【 Care’s World case 05 想いを引き継ぎ、自分たちの視点で、フラットな居場所を作る 〜モノモノコウカンプロジェクト 原田桃子 さん 〜 / -後編- 】
前編では、桃子さんの現在の軸となる原点や田中さんとの出会いまでを伺いました。
後編では、モノモノコウカンを引き継いでからの動きや今後の展望について深掘りしていきます。
前編はこちら。
Care’s Worldについてはこちらから。
想いを引き継ぎ、自分たちにしかできないことを
桃子:モノモノコウカンの活動が終わってしまうかもしれない…。その投稿を見て、思った以上に心が動揺している自分がいました。
取材を通して、田中さんがどれだけ想いをもって、頑張ってきたか。その姿を見てきたからこその動揺だったのかもしれません。気がつけば、田中さんに連絡をしていました。その時はまだ引き継ぐ人が見つかっていなかったようでした。
「私に考えがあるので、話を聞いてもらっていいですか?」
モノモノコウカンが続いてほしい気持ちが強かったからか、そんな返信をしていました。私自身、結婚をして、独身から生活環境も変わり、田中さんの活動に対する見方も変わってきたんだと思います。
そこで一番身近な夫(※)に話をすることにしました。「私がモノモノコウカンを引き継ぐのはどうか?」と。すると、夫から医療的な視点を例に挙げて「一緒にやるよ、応援するよ」と背中を押してくれたんです。
私たち二人だからできること、社会的な意義、目指す像といったことを話し合っていると、楽しくなってきて「軸さえ決まれば、何とかなる」「田中さんが作ってくれた土壌を大事に、もっと花を咲かせよう」という想いが一致し、引き継ぐことを決めました。
桃子:その後、プレゼン資料を作って田中さんを訪ねました。私たち夫婦の想い…。田中さんの想いを確実に引き継ぎたい。私たちが引き継いだ後も「このプロジェクトは志布志の田中さんという人が始めんだよ」と言い続けていきたい。そして、もう一つ。私たちにしかできない視点で活動をしたい。
付加価値として、例えば、健康の側面だったり、発信の仕方だったりを挙げて、プレゼンしました。嬉しいことに引き継ぐことについて了承をいただき、今は“スーパーアドバイザー”という肩書きで、無理のない範囲でサポートしてくださっています。
最初は感覚を掴んでいくために、田中さんが運営する場のお手伝いから初めて、徐々に時間をかけてウエイトを増やしていきました。今年の春に私たちが暮らす鹿児島市のほうにモノを移動し、ありがたいことに倉庫を貸してくださる方もいらっしゃって、普段はそこに保管しているところです。
引き継ぎの相談に伺った際に認識の擦り合わせができたので、田中さんも私たちの考えを深く理解してくださっていますし、同じ方向に向けているかなと思っています。
誰もがフラットに社会参画できる居場所に
桃子:引き継ぐ際に心に引っかかることがあって…。私は結婚したとはいえ、まだ子育てをしていません。実際、モノモノコウカンに来るお客さんはお母さん・お父さんが多い印象だったので「私で適任なのか?」と考えてしまったんです。
でも、内省していくうちに「子育て世帯の悩みを、どうして子育て世代だけで解消しなきゃいけないのか?」と思うようになって。世代や世帯で線引きする必要はないし、子育てをしていなくても、できることはたくさんあると感じました。
子どもがいない部分だけ見たときに、そこに余白が生まれます。例えば、子育てを終えた人が手伝えば、その人にとっての生きがいにもなるし、アパレル経験がない人が接客をすれば、その感覚を体験できて楽しい気持ちになるとか、関わり方は人それぞれなんだと思います。
実は、裏テーマも考えていて。よくニュースで産後鬱で自殺する方だったり、孤独が原因で悲しい話を耳にすることがあります。そういうことを防ぐ意味合いでも、モノモノコウカンは活かせるんじゃないかと考えています。
私みたいなお節介な人が“一人じゃないよ”“その苦しみをわかることはできないけど、こういうことならできるよ”と声をかけるだけでも、その人の気持ちが楽になると思うんです。
桃子:最終的にはモノモノコウカンが相談窓口になればいいなと思っています。どうしても通常の相談窓口だとハードルが高いと感じていて。それをモノを交換する場所として開放することで、足も運びやすいと思うんです。
洋服は衣食住の“衣”で、生きていくためには必要なモノです。生きるために必要だと思えば動けるし、その先に気持ちを吐き出せる場所があれば、相談窓口として機能できるんじゃないかって。
そこから、必要な支援に繋げられるかもしれないですし。全てを解決はできないけど、ちょっとでも悲しい結末を避けられるなら、人生の中で挑戦する価値はあると思っています。
将来的にはハコ(場)を店舗型として作れたら嬉しいです。イベント時だけじゃなく、いつでも駆け込めるようにしたいんです。
まだまだ課題はたくさんあるのですが、そのために、まずは活動を多くの人に知ってもらうこと。そこにいる人たちがフラットな関係になれるような場づくりをしていくこと。そして、何より、私たちが楽しむこと。
そうすることで、いろんな人が気軽に社会参画できる、そんな場所にしたいです。そのために、一つ一つ小さなことから形にしていこうと思います。
(終わり)
(前編はこちら)
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