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読書人間📚『星の子』今村夏子



『星の子』今村夏子

2019年 第1刷発行/朝日新聞出版

宗教、貧困、虐待、この作品の中ではどれも深い愛情の中にあるものですが、登場人物一人ひとり、それぞれに小さな暴力を宿しています。またその暴力も、愛情の中に蓄えられたもの。報われたいけれど報われない. . . 。主人公、ちひろは宗教2世。違和感に戸惑い、悲しみながら、人との交わりを喜びとします。予期せず、難しいテーマに驚きました。


南先生は、ウィルスと宗教を同じに例え、ちひろと、ちひろの家族を断罪します。今の時代としては、とても印象的な場面。ちひろの父と母は誰にも金棒を振り上げるわけでもなく、家族と、また誰かの幸せを願っている。一方大好きな南先生は教師と言う立場で、南先生の価値観で金棒を振り上げる。

今村さんらしい表現を引いておきます。一文だけ取り上げると、珍しい表現には思えませんが、文章の中では引っかかりのある一文です。

___氷細工みたいだった南先生の目の奥に、ぽっと明かりがともった気がした。___





誰を変だ、悪だと言えるでしょうか。もの事は一定方向から見てわかるものではありません。誰が誰の何がわかるでしょうか。助けようとする親戚の叔父さん、恋を応援する同級生たちは、ちひろの人格を「信じる」という目線でちひろを見守ります。環境の違いはあっても、目の前にいる人を信じる、大切だと感じたものを信じる。どこに身を置こうが、人は人を信じて生きていて、信じる為に、何かをまた信じる。あなたにとって、わたし達にとって「信じる」とはどういう事でしょうか。


わたしがこれまで読んできた今村夏子作品は、疑問が立ち込める作品が多いなか、スッと入ってきやすいものでした。こういうテーマにも突っ込める人なのですね。感激してしまいました。否定するとも肯定するでもない、今村さんのフラットで初々しい視点が、一定の価値観へと誘導しません。良い時間を過ごせました。
この作品は映画化されています。映画も今村さんの世界を崩さず、とても良かったです。個人的には、原作から読むことをお薦めします。お時間のある方は是非。


巻末対談「書くことがない、けれど書く」小川洋子×今村夏子

装幀  田中久子
装画  植田真

装画も、とても気に入りました。映画の冒頭も、美しい絵から始まるのですが、映画でのタイトルアートは、清川あさみさん、作品名「星の子」とされています。作品冒頭の絵も清川あさみさんでしょうか。素敵な絵に魅入りました。


「金棒」なんて書いちゃいましたが、節分が近いですね。ナチュラルローソンで、美味しい節分お菓子を手に入れました。我が家では、「金棒」は甘くて、つやつや飴色です。


🌝声、発声、機能を考える
ボイス・ボーカルレッスン/東京都 
音楽療法(医療行為は行わない)の観点からオーラルフレイル、口腔機能、老化防止を意識した呼吸法、発声のレッスンも行います。

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