、攻撃をしかけるのですわ」
「くわしいね」
「わたくしが、つくりましたわ」
「…高嶺さん、ああいうの好きだね」
「大好きですわ!!」

わたしは、

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【毎週ショートショートnote】 逆光のみクジラ

「御神体が、すごいですのよ!」
「へえ…これ、なんの神様ですか?」
「わたくしの先祖ですわ!」
「まさかの!」

いや、高嶺さんなら、ありえる。
すごくお金持ちのご令嬢だし。

この神社は、高嶺さんの祖先がお世話になったって言ってたけど…。

そもそも、先祖が建てたのでは?

「この御神体のすごさは、これだけではなくってよ」

高嶺さんは、ごそごそと、コートのポケットから丸いボタンがついた四角い器

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【毎週ショートショートnote】 プールの紅トーナメント

クリスマス特番前、控え室で小番が吠えた。

「水泳は寒いだろ!」
「まあまあ、落ちついて。あ、今の狩田っぽくない?」
「っぽいけど! リーダー、今やることじゃねえ!」
「だよねー」

急遽、僕こと猫屋敷と小番が、クリスマスの特番に出演が決まってしまった。

今年のクリスマスは、狩田といなちゃんのために、ネコクインテットは、ぜんいんお休みしていたのに。

テレビなら、断れない。だって、アルバムの宣伝

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【毎週ショートショートnote】 愛にカニばさみ

「とあっ!」
「うわっ!」

僕の両足の前と後ろに、林檎ちゃんは横から、自分の両足をハサミみたいにはさんで、僕をうしろに倒した。

ぼすっ、と背中には、やわらかいクッションがあり、身体にひとつも傷はない。

「おもしろいな!」
「うん…。カニばさみされるとは、思わなかったよ」

僕らがいるのは、最近できたデートスポットだ。運動のあとに、お食事を…という、運動施設とカフェが合体した店だ。

店内に入

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【毎週ショートショートnote】 肋骨貸す魔法

はー、はははあ。

いーい、天気だ。こりゃ。

散歩したいがぁ、今日は無理だろおなぁ。

「囚人48番、面会だ」

「久しぶりね『遺品芸術家』」

「べぇつに、無理して、そんなあ、ふうに呼ばなくてえ、いぃんだあよ?」

「無理してないわよ。それより、あんた、どうやって弟子を育ててるのかしら?」

「あの子はぁ、元気かぁい?」

「アンタに教えるわけないでしょ」

「あの子はぁ、ほんとぉに、いい子だ

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【毎週ショートショートnote】 優先席の微世界先生

私は優先席です。
私は、生まれてこのかた、ずっと電車の席をしておるので、ほかの席から先生と呼ばれております。
というのも、席は、よく転生をするのです。
私のほかにも、コンサート会場だった席や、勉強机だった席がおります。
彼らが幸せの絶頂のときに、他の席に転生するようです。
ささやかな、この世界の電車の席に、新人が来ました。

「お嬢に座られてねえええええ!」
「落ち着いてください!」
「やだよおお

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【毎週ショートショートnote】 木の実このまま税理士

「木の実(このみ)さ~ん。これ、どうすれば、いいですか?」
「ああ、これはね…」

木の実さん。
税理士事務所ではたらく私の先輩。
仕事は早いし、わからないことを聞いたら、やさしく教えてくれる。
好き。
私が木の実さんをつけまわすストーカーになるまで、時間はかからなかった。

そんな私でも、わからないことがある。
木の実さんが休日、どこでなにをしているかだ。
いつも尾行するけど、うまくいかない。

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【毎週ショートショートnote】 エモすぎる謎ねぶた

青森のねぶた祭りから、帰ってきた。
得たものは多かった。
りんごのねぶたが、特にすごかった。お囃子が、りんごをすりおろす音なんて、だれが考えついたのだろう。
さて、仕事にかかる前に謝罪をしないとな。
僕は電話をかける。

『小番との旅行は、どうでしたか?』
「楽しめたよ。さすがに同室は遠慮したけどね」
『そうですか』
「前の飲み会は、すまなかったね」
『わかってんなら、いいです。俺も少し、大人げな

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【毎週ショートショートnote】 訓告したいの四六時中

「川井! 俺の曲、イヨさんに聴かせたのか!?」
「ダメだったの?」
「ダメじゃない! ダメじゃないけど、けど…」

小番が雄叫びに近い悲鳴をあげた。

「うるさい」
「うるせえ! 俺だって、俺だってなあ!」

いなちゃんは、やれやれとため息をついた。

二人が話してるのは、小番の曲の譜面を勝手にイヨさんに教えたことだろう。
イヨさんから、ひさびさに、とんでもない曲を妹から聞いたと教えてもらい。

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【毎週ショートショートnote】 小判食え

孫が、にこにことオムライスを食べた昼ごはんが終わり、もう15時になった。

「今日のおやつ、なにかな~」
「今日は、チョコレートよ」
「やったあ! チョコレート大好き!」

妻が冷蔵庫から取り出したのは、きらきらと光る金色の小判の形をしたものだった。

「おばあちゃん、これなあに?」
「小判型のチョコレートよ。包み紙をはずして食べるの」
「もらいものかい?」
「買ったのよ。なんでも、もらいものだっ

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【毎週ショートショートnote】 新説なピン札

「やーやー、おつかれさま。大変だったな」
「たいした数じゃねえよ。それより、報酬をくれ」
「はい、これ!」

俺の目の前に札束がおかれる。
どの国の金でもない柄だ。

「なんの冗談だ?」
「これ、組織内で新しく使うことができる社内マネーだよ!」

「は?」

「わーお、落ち着けって。銃を持つな」
「俺は冷静だ」

「そうかい。じゃあ、俺の話を聞けるね! この社内マネーは、今ボスの権威を象徴するのが

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【毎週ショートショートnote】 信者ブラスバンド

「イヨさんのラジオ聴いてんだよ」
「アニキのラジオ?」
「知らねえのかよ!?」
「うん」
「はああっ!?」
「小番、うるさいっすよー」
「狩田ごめん」

こづかいが、私に小声で聞いてくる。

「本当にラジオ、知らねえのかよ」
「うん。こづかいが、忍者ってラジオネームで、アニキのラジオに告白っぽいコメント送ったのしか、知らない」
「知ってるじゃねえか!」
「アニキのラジオがスマホで聴けるのは、知らな

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【毎週ショートショートnote】 枢軸マーガリン

「うわ、おいしい! やっぱり、お前は紅茶を淹れるの、うまいよなあ」
「そいつは、どうも」

相方は俺の淹れた紅茶をちょっとずつ飲んでいた。猫舌のくせに、俺の淹れた紅茶は、熱いまま飲みたいらしい。冷ませばいいのに。

「なんか、おやつがほしくなるなあ」
「シュガートーストでも、つくるか」

俺は冷蔵庫からマーガリンを取り出した。

「バターないの?」
「ないな」
「マーガリンかあ…」

相方は遠い目

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【毎週ショートショートnote】 壁に少々らっきょう

「鎌犬は、なにしたいんだ?」
「料理…、して、はたらきたい」
「お前の飯、うまいもんな」
「そう、へへへ…」

いつも、おいしいって、林檎ちゃんに言われてるけど。なにも食べてないときに、褒められると、本気で、そう思ってもらえてる気がして、うれしいなあ。

「まあ、弁当食べながら考えたらどうだ?」
「そうだね」

僕は昼ごはんのお弁当を林檎ちゃんにわたす。今日のお昼は、カレーライスだ。耐熱性密封性に

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