ちば やよい

もと小学校教師。限られた時間の中で何をするか。一番は、子どもたちとの楽しい授業。そのた…

ちば やよい

もと小学校教師。限られた時間の中で何をするか。一番は、子どもたちとの楽しい授業。そのためにも日常業務の効率化と職場のチームワーク作り。自分が大切にしてきたことを公開します。学校で頑張っている教師、教育関係で働く人、子育てに奮闘中の人、そんな方々に、役立つことができたら幸いです。

最近の記事

「ご迷惑をかけると思いますが」には言葉にできない親の願いがある 事件簿⑪

「すぐにカッとなるようで……幼稚園では謝ることばかりでした」入学式当日、あかくんのお母さんは幼稚園や家庭での あかくんの様子を話すと「ご迷惑をかけると思いますが、よろしくお願いします」と小さくお辞儀をして帰った。 あかくんの様子を丁寧に話したお母さんだったけど、そこには次のような言葉にできない親の願いがあったと思う。 なぜなら、お母さんは「すぐにカッとなる」あかくんを理解している。教師が「カッとしちゃダメだよ」「落ち着こうね」と言っても言葉通りに出来ないことを知っている。

    • 「先生、ちょっとお話が」はとても大切なお話です 事件簿⑩

      「先生、ちょっとお話が」年度初めの保護者会後、担任が一人になるのを待って話しかける保護者がいる。それはとても大切な話をする時だ。内容は様々だけど「予め伝えておきたい。子どものことを知っておいて欲しい」そういう願いをもって話しかけている。 この年、教室に残った私に話しかけてきたのは、あかレンジャーと きレンジャーのお母さんだった。あかくんのお母さんは「すぐにカッとなるようで……先生にはご迷惑をかけると思います」と園生活での出来事を話した。お母さんの話から、思うようにならない子

      • 「自分でお家の人にお話できるかな?」トラブル報告は子ども自身に任せよう 事件簿⑨

        学校で友達とのトラブルが起きた時、特にそれが怪我や危険を伴うものだった時、教師は必ず保護者に連絡をする。何が起きたか、学校ではどう対応したかを報告し、今後の対応を保護者と相談・確認する。 今回は あかレンジャーの事件対応を例に、保護者への伝え方とその理由をお話します。(事件の詳細は『事件簿①』をご覧ください。) あかレンジャーは、友達を叩いた。椅子を振り上げて怒っていた。これは家庭に伝えなければならない。 でも、入学早々に「あかくんのことで、お話があります」なんて連絡があ

        • 悪いかどうかを子ども自身に判断させる理由 事件簿⑧

          「悪いことしちゃったなと思う人は起立。」 これは、子どもに二つのことをさせる言葉だ。まず、自分の行いに悪い点があったかどうか考えさせる。次に、立つかどうかを子ども自身に判断させる。その二つをさせている。 では、実際にそれをさせるとどうなるかをご覧ください。 (「事件」の全容はこちら。『ドアを開けたら乱闘事件?事件簿①』) あれ?と、思う子が立ったり立たなかったりしますが、本人がそうしているのですから、教師は立ったり座ったりを促すことはしません。 教師が「あれ?」と思う

        「ご迷惑をかけると思いますが」には言葉にできない親の願いがある 事件簿⑪

          傍観者を作らない!見ていた子どもに意見を聞く(2) 事件簿⑦

          朝の教室で起きた乱闘事件? もしも、「これは当事者5人の問題だ」と考えて「5人だけを集めて教師が話を聞く」ことにしたらどうだろう。 他の子ども達は、意見があっても言う機会がない。問題がどのように解決されたのか分からない。多くの子は騒ぎがあった場所にいても、何があったのかよく分からない。よく分からないまま「○○くんが暴れていた」という大ざっぱな記憶が残る。 事件の当事者と他の子ども達を切り離しては、子ども達は互いを理解できない。高学年の子どもなら、気になっていても「聞きにく

