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記事の小説まとめ

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記事で書かれた小説をすべてまとめています。
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2023年9月の記事一覧

【毎週ショートショートnote】 あるべき成仏宴

「アニキ、ネコクインテットのなかでは、だれがタイプ?」

妹のいなが、俺のマンションに遊びに来るなり、問いかけてきた。

「いな…。人のセクシュアリティに土足で上がったな?」
「ごめん。気になって」
「まったく…。バンドメンバーにも、そんな話をしてるのかい?」
「してない」
「なら、なんで、そんな話をするのかな?」
「こづかいが、アニキのこと好きだから、オススメしとこっかなって」
「んー…。いな。

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【毎週ショートショートnote】 なるべく動物園

「なーにーがー、なるべくだっ! 俺ら全員猫枠だっただろ!」
「まーまー、落ち着くっすよ。そういうコーナーだったから、しょうがないっす」
「落ち着けるかあ!」

こづかいのバカが暴れてる。
私は巻き込まれたくないから、楽屋から出る。

「おい、川井。どこ行くんだ?」

なぜ気づいた。

「あ、いなちゃん、お兄ちゃんのとこ行くの?」

アニキいんの? 知らない。

「お兄さんって…。オノマトペピアノさ

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【毎週ショートショートnote】 チョロいの、くさび

「あ、いいよ。いいよ。まだ、調子悪いでしょ? 休んどきな」

組織に相棒と二人で顔を出したら、軽くいなされた。

あんなにも追い回され、殺されかけたのにである。

こんなにも対応が変わったのに、思いあたる節があった。

「また、ボス代わりました?」
「うん。お前らが、ひっかき回してくれたおかげで、うまく殺せたってさ。今ボスには気に入られてるよ。安心しろ」

安心は、できない。

「これから、俺たち

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【毎週ショートショートnote】 呪いの臭み

俺の鼻は利く方だが、においには鈍感だ。

臭くても、たいして気にならない。ゲリラ戦で、何十日も同じ服で、はいずりまわっていれば、そうなった。

俺は臭いには鈍感だ。

「そのTシャツ、臭いか?」
「大丈夫だよ。ちゃんと臭いとれてる」
「そうか。ならいい」

九死に一生を得た相方は、ずいぶんと元気になった。

食事が喉をとおるようになるまで、時間がかかったが、これで一安心だ。

「そろそろ風呂にも入

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【毎週ショートショートnote】 パフェフンフン33秒

カフェにて、林檎ちゃんは、いじわるそうに笑う。

「勝負しなよ。水平さんと鎌犬で。ここ、ミニパフェが有名なんだ。早食いして勝った方の言いぶんを信じるよ。やるか?」
「林檎ちゃん、なに喧嘩売ってるの。勝負なんて、やめようよ」
「やります」
「えぇ…」

林檎ちゃんが頼んだミニパフェが2つ来る。

うわあ、おいしそう。

「じゃ、早食いパフェ競争…はじめ!」

あーあ、早食いじゃなければ味わって食べる

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【毎週ショートショートnote】 カフェ4分33秒

放課後、高校近くのカフェにて、僕は水平さんに、にらまれている。

「で、あなたは林檎様とおつきあいしているのは、本当なのかしら?」
「は、はい」

水平さんって、こんなに怖い人だったの!

なんで、この人を好きになったんだろう…。

「あなた。今まで、かなりの数の人たちに告白していたでしょう? なんで、林檎様とつきあえたのかしら?」
「それは…」

林檎ちゃんと思わずに告白して、撤回できなくて。で

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【毎週ショートショートnote】 オラオラするTシャツ手触り

「いっしょに、どこかへ行かないか」と言うので、観光がしたりないのだと思い、いっしょにいただけなのに、お世話になっている組織を裏切っていた。

相方はいつも、一言たりない。

俺の否定を恐れているのか。
俺をあなどっているのか。
はっきり言えばいいのに、言わない。

だから、言うまで逃避行につきあってやろうと思っていたのに、死にかけるから、それどころじゃなくなった。

戦場でゲリラ戦してた俺と、セレ

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【毎週ショートショートnote】 イライラする挨拶代わり

相棒とはじめて会ったとき、見た目と口ぶりから、怒りっぽい人だなと思った。
いっしょに仕事をするうちに、イライラしているのが、通常だとわかった。

おはようが「さっさと起きろ」

ご飯ができて、呼びに来るときが「飯だ。さっさと来い」

おやすみが「明日も早いから寝ろ」

ぜんぶ怒っているように聞こえるけれど、俺には愛おしく聞こえる。

あんまりに好きすぎて、一時期、組織を裏切って相棒と逃避行したこと

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