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「強いチームになって嬉しい」…ろう野球・日本代表から母校へのエール/高校野球ハイライト番外編・彦根総合

春の県大会でベスト4に入り、シード権を獲得して夏に臨んだ彦根総合。2年生主体のチームは18日の初戦で伊香に敗れ、今年も甲子園への夢は叶わなかった。
6度の甲子園経験を誇る宮崎裕也監督が率いるチームに、どうしても周囲の期待は高くなる。そんな中、人一倍のエールを送っていた卒業生がいる。難聴者の野球「ろう野球」の日本代表、21歳の塩冶(えんや)亮太郎さんだ。

俊足と守備力を生かして代表の主力を狙う

生まれは福井県福井市。4歳で大津市に引っ越した時には人工内耳を着けていた。離れた場所からの声がほとんど聞こえないハンデを抱えながらも、オープンキャンパスで雰囲気の気に入った彦根総合へ進学する。
「1時間以上の通学が大変で、練習も厳しい雰囲気がありました。でもチームメイトが自分のためにジェスチャーや筆談で教えてくれました」。甲子園との縁こそなかったが、3年の夏はスタメン出場。父親の影響で5歳から始めた大好きな野球を、高校卒業までやり遂げた。

彦根総合高校時代の塩冶さん(本人提供)

いまは理学療法士を目指して大阪の専門学校に通いながら、「ろう野球」の代表活動に励んでいる。プレー中は人工内耳のスイッチを切る必要があり、仲間の声も打球の音も頼りにはできない。ボールが急に飛んでくる怖い体験もたくさんあったが、「耳の聞こえない人たちが、手話や表情を使ってコミュニケーションを取る野球を知ってほしい」と力を込めた。

母校の滋賀大会初優勝を心待ちにしている

世界一を目指して2年前に発足したチームでは、俊足と守備力を生かした内野のレギュラーを務めている。今月には甲賀市での代表合宿にも参加。コロナ禍で世界大会開催は来年以降の見込みだが、個人の目標は「MVP」と大きい。

代表ユニフォームを手に筆者と撮影

彦根総合の甲子園出場と、ろう野球・日本代表の世界一。どちらが早く達成できそうかとの問いには、迷わず母校を挙げた。「強いチームになってくれて嬉しい。勝ち続けてほしいけれど、ケガをしないように気をつけて」。高校2年で右手首を骨折した自身の反省も踏まえエールを送る。
野球の種類こそ違えど、彦根総合の名を全国に広めるチャンスを持った選手同士。来年以降も後輩が決勝まで進出すれば球場に駆けつけ、静かに、しかし熱く応援することを楽しみにしている。

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