#29:2024年9月米国消費者物価指数の理解を深める
イントロ
#25と#26で2024年9月の米国消費者物価指数(CPI)についての記事を書いたことをきっかけに、一次データに当たってみたいという気持ちになった。#25も#26も、色んなニュースの引用に終始してしまい、具体感を自分の中にも持てない感覚があった。こういう時は一次データに当たってみるに限る。
一次データに当たった結果、フワッとした全体的な物価推移の中で、何が上昇に寄与したのかの具体感を得ることができた。今回はそのプロセスをnoteにしてみた。
早速、U.S. Bureau of Labor Statistics(アメリカ合衆国労働省労働統計局)のウェブサイトへ。ここでデータベースを拾い、消費者物価指数として発表される数字の動きを見てみた。
全ての商品の推移
集計した期間は2022年11月から2024年9月まで。"All Items"(全ての商品)をグラフにするとこうなる。
2023年9月の数値は307.789、2024年9月の数値は315.301。計算すると前年同期比で+2.44%なので、ニュースになっている2024年9月の前年同期比+2.4%の根拠はここにあるのだろう。
世の中には色々な商品がある。「全ての商品」で前年同期比で+2.44%となっているとしても、前年同期比でマイナスとなっているもの、前年同期でプラスとなっているもの、それらを加重平均した結果として"All Item"があるはず。データベースでは商品別に掘り下げていくことができた。
第一段階の深掘り
"All Item"を一段階深堀りすると、「食物」「エネルギー」「食物とエネルギー以外」の3つに分けられている。見ての通り、「食物」と「食物とエネルギー以外」は順調に伸びているが、「エネルギー」はすさまじくアップダウンしている。
2024年9月の前年同期比を計算したところ、「食物」は+2.27%、「エネルギー」は▲6.85%、「食物とエネルギー以外」は+3.31%だった。これだけでも、統計がただの数字の羅列から少しストーリー性を持った様相を帯びてくる。
ウクライナや中東の情勢を受けてエネルギー価格が乱高下する中、「食物」「食物とエネルギー以外」の価格が順調に上がり続けた結果としての消費者物価指数の上昇だ。また、加重平均としての重み付けも、「食物」が13.4%、「食物とエネルギー以外」が79.7%なので、重み付けとして6.8%のエネルギーの乱高下は意外と影響しないということだろう。「食物」と「食物とエネルギー以外」の動きを見ていく。
「食物」の推移
「食物」はどの項目もある程度平坦であるように見える。しかし、目を凝らしてみると、オレンジ色の線がここ3か月ほど伸びていることが分かる。「肉類、卵」が前年同期比で+3.87%となっており、これがアメリカの食物物価の伸びの大きな要因だ。また、このグラフには出ないが、外食も前年同期比で+3.95%となっている。これは人件費や輸送費といったところも関わってくるのだろうが、「食物」の物価上昇に寄与している。
「肉類、卵」、「外食」以外については「飲料」が+1.27%の伸びがあったものの、それ以外は全て+1%以下となっていた。「食物」については、「肉類、卵」と「外食」が物価上昇に寄与したと言っていいだろう。
「食物とエネルギー以外」の推移
「食物とエネルギー以外」に関しては、上昇しているものと下降しているものがある。
前年同期比で大きく上昇したのが、「たばこ関連」と「公共交通機関」。それぞれ+8.22%と+8.53%だ。たばこに関しては嗜好品であるから社会全体への影響はより少ないと言えるが、公共交通機関は困るのではないか。そう思って内訳をみてみると、車両保険が前年同期比で+16.3%となっていて、これが上昇要因だった。
前年同期比で大きく下げたのが「中古車」で、▲5.07%だった。環境意識の高まりやEV車の台頭といったことなのだろうか。詳しくは分からない。
まとめ
まとめると、ただ「2024年9月の米国消費者物価指数は前年同期比+2.4%だった」以上のことがたくさん見えてきた。食物分野では肉や卵の価格が伸び、たばこ、公共交通機関、医療ケア部門の価格も伸びた。エネルギー価格は情勢次第で乱高下し、中古車の価格は下落している。
これらは米国の話ではあるが、米国経済と日本経済は密接に結びついていることもあり、何かしらの影響もあるのだろう。こういった影響も分析していけるようになれればよいなと思う。
金融リテラシーを高めるためにも、米国消費者物価指数の発表時はこの分析をしていきたいと思う。