読書人間📚『木になった亜沙』今村夏子
『木になった亜沙』今村夏子
2020年4月5日 第一刷発行/文藝春秋
3遍どれも不穏な空気と奇妙な世界。これぞ、今村ワールド。本を閉じてからがわたしの勝負。今村夏子さんの短編は一遍づつ考えるより、全遍読みきってから考える習慣が出来つつあります。
以下、今から本作を読む方、奇妙な世界を味わいたい方は、わたしの書いたものに目を通されるのは、お控え下さった方が良いかもしれません。読んでもわからないとは思うのですが. . .
▶︎『木になった亜沙』
どうにか、わたしの手から食べて欲しい。誰も食べてくれない。動物もそっぽ向く。妻がいるだとか、好きな人さえも食べてくれない。
亜沙は、生まれ変わるなら甘い実をつける木になりたいと願い、短い人生を終える。そして、亜沙は生まれ変わる。なんと、わりばしに。
けれど、愛を欲し生まれ変わり、愛し過ぎるほど愛してくれた若者ともいずれお別れになる。亜沙は、必要とされるものに生まれ変わったはずが、忌み嫌われるものへと変化してしまった。愛を一人占めしようとした訳でもないのに、人生はうまくいかない。報われないけれど、人間はそうやって、愛される事を求め生まれ変わっていくのかもしれません。
▶︎『的になった七未』
当てられたくないと逃げ回ったら、いつしか、当てて貰えない事に気づく。当てて欲しいのに、当ててもらえない。意図せず、妻の居る人を好きになるが、当ててはくれない。望まれない子を宿すが、更に当てられない。孤独で苦しい人生がいつまで続くのか、途中、憂鬱になり本を閉じます。そして、最期は我が子に当てられる。我が子は七未を助けたのか、捨てたのか?。七未の人生は、我が子に当てられたことで、やっと終える。初めから逃げ回らない人生を送っていたら苦しまずに生きる人生だったのか. . . ? 深呼吸。
▶︎『ある夜の思い出』
15年もの間、無職で家を出ず、ゴロゴロして生きていたが、ある日、父に怒られ、勢いで外に逃げ出す。だけどいつまでも寝そべるだらしない精神は変わらず生きている。その為、出会い、意気投合する人間も、同じ様にだらしない精神の人間。類は友を呼ぶ。居心地よく感じるものの、いざ結婚となると家に戻り、父に報告と挨拶をしなければならない。ひとり、家に戻ろうとするが事態は一変。それから時は経ち、あの時とは違う夫と、子供の為にパートに出て働く充実した毎日を送る。人はあるところで、ある日変わったりする。あの人は今頃、どうしているだろうか. . . 。
本作も、今村さんの世界を現実的に私なりの感覚で解いてみました(あくまでも人それぞれです)。
本書は、"わりばし" になったり、"動物ビスケット" になったり、いずれは大人の女性に落ち着く。おとぎ話は、単なる夢の世界のお話ではないんですよね。
生まれ変わるなら、あなたは何に生まれ変わりたいですか? わたしはダンゴムシ。静かにひっそり生きたい。人間なら、また母の子として、母を守る男に生まれ変わりたい。や、母の老後を考えると女の方がずっと側に居られるからやっぱり女かな?
いつもながら、リアルを突いてくる今村さんの手法に舌を巻きます。
三島由紀夫賞『こちらあみ子』芥川賞『むらさきのスカート』に夢中になった方は、こちらも外さずお読みください。
今村さんは、こういう方向からモノを見て書く人なんだなあと、毎回のことですが感動します。たった155ページですが、脳神経にずっしり頂きました🍪。
先日、投稿した本もお薦めです。
装画 木原未沙紀
装丁 野中深雪
挿絵も可愛い。絶好のタイミングで、ギンビスの「たべっ子どうぶつ」動物ビスケット🍪がうちにありました。ふふっ。わたしはウシ。ウシ食べたい。
書籍で読み残すは『父と私の桜尾通り商店街』。先日、文庫本が発売されました。購入済みです。勿体なくて直ぐ読めない(><)。他に『群像』に掲載されている作品が四つほどあるようです。読みたいです!書籍化を願います!
🌝声、発声、機能を考える
ボイス・ボーカルレッスン/東京都
音楽療法(医療行為は行わない)の観点からオーラルフレイル、口腔機能、老化防止を意識した呼吸法、発声のレッスンも行います。