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趣味で小説を書いてます。 <読書メモ> https://www.icloud.com/notes/0d97mQNiimFvDHuX6ru0RV8Fg

マガジン

最近の記事

中学デビュー

よくよく考えたら、「主人公」なんていつも一人で、ほとんどの人は、フツーの人なんだよね。自分が「主人公」になれない方がよっぽどフツーで。だから、わたしはフツーでいいんだよ。フツーを目指そう。それが、フツー。 よし、フツーで行こう。 さて、わたくし、トウトは、中学一年生とあいなりまして、「中学デビュー」を果たそうと考えております。 (ガッツポーズをする。) ワーワー!! ヒューヒュー!! イェーイ!! (トウトの脳内で、拍手と歓声が上がる。) 今まで、クラスでは目立たず、友達

    • いつかの卒業式に宛てて<手書き版>

      元々、少し年の離れた「友人」に頼まれて、一本の随筆を書いていた。あわよくば、国語の授業に使えないかと、二週間ほど考えた。 そうして、二週間かけて書いた文章は、一文字も残らなかった。改めてこれを書きはじめた日、自分とは、何ら関わりのない小学六年生の卒業式を見たことがきっかけだった。 六年間の思い出を語る小学生。その思い出は、「六年間」という時間を語っているようでいて、実は、そうではない。 「初めての小学校!!」 「友達ができるか、不安でした!」 まだ、今よりも幼かったあの頃は、

      • いつかの卒業式に宛てて

        元々、少し年の離れた「友人」に頼まれて、一本の随筆を書いていた。あわよくば、国語の授業に使えないかと、二週間ほど考えた。 そうして、二週間かけて書いた文章は、一文字も残らなかった。改めてこれを書きはじめた日、自分とは、何ら関わりのない小学校六年生の卒業式を見たことがきっかけだった。 六年間の思い出を語る小学生。その思い出は、「六年間」という時間を語っているようでいて、実は、そうではない。 「初めての小学校!」 「友達ができるか、不安でした!」 まだ、今よりも幼かったあの頃は、

        • 例文 随筆「静かな教室」

          「授業規律」と呼ばれるものがある。授業中に発言をするときは、手を挙げてから発言しなくてはいけない。先生が話しているときは、手を動かさずに、先生の方を見ながら話を聞かなくてはいけない。チャイムが鳴る1分前には、次の授業の準備をして、席に座っていなくてはいけない。そういうルールのことを呼ぶ。 子どもだったころは、よく思ったものだった。なんでたった一言喋るために、わざわざ挙手などしなくてはならないのか。なぜ、学校の先生の興味もない話を聞いてやらなくてはならんのか。1分前から座らなく

        中学デビュー

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        • 例文
          7本

        記事

          秋にサクラ

          四季野はら公園の遊歩道は、桜の並木道で、ばあちゃんといっしょに歩いていたときに、こんなことを聞いた。 「ねえねえ、どうしてさくらは秋に咲かないの?」 「ややあ!!! そんなことないねえ。秋にも桜は咲くんだよ。だって、ばあちゃんは、何度も見たことあるもの」 「えー、ぼくは見たことないよ」 「いやいや!!! 秋にも桜は咲くんだよ。だって、ばあちゃんは、何度も見たことあるもの」 家に帰るまで、16回この話をした。 それから、秋は4回やってきて、小学5年生を終えようとしている。秋に

          秋にサクラ

          例文 随筆「数学する友達と」

          「みかんが3こ、りんごが4こ あります。くだものは、あわせて なんこありますか」 こんな感じの問題文だったと思う。 「みかんが3こ、りんごが4こ!」 とある小学1年生の女の子は、嬉しそうにこう答えた。 発明王エジソンは、幼い頃、学校の先生に「1+1は、どうして2になるのか」質問をした。先生が、「1個の粘土と、1個の粘土があったら、粘土は2個あるでしょ」と答えたところ、「1個の粘土と、1個の粘土を混ぜたら、1個の粘土になるのではないか」と言って、譲らなかったという。 これら

          例文 随筆「数学する友達と」

          例文 随筆「絵を描く」

          普段、あまり話したことのなかった少年が、ノートに描いた一枚の絵を持ってきた。クジャクヤママユと、手のデッサンだった。上手だなあ、と思った。 きっと、もっと上手な人が描けば、いくらでももっと上手なデッサンを見ることはできるんだろうと思う。ただ、上手いとか、下手とか、そういうことじゃない。「少年の日の思い出」という一編の小説を授業で読んで、彼が絵を描いたこと、それを見せに来てくれたことが嬉しかった。彼の絵は、すてきな絵だった。 以前、自分の受け持った子に聞いたことがある。 「美

          例文 随筆「絵を描く」

          例文 随筆「一緒に走る」

          部活。校舎の外周を走るトレーニングは、定番の練習だ。自分が中学生だったころ、運動部はみんな走らされた。自分の意思で、走ったわけじゃない。まさしく、「走らされた」のだった。楽しくバドミントンをしたいだけの自分にとっては、「ガチ」の人たちだけが、一生懸命やる時間だった。 勤めているこの学校は、1周何メートルくらいなのだろう。暇なときは生徒に混ざって走る。個人的には、1周でギブアップしたいところではあるものの、アラサーとなり、思いの外、走れなくなっている事実に、走らなくてはなあ、