          傍観者を作らない!見ていた子どもに意見を聞く(2) 事件簿⑦

          傍観者を作らない!見ていた子どもに意見を聞く(1) 事件簿⑥

          教師不在の朝の教室で、椅子を振り上げての乱闘事件? でも、大半の子どもは事件の経緯を分かっていない。そういう時は、何が起きたのかを全員で理解して、全員で解決する。事件の当事者だけで解決しようとしない。 だから、次のことが重要になる。 「聞く」ポイント4。見ていた子どもに意見を聞く。 これは、次の三つの機会を作ることになる。 1、当事者以外も自分の意見を発言する。 2、当事者が他者の意見を聞く。 3、集団の全員が問題解決に参加する。 まずは、以下に事件の当事者5人の話を確

          傍観者を作らない!見ていた子どもに意見を聞く(1) 事件簿⑥

          子どもの問題を教師が代わって解決することはできない 事件簿⑤

          トラブルの当事者は子どもだ。当事者でない教師が子どもの問題を代わって解決することはできない。 しかし、子ども自身も何を話せばよいのか分からずにいることがある。そのような時、教師は仲介者となり、子どもの話し合いを促す必要がある。 「聞く」ポイント3。教師は代弁者になるのではなく、話し合いの仲介者となる。 例えば、前回ご紹介したこの場面。もう一度ご覧下さい。 きレンジャーは「バッグを無くせば二人のケンカが止まる」と思った。そんな意図とは思いもよらない あかレンジャーは腹を立

          子どもの問題を教師が代わって解決することはできない 事件簿⑤

          一見奇妙な行動の裏にある「子どもの論理」を理解する 事件簿④

          「聞く」ポイント2。「え?」「なぜ?」と思う奇妙な行動があった時は、必ず子どもの意図を確認する。その行動を導いた「子どもの論理」を確認する。 「何をしたかったの?」 それを子どもに聞く。 その例がこちら。 え? なぜ? なぜ、バッグを捨てた? きレンジャーの行動を知った時、私はそう思った。大勢の子ども達も、そう思ったに違いない。(事件の全容はこちら。) だから、きレンジャーに聞いてみた。 「なんでバッグをゴミ箱に入れようと思ったの?」 答えは「ケンカを止めたかった

          一見奇妙な行動の裏にある「子どもの論理」を理解する 事件簿④

          お説教不要! 事件対応は3秒ルールで一問一答 事件簿③

          「聞く」ポイント1。教師の言葉は3秒以内、一問一答方式にする。 もしも、子どもに分からせたいことが多ければ、それを細かく区切る。全てを一問一答の形にする。教師の短い問いに、子どもの答えも短くなる。どちらの言葉も3秒以内になる。 例えば、この場面。 ここでの一問一答は次の通り。 ①「最初の悪いことって誰がしたことかな?」  →「はい」(挙手) ②「何が悪かったの?」  →「けってわたした」 ③「どうすればよかったと思う?」  →「手でわたす」 ④「それなら、やってみよう」

          お説教不要! 事件対応は3秒ルールで一問一答 事件簿③

          子どもは何が悪いか分かってる! 教師は聞くだけでいい 事件簿②

          誰が悪い? 何をしたから悪い? どうすればよかった? 事件の経緯を振り返った子どもは、たいていの場合、自分なりの答えをもっている。 だから、教師は事件の経緯を確認できれば、後は子どもの話を聞くだけでいい。 今回は、事件のリプレイ後のお話です。 リプレイ方式(『事件簿①』)で確認した後 子どもは子どもなりに分かってる。何が悪かったか、どうすればよかったかを分かってる。多くの場合、子どもなりに自分がしたことを悔やんでいる。 そこに重ねて周囲から「オマエが悪い」と言われる

          子どもは何が悪いか分かってる! 教師は聞くだけでいい 事件簿②

          「繊細さん」の特徴がよく分かる記事を見つけたのでご紹介します。 『HSPな人の14の特徴』小塩真司 https://note.com/atnote/n/nb48d15773b08 この特徴がある子は問題を起こす子に比べると目立たないタイプ。しかし、この子達を活躍させることができれば、学級はとても落ち着きます。

