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アート・小説エッセイ

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小説、映画、アートにまつわるエッセイ。
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#エッセイ

短編が心地良い

最近のメモ。

ルシアベルリンを寝る前にちびちび読んでいる。合わないなあと寝かしていたら、知らぬまにおもしろく、というかじわじわおもしろく読めるようになってきた。不思議。一ページだか2ページだかをちびちびお酒を舐めるようなスピードで読む。アル中の母親が明け方お酒を買いに行って帰ってきて洗濯機を回すシーンがとてつもなくすき。なぜかがんばろうと思える。

新潮クレストブックスの短編ベストセレクションも

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乾いた文体、湿った文体

以前ドイツにいたときに、小説には乾いた文体と、湿っぽい文体があると書いたことがあるんだけど、今日ふとそのことを思い出して、ひとしきり考えていた。

乾いた文体で真っ先に浮かぶのがヘミングウェイ。ぱっさぱっさのぱっさぱっさで、嫌いじゃない。砂埃がもうもうとしてて日が照りつけるところで読む感じ。西部劇みたいな。

ポールオースター。ちょっとじめってしてる。霧につつまれた夜のロンドンとかニューヨークのイ

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生活は私を裏切り続ける

生活は私を裏切り続ける

引っ越しが終わって数週間が経ち、料理と掃除の分担、つまり家事分担が、大きな歯車がぎい、と音を立てるように回り始めた。家事というのはこの「回る」という表現がぴったりで、昨日片付けた山盛りのシンクの食器は、翌朝仕舞われたと思ったら、お昼にはもう流しに放り込まれている。食器を洗ってラックに干して、それを棚に仕舞ってまた出して、をやっていると、文字通りキッチンでくるくると回っている自分に気づく。

やって

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リズミカル・カジ

リズミカル・カジ

新しく買った本の、まっさらでつるっとしたページに最初の折り目をつけるときは、いつもどきどきする。本棚のスペースは限られているから、いつも買った本は、読んでいる間中、売りに出すか手元に残すか考えながら読む。

今読んでいる本は、「わたしの台所」というエッセイなのだけれど、ちょっと説教くさい、古臭いところが多かったので売ろうかなという方に気持ちが傾いていた。でも昨日、「リズミカル・カジ」という章を読ん

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新海誠「天気の子」感想&メモ

新海誠「天気の子」感想&メモ

新海誠監督の新作「天気の子」が公開されたので見に行ってきた。半端ない上映回数である。それでも満席である。君の名は。ってほんと社会現象だったんだなあとつくづく思う。

見終わってていねいにレビュー書こうと思ったのだけど、そうこうしているうちに忘れちゃうそうなのでとりあえずのメモと感想。激しくネタバレしているためまだ見てない人はお気をつけを...!!

ではちょっとあいだ空けます。

***ネタバレ*

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死の床に置きたい7冊

小川洋子のエッセイ「博士の本棚」を読んでいたら、死の床に置きたい7冊というのがあったので興味深く読む。アンネの日記はもちろん、村上春樹の中では「午後の最後の芝生」という、最初の短編集の中から選ばれていた。

無人島に持っていきたい一冊もいいけど、死の床に置きたい7冊もいいなあ。

ということで、自分なら何を置くかなあと、髪の毛を乾かしながらリストアップしてみる。

1 谷崎潤一郎 細雪

これは本

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「記録する」ということ

「記録する」ということ

クリスチャン・ボルタンスキー展に行ってきた。二週連続で美術館に行ったのなんてほんと久しぶり...。ボルタンスキー、どっかで聞いたことあるけどどこだっけ...と思ってたら、展覧会入って資料渡されて思い出した。そうだ、豊島で行った「心臓のアーカイブ」だ。

