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趣味で小説を書いてます。 <ブクログ> https://booklog.jp/users/agjmd <読書メモ> https://www.icloud.com/notes/0d97mQNiimFvDHuX6ru0RV8Fg

マガジン

  • 人権作文

  • エッセイ

  • 例文

    自分の作品を、静かに読まれる時間の心細さ。自分が書いたものにコメントをもらう、その不安。逆の立場になったとき、自分は、その人の書いた言葉をどう読み、どんな言葉をかけたらよいのだろうか。 「作品には、作品で応えたらいいじゃない」 そういう考えがあるのか、と知った。わたしのよく知る、目の前の人の作品に「応える」ために書いた文章の羅列。

  • 少年少女の四季

    四人の子どもたちは、それぞれの季節に、それぞれの季節の、素朴なふしぎを心に抱く。サンタクロースの正体は? 水平線には何があるの? どうして秋にサクラは咲かないの? 冬眠中は、お腹が空かないの? 小さな不思議に、小さな夢が、「答え」をくれる。子どもの頃に見たそれは、夢か、はたまた現実か。彼らは、いつまで自分が見たものを夢か、現実か、と迷い続けられるのだろう。四人の少年少女たちが経験した思い出の、ささやかな短編。

  • Latter

    記録によれば、裏山の桜は、二百年前にはすでに枯れていて、緑の広葉樹が広がる山の中腹、花を咲かせることはおろか、葉をつけることさえもないーーー とある村、不吉と言われ、誰も辿り着くことのできない桜の木の伐採計画の中途、一人の男が行方不明となる。妻と息子を失った男は、どこへ行ってしまったのか。桜の木に辿り着いた少年は、その真実を知ることになる。

最近の記事

貧困、その距離感

私に空手を教えてくれた師匠は、タクシー運転手だ。なりたかったわけではなく、かつては設計士をしていた。 師匠の働いていた建築会社は、30年前に倒産した。社員たちは、会社の実態を知らずに、2ヶ月分の給料を受け取れず、無職となった。不景気の中、同じ職には就けず、ようやくタクシー運転手となった。 私が仕事を探していたとき、一緒に飲みながらそんな話をしてくれた。家族のいた師匠が、新しい仕事に就くまでの間、どんな生活をしたのかは知らない。特に、聞かなかった。こちらから聞く話でもないと思っ

    • 合唱コンクール

      母さんといっしょに初めて文化祭を見に行ったとき、姉ちゃんは中学一年生で、年子のぼくは小学六年生だった。姉ちゃんが長女で一番上だったから、ぼくは初めて中学校の文化祭を見に行くことになった。 授業や部活で作った作品とかがずらずら並んだ教室展示は、小学校のよりは全然完成度が高く見えたけど、あんまり面白くなかった。母さんも、姉ちゃんの作ったタツノオトシゴの彫金だけパパッと見ると、あとは興味なさそうに他の生徒の作品を眺めた。どれも似たり寄ったりで、授業で作ったって感じがした。 ちょっと

      • 人権作文「貧困、その距離感」

        中学2年生となった少年と、久しぶりに少しだけ話をした。彼が言った。 「人権作文、あれ本当に意味ない」 自分の置かれた立場をひとまず置いて、概ね、彼の言葉に同意しようと思う。「人権」について何かを語るには、教える側も、教わる側も、あまりに多くのことを知らないのだと思う。「人権」という社会問題に、身近なことだけをもって何かを書くことの危うさは、常にある。定められた締め切りのために、字数制限をこえた、形だけ量産される「人権作文」に、傷つく当事者も、きっと、いるだろう。 それでも、課

        • Latter2 「亡霊を追って」

          前話 Latter1「行方不明者」 もうそろそろ、1時間目の始まるころかな。朝ごはんも食べなかった。体内時計は狂ってた。 ソウシは、トヨマルの墓を掘りながら、初めてこいつを拾った日のことを思い出した。その日、この木の下に、この野良猫は、ちょこんと座った。ソウシは、自分と同じ黒い目をした猫と、しばし向き合った。あくびをするように、にゃあと小さく鳴くと、ソウシは、目を合わせたまま、静かに縁側に座った。 茹だるような暑さの続く九月で、安いガラスの風鈴は、かちん、かちん、と、硬質な

        貧困、その距離感

        マガジン

        • 人権作文
          2本
        • エッセイ
          4本
        • 例文
          2本
        • 少年少女の四季
          3本
        • Latter
          2本

