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授業の基本パターンを理解させる ワクワク文字練習③ イケイケ準備編(前)

イケイケとは言っても、教師がいきなりイケイケ状態で「Let's ひらがな練習!」って叫んでも無理。そもそも、それ51回はお互いにキツイ。

だから、チョットずつの変化を使って、子どもたちに無理なく飽きぬように学習を進める。

筆順練習の時と同様、だんだんに子どもたちをノセて「で、先生、今日はアレやりますか? 用意はバッチリですぜ!」って状態にする。つまり、そう言えるくらいに授業パターンを理解させて、子どもたちに見通しを与える。(『筆順練習で遊ぶ』ノーマル編イケイケ編ワルノリ編ゲーム編

今回『ワクワク文字練習 イケイケ準備編』は、どうやって子どもたちに授業パターンを理解させるか。理解させるためにどんな手順で活動させるかがメインです。

何事も仕込みが大事よ。まして相手は1年生! そう簡単にアウンの呼吸は作れません!

【 鉄則 】最初はゆっくり、少しずつ。慣れてきたらペースを上げて。

重要なことだから【 鉄則 】なんて書いたけど、筆順練習の時のチョットずつの変化と同じ。

最初の2文字「あ」「い」はゆっくりめ。時間もたっぷり取る。次の「う」「え」「お」は少しずつ加速して、リズムよく。全員が楽しめるよう、量とスピードを加減する。

最初の2文字を学習する間に、次の3つを子どもたちに理解させて、各自が活動できるようにする。

1、NGワードのような簡単なルール。
2、課題の言葉をたくさん見つけるコツ。
3、列指名の仕組み(発表時の起立・発表後の着席など)


さぁ説明はここまで!
では、上の目標1~3を念頭に入れて、『あ』の文字練習の授業開始!

①『あ』の筆順練習

「全員起立。『あ』の書き順を確かめます。」

「鉛筆を持つ方の手を顔の横に用意して。」(続きは『筆順練習 ノーマル編』を参照)
 
②言葉見つけNGワードを教師が説明

「この字の読み方は、せーの」
「あ!」

「これから『あ』で始まる言葉を見つけよう。その時、約束が1つ。」

「例えば『あ』で始まる言葉に『あか』ってあるね。『あか』はいいけど『あかいナントカ』はダメ。『あかい家』『あかい車』『あかい帽子』『あかい服」。そーゆーの無し。『あかい』シリーズになっちゃうから。」

許せ。相手は1年生、形容詞という説明は使えないのだ。でも、これで教師の意図は伝わるから嬉しい。

(全然関係ないけど、大昔ね、山口百恵さん主演のドラマで『赤いシリーズ』あったんだよ。コレを読んでいる皆さん、知らないでしょう? ネタが古すぎて残念!)

③言葉見つけの活動(2人組)

「でもね、意外と『あかナントカ』が見つかるよ。お隣さんと相談して考えてごらん。」

そう言って、子どもたちに話し合う時間(1~2分)を作り、教室内を歩きながら必要に応じて声をかける。ちなみに業界では、この時の教員の動きを「机間巡視(キカンジュンシ)」と言う。

この「お隣さんと」は2つの点で効果的。

第1に、初めての時1人では不安でも2人なら大丈夫な子がいる。
第2に、1人だと課題に関係なく宇宙との電波交信を始める夢想家を防ぐ。


④発表(2人組)

「『見つけたよ』というお2人さんは、起立。」
(この時に、全員立てるように机間巡視しておく。)

「窓側の前から順に、1つずつ発表してもらいます。『コレ言おうね』って決めておいて2人で一緒『せーの』で言ってね。考えてたのを全部言われちゃったら座ってね。」

赤とんぼ 赤虫 赤ちゃん 赤頭巾 赤坂 赤身 赤蛙 赤信号 赤出汁 赤オニ 赤ウミガメ 赤唐辛子 赤チン 赤ワイン

1年生と言えど、侮れない。結構出てくる。

教師は発表された言葉をドンドン黒板に書いていく。途中「言われた~!」「ソレがあった」「まだある」などの言葉が聞こえてくる。順番待ちの間にゴニョゴニョしている姿も可愛い。

