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■私にとって大切なもの


私の職場に欠かせないものはスマホです。そりゃあそうですよね。だってスマホは便利ですから。そう言われてしまうでしょうが、私のスマホのお気に入りの写真ホルダーには、厳選された写真があるのです。

かつては医局のデスクに家族写真を飾ってある上司も多かったのですが、その気持ちも年を経てわかってきました。古い写真を見るとH2Oの『想い出がいっぱい』の歌詞が頭の中を駆け巡り、懐かしい思い出の世界に戻れる。何とも言えない気持ちに包まれ、自信を取り戻し、また再び立ち上がることができるのです。

医師として経験を積む。
父として一家の長となる。
相談はできるけれども、決断するのに、葛藤と闘わなければならなったり、相談できないことも増えたりしてきました。
「医師は個人事業主だから、経験を積むと、こうした方がいいよとか言われなくなるんだ。ちゃんと自分で考えて行動するんだな」
よく産婦人科開業医である父には言われました。

■現実逃避をするのには大事な一品


何の悩みもなかったころに戻る。ただの現実逃避です。家庭のことだったり、学会発表や講演会が迫っているにいいアイデアがなかったり、悩むことがあれば、診察室の隅っこに行って、角を背に椅子に座り足を組みスマホで写真を眺める。一見何もしていないように見えて実は大事な時間です。

例えば一番上の娘が学校でいさかいを起こすので、退学処分になったときは正直、仕事どころではありませんでした。娘は娘なりに頑張っているのに、理由があっていさかいを起こすのに、責められてしまう。奥さんにも学校でも怒られたらどこにも居場所がなくなってしまう。

「なんでケンカするんだ!」と怒鳴って解決できるならどれだけ楽なんだろうと思いました。ですがそれでは、問題は解決しません。だから私はひたすら怒りを抑えて、娘の話を聞くことに徹しました。

今から考えれば、さっさと退学してしまえばよかったのですが、娘が学校に残りたいと言うもんだから、ストレスMAXでした。そんなときは診察室で娘の幼いころの写真を見て、気分を立て直し、診察に挑んでいたものでした。

■本当に誰にも言えない私だけのオアシス


ガラケーからも移行してきた写真もありますが、古いアルバムからスマホで写真を撮ったものもあります。大学医学部の友人との写真、高校時代の写真・・。誰にも見せられないけれど、写真はあの頃に戻れる大事な一品です。

さて、私が診察室の隅で角を背にしてスマホの写真を見るのは理由があります。

家のリビングで写真を見ていたときに、奥さんに見られてしまい、あまりの剣幕に震えるほど怒られたことがあるからです。なぜ怒られたのかというと、いまだに高校生のときの元カノの写真があり、それを眺めていたからです。

元カノとは会いたい気持ちもあるけれど、もう2度と会わない方がいいでしょう。私の中で思い出はもはや美化され過ぎていると思うからです。

……ただ妄想の中では会っているのですが。
誰にも見せられない1品です。

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