          「繊細さん」の特徴がよく分かる記事を見つけたのでご紹介します。 『HSPな人の14の特徴』小塩真司 https://note.com/atnote/n/nb48d15773b08 この特徴がある子は問題を起こす子に比べると目立たないタイプ。しかし、この子達を活躍させることができれば、学級はとても落ち着きます。

          教室のドアを開けたら乱闘事件? まずは焦らず事実確認 事件簿①

          基本、授業中に事件は起きない。休み時間や清掃時間、教師の目が届かない時間に事件は起きる。 これは20××年、入学間もない1年生の教室で起きた話。 こんなことが起こっていれば大事件だ。大事件なのだから、子ども達全員が何が起きたのかを分かっていると思ってしまう。 しかし、ほとんどの子ども達は何が起きたのか分かっていない。事件の発端や経緯を知る子は数人に限られている。 だから、誤解が生じる。事実を知らないまま「○○くんが悪い」「○○くんは悪い子だ」と誤解する。下手をすれば、教師

          教室のドアを開けたら乱闘事件? まずは焦らず事実確認 事件簿①

          「あの先生は、どれだけ俺のことを馬鹿にすれば気がすむんだ」と その子は言った 反省文の害⑩

          高校受験の二日前、不登校の男の子が言った。 「いつもいつもいつもいつも思ってた、あの先生は、どれだけ俺のことを馬鹿にすれば気がすむんだ」 「俺のことを、どれだけダメな人間だと思ってるのか」 これは、受験票を受け取るために中学校に行った彼が帰宅した時の言葉だ。彼は担任から侮辱の言葉を受けて帰ってきた。 受験を控えた面談の席では、同席していた母親の前で担任は男の子にこんなことも言っていた。 「そう思うこと自体が、お門違いなんだよ」 「そうなった時、おまえはダメだろ

          「あの先生は、どれだけ俺のことを馬鹿にすれば気がすむんだ」と その子は言った 反省文の害⑩

          「不登校支援策」が教師を追い詰める 反省文の害⑨

          「不登校の児童を車に乗せ無理やり学校へ 教諭に厳重注意」 え? 何があった? どうした? 新聞記事の見出しに驚いて記事に目をやる。新聞で報道された内容は以下の通り。  不登校の傾向がある低学年の男子児童を無理に学校に連れ出したとして、愛知県半田市教育委員会が市立小学校の校長と担任の女性教諭を口頭で厳重注意していたことが11日、明らかになった。厳重注意は昨年12月24日付。  市教委によると、女性教諭は昨年12月半ばごろ、登校を促そうと男児宅を訪問。「行きたくない」と言う男

          「不登校支援策」が教師を追い詰める 反省文の害⑨

          「自分には無理です」と言って辞めた若い教師 反省文の害⑧

          「この春で辞めます」 謝恩会のために三年ぶりに前任校を訪れた時だった。卒業生担任の若い教師が他に聞こえない声で私に告げた。 そして彼は「僕は『子どもがして欲しいと思うようにしたい』のですが、それではダメでしょうか」と続けた。 私は何のことか分からないまま「それが一番いいんじゃないのかな。どうして?」と答えたが、彼は「自分には無理です」と言って力なく微笑むと他の来賓教師へと挨拶に行った。 私は、彼の後ろ姿を見ながら「自分には無理です」の意味を考え続けた。 彼の学級には、長期

          「自分には無理です」と言って辞めた若い教師 反省文の害⑧

          《子ども一人ひとりに配慮する》ということ 反省文の害⑦

          特別な配慮を要する子どもがいる場合がある。 かつて、軽微な心疾患があり常に薬を携帯している子どもを引率し林間学校での登山活動を行うことになった。教師は、最悪の事態も考慮して準備を進めなくてはならない。子どもの命に関わることだ。事が起きてからでは遅い。 次のような対応をした。 山中で体調が急変した時、「携帯電話が使えるか」「背負って救急車が待つ車道に出るまで最大何分かかるか」などを調べた。事前に登山コースを歩き、電波の入り具合、車道までの脇道の有無を確認した。谷の数カ所では電

          《子ども一人ひとりに配慮する》ということ 反省文の害⑦