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ADHDは高学歴を目指せ・はじめに

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 子供のころの僕は、勉強だけはできました。

 灘中・灘高校を出ていますし、京都大学を卒業しています。

 不注意で、飽きっぽいADHDであるのに。
 大人になってからも、愚かなミスを繰り返すし、嫌なことから逃げ出してしまう人間のままなのに。
 
 そんなADHDなのに、何故、勉強だけは出来たのか?

 その点が、不思議でなりませんでした。


 若いころは、一切不思議には思っていせんでした。
 自分は天才なのだから、当たり前だ、と。

 でも、年齢を重ねるごとに。

 僕以外の人間の多くは、僕のような愚かなミスはしないし、僕よりも遥かに(勉強以外の)知識があるし、そもそも僕よりもずっと仕事が出来ることを、痛感するごとに。

 自分が天才である、という意識などどんどん掠れて行って。

 逆に、『自分は何故勉強だけは出来たのだろう?』という意識が芽生え。

 そのことについて、深く考えるようになりました。


 これから、このテーマについて、書いて行きます。

 おそらくこれは、現在数多く存在する、『ADHDの子供を持った親』にとって、ある程度有益なものになると思います。

 何せ。

 就職した会社から逃げ出しながらも、アルバイトをするだけで旅に出る資金を十分に貯められたのも。

 お金もコネも実務経験も持たずに台湾に降り立ちながらも、そこから職にありつけたのも。

 家族も友人も作れない社会性のない人間でありながらも、会社経営者として都合十五年ほど生き残ることが出来たのも。

 部下の裏切りにあって全てを奪われながらも、そこから立ち直ることが出来たのも。

 コロナ禍で再び全てを失い、五十歳前にして、一匹の犬以外に何も持たずに帰国しながらも、何とか生活出来ているのも。


 全て、『高い学歴』があったからのこと。


 それがあったから、他者から期待してもらうことが出来た。

 そしてそれ以上に、自分自身に期待することが出来た。

 会社を辞める勇気、旅に出る勇気、国際結婚する勇気、外国で起業する勇気、全てを奪われても再起する勇気。
 果ては、長い旅を終え、日本に帰ることを決断する勇気。

 それら全て、学歴があったからこそ、持てたもの。


 もし、それがなければ、僕は、何一つ動くことが出来ず。

 ひたすらストレスを貯めるだけの、愚痴っぽいだけの日々を送ることになったかもしれない。

 ――毎日六時に必ず帰宅してビールを飲むだけ、趣味の一つも持たず、友人の一人もおらず、家族にも愛されず、何も言い遺さず死んで行った、僕の父のように。


 勿論、父自身は、そんな人生に、十分な満足感を覚えていたかもしれませんし。

 そもそも、ちゃんと家庭を持ち、ちゃんと子供を育て上げ、ちゃんと定年まで勤めあげ、ちゃんと遺産を残した彼の人生を。

 何一つ成し遂げていない僕が、ただネガティブなものに捉えるのは。

 傲慢でしかないし。

 その構図そのものが、滑稽なのですが。


 それでも、ADHDである僕自身の感覚からすれば。

 動き続けた僕自身の人生は、動かなかった父の人生よりも、ずっと面白い物だったと思えます。

 だからこそ、その人生を可能にさせてくれたもの――『学歴』は、何にも代えがたい、本当に重要なものだったと思うのです。


 ですので。

 どうして、ADHDの僕が、そんな大事な『学歴』を、身に着けることが出来たのかについて、記すことが。

 どうしてもじっとしていられない――これからそんな人生を送ることになるであろう、ADHD持ちの子供。

 そんな子供と向き合う、保護者の方にとって。

 少しでもお役に立てば良いな、と思っています。


 ADHDは高学歴を目指せ・目次

1.ADHDが、勉強は出来たとしても、仕事は出来ない理由。
2.授業を聴けず宿題もしない、整理整頓も出来ないADHDでも、京都大学に入ることはできる。
3.『独力で勉強する』以外には、ADHDが伸びる方法はない。
4.『強迫観念』はADHDを救う
5.娯楽のない環境で育ったADHDが貰った、初めての『報酬』
6.『ミスばかりのADHD』だからこそ、ミスをしない。
7.読書をしすぎたせいで、チベットを目指すことになったADHD
8.他人の心が分からないADHDだからこそ、高得点が取れる。
9.公式を覚えられないから、数学が出来るようになる。
10.勉強では有能だったADHDが、勤め人としては無能だった理由。
11.ADHDに向いた仕事を見つけても、ADHDである為にその仕事を捨ててしまう。
12.ADHDにとって理想的な『外国で適職に就く』生活を手に入れるも、ADHDであるがために全てを失う。
13.ADHDにとって、『外国で妨害を受けながら一人で会社を起業する』のは、『受験勉強』と同じ。
14.ADHDが、『一人会社』はうまく経営できたのに、『上司』としては完全に無能だった理由。
15.ADHDである為に大失敗して無一文になっても、ADHDである為に簡単に再起できた話。
16.ADHDにとって、勉強は『コスパ』の良い物なのか? その①
17.ADHDにとって、勉強は『コスパ』の良い物なのか? その②
18.ADHDは『バックパッカー』になるべきか? その①
19.ADHDは『バックパッカー』になるべきか? その②
20.ADHDは中学受験勉強をするべきか? その①
21.ADHDは中学受験勉強をするべきか? その②
22.ADHDは外国暮らしをするべきか? その①
23.ADHDは外国暮らしをするべきか? その②
24.ADHDは外国暮らしをするべきか? その③
25.「ちょうどいい」が分からない発達障害は、どう生きれば良いのか? その①
26.「ちょうど良い」が分からない発達障害は、どう生きれば良いのか? その②
27.年を取った発達障害は、どの世界に逃げ込めば良いのか?
28.コミュニケーション能力が低い発達障害が、それでもうまくコミュニケーションできる場所
29.初老の発達障害持ちが、「自己啓発本」を憎む理由。
30.初老の発達障害が、今の「怪談」と「バックパッカー」を嫌う理由。 その①
31.初老の発達障害が、今の「怪談」と「バックパッカー」を嫌う理由。 その②
32.「天然ボケ」でしかない発達障害が、「ツッコミ」で大成功した理由と、それでも結局「ボケ」て失敗した理由。
33.入国書類に「似顔絵」を描いて入国を許可された旅行者と、履歴書に「証明写真」を貼れずに日本を追い出されたADHDの話 
34.「ADHD男性」にとって、「国際結婚」という選択肢を考える。
35.無能なのに勉強だけは出来た発達障害男性が、50歳にしてようやく理解した「自分の能力の正体」 その①
36.無能なのに勉強だけは出来た発達障害男性が、50歳にしてようやく理解した「自分の能力の正体」 その②
37.無能なのに勉強だけは出来た発達障害男性が、50歳にしてようやく理解した「自分の能力の正体」 その③
38.発達障害は、「可愛くないウーパールーパー」だ。その①
39.発達障害は、「可愛くないウーパールーパー」だ。その②
40.発達障害は、「可愛くないウーパールーパー」だ。その③

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