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ショートショート

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[ショートショート] モンブラン失言:根性がないんですよ根性が

[ショートショート] モンブラン失言:根性がないんですよ根性が

 はいどうもモンブランです。

 最近の若者はね、根性がないんですよ根性が。何かといえばすぐ暑いだの水分補給だのって。
 昔はクーラーなんかなかったんですよ。人間はどんどんひ弱になってきていますね。

 ひ弱と言えばすぐ仕事を辞める人も増えていますね。すぐ諦めちゃうんですよね。
 根性がないんですよ根性が。昔は就職したら定年まで会社一筋で働くのが当たり前だったんですからね。
 男は一家を支えていか

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[ショートショート] レモンからぶっ飛べる成分が抽出されることはあまり知られていない

[ショートショート] レモンからぶっ飛べる成分が抽出されることはあまり知られていない

 レモンからぶっ飛べる成分が抽出されることはあまり知られていない。

 まずはレモンの皮だけを10キロ用意する。
 中身は使わないのでジャムにでもすればいい。

 全部をひとつの鍋で煮るのはムリなのでいくつかの鍋にわけ、適当な量の水で煮る。

 レモンの皮が充分に柔らかくなったら鍋から取り出し水を切って冷ます。

 それで新聞紙かなんかに広げて半日乾かす。

 半乾きくらいになったらすり鉢等使って

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[ショートショート] 誘惑銀杏:乳首が…

[ショートショート] 誘惑銀杏:乳首が…

 男をたぶらかして金を盗み取る悪質な事件が多発していた。

 女は巧みに男を誘い出してホテルに連れ込むと、事を始める前に睡眠薬だか何だかを飲ませて意思不明とさせた挙句に金銭を全て奪って逃げるという手口だ。

 巷では、“誘惑銀杏” とその女は呼ばれていた。何でも乳首が銀杏のように黄色くて艶々だと言うのだ。

 そんな乳首あるか? と思いつつも俺は興味深々だった。正体が分かっていれば騙されることはな

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[ショートショート] 流星群ラララ シロクマ文芸部

[ショートショート] 流星群ラララ シロクマ文芸部

 流れ星を見ると心の奥がチクりとする。

 あれは僕が十八の時だ。

 階段から滑り落ちるように僕は未来都市へと迷い込んでしまった。

 そこでレンカと出会った。

 レンカはショートヘアがよく似合う格好良い女だった。

 レンカは迷子の僕に居場所をくれた。

 レンカは今で言うジャーナリストのような仕事をしていた。特殊な機械を持っていて何でも調べてくれた。
 それで彼女は自分の仕事で忙しいのに、

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[ショートショート] 永久迷宮:ひと夏の人間離れ

[ショートショート] 永久迷宮:ひと夏の人間離れ

夏休み…。
と言っても夏期講習の毎日だ。

その日、教室には女の子が一人だけ来ていた。
見たことがない子だった。電気も点けずに薄暗い教室に立っている。

その子のワンピースの袖から伸びている腕がやけに青白くて、そして異常に長いことに気がついてしまった。

片方の腕だけが床につきそうなくらい長い。

気がつかないふりをして教室に入るべきか迷っていると、女の子が急にこちらに向かって突進してきた。

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[ショートショート] 小夜 - 桃太郎伝説

[ショートショート] 小夜 - 桃太郎伝説

 小夜が鬼になってしまった。

 宮使いをして五年目の秋。故郷の村から初めて届いた伝達がそれだった。

 宮様に話すとあっさり「いいよー」と言って一時帰郷をゆるされた。
 あまりにあっさりだったので拍子抜けするほどだった。

「その小夜という娘、お前にとって大事な子なんだろう?」

「亡くなった親友の妹です。俺が面倒を見てました」

「そうか、ならば尚更お前が行ってやらねばな」

 俺は宮様に感謝

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[ショートショート] 夏の残り火:0.001%

[ショートショート] 夏の残り火:0.001%

 操縦席の前方に座っているスバルの首筋に汗が光っているのをさっきからずっと見ている。
 彼は生存を諦めていない。

 だが俺たちはここで死ぬのだ。

 開拓用装甲車のキャタピラがガヌルの死骸をいくつも踏みつぶして嫌な音を立てている。

 殺しても殺しても奴らは不気味な歯をガチガチいわせて襲ってくる。

 異常事態である。

 …スバルよ…、俺はもう覚悟はできているぞ。
 この灼熱ガヌル地獄が俺たち

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[ショートショート] 綾子と虎丸:1秒の恋

[ショートショート] 綾子と虎丸:1秒の恋

「姫さま〜!姫さま〜」

 家臣たちが右往左往しているのを綾子は木の上から眺めていた。

 …誰も私がこんなところにいるとは思うまい。

 あんな重たい着物を着て婿面談だなんて綾子は真っ平ごめんだった。
 まだまだ自由でいたい。婿くらい自分の間合いで決めたいのだ。

 木の上からバタバタ走る者どもを見ていると、どうやら隠密集も動員されたようだ。無能な若衆たちに見た顔が混ざっていた。

(虎丸か…)

