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母との日々

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2022年9月の記事一覧

オペラを観に行く

オペラを観に行く

オペラを一度生で観たいものだと、大学で同級だったオペラ狂のMに言うと、ウィーンから有名なオペラ歌手が来てリヒャルト・ワーグナーの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』をやるといった。

それは主役だけが外国人で、あとはすべて日本人なので、値段もお手頃なのだということだった。それでも、三階の桟敷席のようなところで5千円もした。

独身時代のことで、母に話すと観てみたいと言い出したので、Mに言ってチケ

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結核狂騒曲(2)

結核狂騒曲(2)

結核ではないことを証明しないといけなくなったので、とりあえず抗生物質を処方してもらった医者に再び行くことにした。そこは、看板をよく見ると消化器内科が専門の診療所だったので若干の不安はあったが、実家から最も近い診療所だったのである。

医師には、他に言い方を思いつかなかったので、ありのままを正直に話した。咳がとれないが、実は幼稚園の入る前に結核になったことがあるらしく、古い病巣があって、レントゲン検

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ドナウ源流行

ドナウ源流行

母とは海外旅行をしたことがない。国内旅行は、なんどもしているのだが、海外となるととたんに敷居が高くなる。だが、母は他の家族とはけっこう海外に行っているのだ。

弟は、小学四年生だった80年代の初めに、父の長期出張に母に連れられて行き、ロンドンとデイビス(カリフォルニア州)にそれぞれ三カ月ずつ滞在した。その間、弟は現地の日本人学校に通った。わたしと妹は、大学があったのでふたりで日本に置き去りにされた

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『飛ぶのが怖い』

『飛ぶのが怖い』

書庫の段ボールの中から出てきたエリカ・ジョングの『飛ぶのが怖い』は1976年11月に柳瀬尚紀訳で新潮文庫から発行されたものだった。

確かに、その中には、文豪と呼ばれるような男性作家の書く女性が現実にそぐわない場合のあることが書かれていた。だが、そこにはトルストイとフローベールが入っていなかった(トルストイは一回だけでてきたが崇拝する作家のリストに入っていた)。わたしは、アンナ・カレーニナとエンマ

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