「心臓のアーカイブ」にたどり着くまでにごくフツーの田舎道、あぜ道を延々と歩いたので「こんなとこにほんとにあるのか...?」という不安が顔に表れてい

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夢の落としどころ

夢の落としどころ

アマゾンプライムでなんかいい映画ないかなあと探していたところ、白黒映画が目に付いた。珍しいなあと思ってみてみると、スマホがわんさか出てくる。あれ、どうやら現代が舞台らしい。モノトーンの世界に出てくるスマホはどうも新鮮である。

フランシス ハ という映画。ニューヨークに住む、プロのダンサーになるのを夢見ている27歳独身アラサー女子の、なんだかすべてがうまくいかなる時期を描いている。仕事もお金も住む

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現代に蘇る舞台芸術

現代に蘇る舞台芸術

ラブライブサンシャインの映画が公開されたので見に行ってきた。私はアニメは好きだけれどいかんせんストライクゾーンが狭すぎて(萌え要素とか、いかにもなアニメ仕草とか声が苦手で、どちらかというとリアリティのあるアニメが好き。最近だとリズと青い鳥とか、just because!、月がきれいなど。後ろふたつはhuluやアマゾンで配信されているのでぜひ。)、なかなか新しいアニメに出会えていないのが悩みだったの

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書くことと祈り

書くことと祈り

誰が誰からもらってきたのかあまり定かではない招待券を持って東山魁夷展に行ってきた。期限は数日後であるいつもギリギリに行くのはやめようやめようと思ってるのになかなか直らない。

こういう企画展はいつ行っても混んでるので最近は美術館に行くことがめっきり減ってしまった。案の定混んでいる。でもまあ自由に動けるほどではあるのでまだましか。

青の画家と言われているらしく、青が大好きで最近は青の写真ばかり撮っ

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春なので、種を蒔く

春なので、種を蒔く

三寒四温、とはこのことで、先日20度まで上がったと思いきや、今日は一日中10度を切っていた。

それでも春はすぐそこまで来ていて、ふと視線を横にずらすと、桜のつぼみがほころびかけている。

春は、何かを始めたくなる季節だ。あたたかい風が、私の背中をふわっと押してくれるから。

先日、エッセイを書かせてもらった本、『でも、ふりかえれば甘ったるく』(略してでもふり)が発売された。幸せ、をテーマとしたオ

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春の居処

春の居処

春はいったい、どこからやってくるんだろう。

5時を過ぎてオフィスを出ても、まだ空が明るいところから?

夕日のまなざしが、駅の構内案内図のふちを、色濃く染めるところから?

ダウンコートを2ヶ月ぶりに脱いで、チェスターコートになって、肩の荷が物理的に降りるところから?

玄関の扉を開けて、家のなかより外のほうがあたたかいと、気づいたところから?

春は、いろんなところからやってくる。

私がこの

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終わってしまうからこそ、

終わってしまうからこそ、

今はもう、終わってしまったものに、すごく惹かれてしまう。

縄文時代の女性たちがしていたアクセサリーとか、イギリスの貴族に仕えたメイドとか、大正時代の女学生同士の、手紙のやりとりとか。

今はもう、目の前で見れないもの。

たぶんそれは、春に行った谷川俊太郎展も、一緒だ。

もうとっくのとうに終わってしまったから、もう見ることはできない。だからかな、見ることができなくなってしまったから、谷川俊太郎

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真夏に見たくなる映画『風立ちぬ』––美しさと“狂気”は紙一重

真夏に見たくなる映画『風立ちぬ』––美しさと“狂気”は紙一重

国民的アニメ、ジブリ。

ジブリと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、ラピュタや千と千尋、耳をすませばあたりかなあと思うのですが、そんななかで私が最も好きな映画が、『風立ちぬ』。

宮崎監督の最後の作品(たぶん)ともあって、色々と賛否両論なこの作品。切り口もたくさんあって、好きなくせに何が好きなのかよくわからなくて、私にとっては非常に語りにくい作品でもあります。

何回か見て思ったこと、それはこの映画は

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