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[ショートショート] 人間というよりは植物に近い:見たことがないスポーツ

[ショートショート] 人間というよりは植物に近い:見たことがないスポーツ

タイムマシンがぶっ壊れてものすごい未来に来てしまった。
軽く数億年は経っていると推測される。

幸いなことに人間はいる。
…いや人間というよりは植物に近い感じなのだが人間に見える。

私は彼らを勝手にボタニカリアンと呼んでいる。

言葉は全く通じない。通じないが友好的な関係だ。

彼らは頻繁に私を大勢が集まる場所に招待してくれる。
最近これはもしや何かのスポーツなのでは…と思い始めている。

会場

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[ネコミミ花火 / あなたの物語に曲つけます] ヒロキの場合

[ネコミミ花火 / あなたの物語に曲つけます] ヒロキの場合

ネコミミ村まつり:サブ会場『あなたの物語に曲つけます』の物語募集はは、本日15日いっぱいです。
多少の遅刻は受け付けます。書いてる途中!という人はコメントください☆

ここでひとつ。せかっくなので私も物語を書いてみたいと思います。

先にこちらをお読みください。(4,000文字くらい)


このお話のB面的な物語です。

[ネコミミ花火の物語] ヒロキの場合…※注意:若干グロいです。

 名前も

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[ショートショート:SFホラー] 夏は夜に出歩いてしまう人が後を絶たない|シロクマ文芸部

[ショートショート:SFホラー] 夏は夜に出歩いてしまう人が後を絶たない|シロクマ文芸部

 夏は夜に出歩いてしまう人が後を絶たない。

 サイレンが鳴り響くと僕は窓という窓を閉め切って、クーラーを最大限に動かし部屋の温度を極限まで下げる。

 そして頭から布団をかぶるんだ。

 聞こえないように。何も聞こえないように。

 それでも僕には聞こえてしまうんだ。

 サイレンに交じって、誘惑に負けて出歩いてしまった人たちの無言の絶望の音が。

・・・

 僕たち人類が新種のウイルスに汚染さ

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[ネコミミ花火の物語] 迷子のネコと私と…

[ネコミミ花火の物語] 迷子のネコと私と…

 キスケがまた行方不明だ。

 よりによって今…。

 今日は年に一度の花火大会。ネコミミまつりの花火大会だ。
 私はクラスメイトのナオナオたちと一緒に花火を見る約束をしていた。

 この花火大会は、想い人と一緒に見に行くと成就するという伝説があり、クラスのイケてる女子たちは、誰と花火を見に行くのかで盛り上がっていたようだ。

 私たちには関係ない…。
 高校二年生にもなれば、恋愛にうつつを抜かし

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[ショートショート] 紫陽花を - 妖鬼の妖助 恋をする | シロクマ文芸部

[ショートショート] 紫陽花を - 妖鬼の妖助 恋をする | シロクマ文芸部

 紫陽花を寝床にする妖鬼は気分屋だ。
 喜んだり怒ったり忙しい。

 紫陽花の色は土壌の成分割合によると人間は考えているようだったが、実際は妖鬼の気分によるものだった。

 妖鬼の気分がよければ赤っぽくなるし、悪ければ青っぽくなる。

 それからそこに住んでいる妖鬼が仙人の域まで達すると、紫陽花の花は真っ白になった。

 ある雨上がりの午後、小学校から帰る途中の道端で、凛子はとても不機嫌になってい

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[SFショート] もしも明日、この惑星が滅びるのならば | PJさんの滅亡企画

[SFショート] もしも明日、この惑星が滅びるのならば | PJさんの滅亡企画

 アスラとデーヴァは黄金色に輝く惑星を見下ろし、そこに生命がいるのかどうかを探っていた。

 彼らは系外惑星の生態調査のため打ち上げれらた惑星探査機だった。

 一つの身体に二つの頭脳を持った彼らは、異なる二つの計算方法でこの世界を把握するツインプロセッサが採用されていた。

 当初は観測したデータを母星へと送っていたが、やがて通信も途絶え、果てしない時の中を探査機は孤独な旅を続けてきたのだ。

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