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ADHDにとって、勉強は『コスパ』の良い物なのか? その② 【ADHDは高学歴を目指せ】

 17.

 授業も聴けない、集中も出来ない、整理整頓も出来ず、計画も立てられない・守れない。
 そんなADHDの僕ではありましたが、様々な幸運にも恵まれ、京都大学に合格できました。

 しかし、社会に出てからは、失敗の連続。
 やりたかったわけでもない仕事を延々と行い、一時はそこそこ成功しながらも、結局全てを失う、ということを繰り返してしまう。

 これで。
 勉強に子供時代の殆どを捧げた――相当な『コスト』をかけたのに対して、それに見合った『パフォーマンス』は得られたと言っていいのか?

 どうしても、そんな疑問が湧いてきます。


 けれども。
 この問いかけに対して、明確な答えが出ることはあり得ません。

 人生は一度きりで、やり直すことは出来ない。
 『勉強をしなかった場合の人生』がどうなったのか、分かる術はないのですから。

 比較対象がない以上、成功も失敗も判断がつかないのです。

 だから、適当な想像で語るしかないのですが。

 勉強をしなかった人生だったら、どんなことをやっていたのだろう――そう想像していると。

 すぐに、思ってしまうのです。

 ――他にやりたいことなど、あるのか? 
 と。

 幼いころは、勿論色々夢想しました。
 役者になるだとか、プロスポーツ選手になるだとか。

 けれども、十代後半になって、勿論それらの夢は簡単に消えました。
 どう努力していようが、プロになるのは不可能だろうなと、十代であってもはっきり分かる程度の能力しかもっていなかったからです。

 その代わりに。
 二十代になると、『登山家』だとか、『小説家』などになりたいだとか思うようになった。
 頑張ればなれるのではないか、とも思った。

 体は頑丈で、どんな僻地に行くのも平気だったし。
 読書は大好きで、文章を書くのも好きだったし。
 

 何よりそれらは、インターネット上にある、『ADHDに向いた仕事』の項目の中に、大概含まれているような仕事であって。
 その夢は、かなりの時間続きましたが。

 けれども。
 様々な社会経験を積んで行く内に――そして実際にそれらで食べている人達を見る内に、やがて、まあ無理だな、と思うようになります。

 それぞれ、趣味でやっている素人は幾らでもいても。
 お金を稼げるようになれるのは、ごくごく一部の世界。

 インターネット上の言葉は、余りに軽すぎるもので。

 実際にそれらのプロになるのは。

 継続した努力や、細かい所まで気を配る緻密さや、人間関係の構築などが、必要不可欠です。

 一つ二つが不足している程度なら、圧倒的な才能や、意志の力で何とかなるのかも知れませんが。

 僕には、そういった部分の全てが、一切出来ない。
 そして、圧倒的な才能などない。

 これでは、プロになどなれる筈もない。 

 そう気付いてからは。

 仕事が忙しくなってからは、体を鍛えることも、文章を書くことも、積極的にしなくなってしまっていた。
 それに、それを実現するための人脈作りさえ――学歴だけはあるので、決して不可能ではない筈なのに――、一切しようとしなかった。

 継続する意志すら、持たなかった。

 


 その一方で。
 どういう時でも、どんな犠牲を払っても、勉強はしてきたし、外国へ出ようとし続けて来た。

 それらにだって、ADHD特有の障害が無数にあり。

 継続出来ないため、中高で落ちこぼれ大学を中退したり。
 不注意であるため、アフリカで全財産を盗まれたりしましたが。

 それでも、僕はその動きを続けたのです。

 それを、考え併せてみれば。

 『登山家』『小説家』などというのは、ただの『憧れ』に過ぎず。
 本気の夢ではなかったのでしょう。 

 そう、僕には心の底から『やりたいこと』など、何もないのです。

 ――自分が実際にやってきた、幾つかのことを除けば。


 そう考えると。

 やはり。

 『京都大学に合格したい』『たくさんの国を旅したい』『国際結婚したい』『ヒマラヤの山に登りたい』『外国で暮らしたい』『社長になりたい』等々の、夢。
 スケールは大きくはないし、妥協した部分は多分にありますが。

 これだけ欠陥のある僕が、しっかり叶えることが出来たという事実。

 そしてその実現には、『勉強が出来たこと』が大きなウェイトを占めているという、事実。

 やはり。

 ADHDであっても、『勉強』は、しなければならないものだった。

 『コスパ』は悪い――それでも、小なりとは言えども、確実に一定の報酬を得られる物だった。

 『報酬系の弱い』ADHDは、それで満足しなければいけなかった。

 ――少なくとも、大した才能を持たずに生まれてしまった、僕のような人は。

 そういう結論を、出さざるを得ないのです。

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