「ソレ、他の子、知らんよね」というマニアックなのが出てきたら、「ごめん。それ、どんなのが教えて」と聞く。「家に飼ってる熱帯魚のエサで……」など、子どもだからこそ他の子に分かる言葉で上手に説明してくれる。

コレを読みながら、「赤点 赤字 赤潮 赤紙 赤札 赤帽 赤錆 赤恥 赤松 赤マムシ」などと考え始めたアナタ、私の大好きなABタイプの素質がある!(『タイプ別 こんな時、こんな子が悪魔に狙われる』)

④発表(「まだある人」)

1回発表したら(1回座ったら)、すぐには立たせない。
全員が座ってから、子どもたちに言う。

「沢山あるんだね。でも『まだ、あるよ』の人、いるかな? いたら立ってください。

ここで考え続けていた子を起立させて指名する。ここで発表した子は、歓声を受けること間違いなし。いや、ホントに「なんで、そんなの知っとるかいな?」というのが出てくる。

⑤言葉見つけの活動(1人)

「これなら『あ』で始まる言葉はたくさんありそうだね。今度は、1人で頭の中で考えてごらん。」

ここで、1人の子が質問してきた。
あきらくんだ。

「先生、『あおナントカ』もいいの?」

「いい所に目をつけた! 『あか』がいいなら、『あお』もいいよね!」
一瞬、あきらくんは1年生らしからぬ目でニヤリと笑った。コイツ、できる! かなりの戦略家と見た!

「なんだあ、カンタンじゃん!」
「もう書いてるのを『あお』に変えればいいよ。」
「アッタマいいっ!」
他の子ども達も直ぐに反応した。

⑥発表(1人)

「では『あ』で始まる言葉を見つけた人起立。」

全員起立した。

「今度は、廊下側から1人ずつね。発表したら座る。全部言われちゃったら座る。これは、さっきと同じね。先生が黒板に書くのが終わったら、次の人発表してね。」

お気づきと思う。
教師は、先に2人でやらせ、今度は1人にした。そして、先の列指名に「教師が書き終わったら次の発表をする」を加えた。これで、かなりテンポよく発表が進む。

コレを読みながら「青空 青葉 青あざ 青虫 青海苔 青カビ 青唐辛子 青魚 青菜 青蛙 青大将 青信号 青二才」とか考え始めたアナタ。私が教師だった時に是非とも教室で会いたかった! 超大歓迎する!

⑦発表(「まだある人」)

子どもたちは期待している。言うしかない。

「『まだあるよ』という人、立ちなさい。」

2~3人ならいい。
でも、ここは10人以上が立つ。

なぜなら「あおナントカ」だっていいなら、『あんナントカ』もOKだ。子ども達たちは、既にコツをつかんでいる。

ヤバい。多すぎる。

「先生とジャンケンをして、勝った人3人にします。マケとアイコは座ります。」

この手は使える。なぜか、子どもはジャンケンに納得する。そして、なぜか、ジャンケンできることを喜ぶ。助かる。

⑧練習帳に『あ』を書く。(注)

「練習帳に書きます。練習帳を出して、『あ』のページを開きます。」

『あ』は最初の文字だから、練習帳の書き方も指導する。
でも、今回はテーマと異なるので割愛。


今回、『あ』で始まる言葉探しから発表までの授業パターンを、どうやって子どもたちに理解させるか。理解させるためにどんな手順で活動させるかを例示。

授業パターンを理解できれば、子どもたちは見通しをもち、次の準備を自分でし始める。「で、先生、今日はアレやりますか? 用意はバッチリですぜ!」というノリノリ状態はそうやって作られる。

だからこそ、準備は怠りなく入念に!
それがラクする秘訣!

最初の2文字で後の49文字がラクになる。いや、その後の漢字も全てラクになる! こんな嬉しいことはない!

みんな! 最初はゆっくりだ!
ラクしていこうぜ!


次回、イケイケ準備編(後)

(注)最初の2文字「あ」「い」の練習では練習帳に書く時間は、発表の後に回す。その間に発表の仕方を全員に身につけさせる。
「う」以降は、『ワクワク文字練習 ノーマル編(前)』に示した通りの順です。

【 オマケの話 】
同じ鉄則に基づいて、入学間もない1年生への集団行動(体育)の指導例を書きました。読んで頂けたら嬉しいです。(『 迷える子羊を作らない 遠足準備 』)

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