          例文 随筆「一緒に走る」

          水平線の夜

          夏の匂いはうだって、彼方、水平線から吹く潮風は、海沿いの家の蛇口を錆びつかせている。テトラポッドの上に座る女の子は、独りぼっちになったサワガニを右手の指に乗せた。てくてくと歩くカニの足がくすぐったくて、ちょっと笑うとえくぼができる。 退屈で、暑い……。 カニを岩場に戻してあげると、女の子は立ち上がった。カニは、テトラポッドの隙間に消えた。蛇口に吹き付けていた風は、翻って、水色のワンピースをはためかせる。夏の陽射しを全身に、大きく伸びをすると、女の子は、限界まで吸い込んだ息を勢

          水平線の夜

          例文 故事成語物語「三十分の道のり」

          <選んだ故事成語> 杜撰 <選んだ故事成語の由来・意味> 宋の国の杜黙の撰する(作る)詩は、定型詩としての厳格な規則に合っていなかったことから、誤りが多いこと。また物事の粗雑なこと。 <物語> 杜撰な人だった。 大会の出場登録は忘れるし、帯は注文し忘れるし、事務から出禁くらうし。 まだ、中二だったユウタは、川越駅に着くと、師匠と二人で西口を出た。 「かばん、持ちますか」 「別にいいよ」 ユウタは、そっけなく断られた。 今日の演武会は、駅から二十分の姉妹道場でやる。 歩きタ

          例文 故事成語物語「三十分の道のり」

          電話越しのあいつに

          ちょうど3年前の話になる。 受話器の向こうのあいつは、その日、6日前に13歳になった。 俺が電話をかけると、あいさつもそこそこに、「悲しいお知らせがあります」とあいつの方から言ってきた。「誕生日パーティ、なかった。プレゼントもケーキも」 そりゃ不運だったな、と笑ってやった。 しょうがないから、桃太郎を話してやることにした。 「聞きたいか?」 「別に聞きたくない」 断られたが、話し始めた。 緑の公衆電話の上に10円玉を山にした。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

          電話越しのあいつに

          Latter1「行方不明者」

          記録によれば、裏山の桜は、二百年前にはすでに枯れていて、緑の広葉樹が広がる山の中腹、花を咲かせることはおろか、葉をつけることさえもない。あの巨大な桜の枯れ木は、そこだけ山が死んだかのように、ぽっかりとした穴となって佇む。 村の人間たちは、朽ちることもなく「生き続ける」枯れ木を不吉だとして、その桜を切り倒す計画を立てた。 「お前も行くか」 ヨウエイに突然声をかけられて、我に還った。 「何に」 「切り倒しだ」 なぜ? まず、そう思った。もう俺には手伝えない。村の人間の中には、足手

          Latter1「行方不明者」

          虫を愛する者同士

          とある日の朝、やや遅刻気味で1年E組の教室へ行くと、やけに騒がしい。ぼくがチャイムギリギリだったかどうかなんて、誰も気にならないくらい、みんな、ベランダに出る窓にうじゃうじゃと群がり、何かに夢中になっている。 「何かあったの?」 と、聞くと、 「でかい虫がいるんだよ」 と、クラスメイトの男子が答える。 それこそ虫のように、人の群がる窓を覗くと、窓の外側、ちょうど鍵の高さのところに巨大な蛾が止まっている。き、気持ち悪い……。 ぼくは、わざわざ見に行ったことを後悔したのだけど、そ

          虫を愛する者同士

          道場の自販機とケツポケット【Ver.2】

          昭和生まれのおっさんは、ケツポケットに小銭と札を裸で入れて持ち歩くんだと思ってた。 じいちゃんがそうだったし、師匠もそうだったから。と言っても、じいちゃんと師匠の他に、ケツのポケットに金を持ち歩く人を見たことはなかったけど。 4代目の道場長が亡くなる前、ユウタが中学生のときだった冬、中1か中2のときだった。 道場の前に、まだ、赤い自販機があって、お茶もスポドリも、コーラもコーヒーも、一律100円で売ってた。稽古が終わると、おっちゃんたちが、よくジュースをおごってくれた。 小

          道場の自販機とケツポケット【Ver.2】

          階段下の教室【Ver.2】

          ボイラー室の扉から、錆びついた鉄の匂いがする。凍える匂いに溶け込むように『平家物語』を読み上げる声が、第三階段に反響した。声変わりをしかけたユウタの声には、まだ子どもらしい明るい響きが残っている。 『平家物語』の暗唱テストを、ユウタは、頑なにやらないと言い張ったつもりだったが、結局、階段の踊り場でやらされるはめになった。とはいえ、当然一句も暗記などしていない。ただ、一行ずつ水城先生の言った文言を、後から唱えるだけだった。 「祇園精舎の鐘の声」 「ぎおんしょうじゃのかねのこえ

          階段下の教室【Ver.2】

          サンタさんの手紙

          サンタなんていなくて、あれは夜中に、お母さんお父さんがこっそり買っておいたプレゼントを置いてるだけなんだよ。と、自慢げにクラスで言いふらしてる男子がいた。そのショックは、ぼくにとってすさまじいものだった。 うちの母さんは、外に出るのが嫌いだから、食べ物以外は全部通販で買ってる。とすれば、たぶんプレゼントもAmazonか楽天かなんかで買ってるに違いない。まさか、サンタさんの正体が、ネット通販だったなんて……。 いや? 荷物を運んでるのは、宅急便の人だから、サンタさんは、いつもう

          サンタさんの手紙