        記事

          中学デビュー

          よくよく考えたら、「主人公」なんていつも一人で、ほとんどの人は、フツーの人なんだよね。自分が「主人公」になれない方がよっぽどフツーで。だから、わたしはフツーでいいんだよ。フツーを目指そう。それが、フツー。 よし、フツーで行こう。 さて、わたくし、トウトは、中学一年生とあいなりまして、「中学デビュー」を果たそうと考えております。 (ガッツポーズをする。) ワーワー!! ヒューヒュー!! イェーイ!! (トウトの脳内で、拍手と歓声が上がる。) 今まで、クラスでは目立たず、友達

          中学デビュー

          いつかの卒業式に宛てて<手書き版>

          元々、少し年の離れた「友人」に頼まれて、一本の随筆を書いていた。あわよくば、国語の授業に使えないかと、二週間ほど考えた。 そうして、二週間かけて書いた文章は、一文字も残らなかった。改めてこれを書きはじめた日、自分とは、何ら関わりのない小学六年生の卒業式を見たことがきっかけだった。 六年間の思い出を語る小学生。その思い出は、「六年間」という時間を語っているようでいて、実は、そうではない。 「初めての小学校!!」 「友達ができるか、不安でした!」 まだ、今よりも幼かったあの頃は、

          いつかの卒業式に宛てて<手書き版>

          いつかの卒業式に宛てて

          元々、少し年の離れた「友人」に頼まれて、一本の随筆を書いていた。あわよくば、国語の授業に使えないかと、二週間ほど考えた。 そうして、二週間かけて書いた文章は、一文字も残らなかった。改めてこれを書きはじめた日、自分とは、何ら関わりのない小学校六年生の卒業式を見たことがきっかけだった。 六年間の思い出を語る小学生。その思い出は、「六年間」という時間を語っているようでいて、実は、そうではない。 「初めての小学校!」 「友達ができるか、不安でした!」 まだ、今よりも幼かったあの頃は、

          いつかの卒業式に宛てて

          エッセイ「静かな教室」

          「授業規律」と呼ばれるものがある。授業中に発言をするときは、手を挙げてから発言しなくてはいけない。先生が話しているときは、手を動かさずに、先生の方を見ながら話を聞かなくてはいけない。チャイムが鳴る1分前には、次の授業の準備をして、席に座っていなくてはいけない。そういうルールのことを呼ぶ。 子どもだったころは、よく思ったものだった。なんでたった一言喋るために、わざわざ挙手などしなくてはならないのか。なぜ、学校の先生の興味もない話を聞いてやらなくてはならんのか。1分前から座らなく

          エッセイ「静かな教室」

          秋にサクラ

          四季野はら公園の遊歩道は、桜の並木道で、ばあちゃんといっしょに歩いていたときに、こんなことを聞いた。 「ねえねえ、どうしてさくらは秋に咲かないの?」 「ややあ!!! そんなことないねえ。秋にも桜は咲くんだよ。だって、ばあちゃんは、何度も見たことあるもの」 「えー、ぼくは見たことないよ」 「いやいや!!! 秋にも桜は咲くんだよ。だって、ばあちゃんは、何度も見たことあるもの」 家に帰るまで、16回この話をした。 それから、秋は4回やってきて、小学5年生を終えようとしている。秋に

          秋にサクラ

          エッセイ「数学する友達と」

          「みかんが3こ、りんごが4こ あります。くだものは、あわせて なんこありますか」 こんな感じの問題文だったと思う。 「みかんが3こ、りんごが4こ!」 とある小学1年生の女の子は、嬉しそうにこう答えた。 発明王エジソンは、幼い頃、学校の先生に「1+1は、どうして2になるのか」質問をした。先生が、「1個の粘土と、1個の粘土があったら、粘土は2個あるでしょ」と答えたところ、「1個の粘土と、1個の粘土を混ぜたら、1個の粘土になるのではないか」と言って、譲らなかったという。 これら

          エッセイ「数学する友達と」

          エッセイ「絵を描く」

          普段、あまり話したことのなかった少年が、ノートに描いた一枚の絵を持ってきた。クジャクヤママユと、手のデッサンだった。上手だなあ、と思った。 きっと、もっと上手な人が描けば、いくらでももっと上手なデッサンを見ることはできるんだろうと思う。ただ、上手いとか、下手とか、そういうことじゃない。「少年の日の思い出」という一編の小説を授業で読んで、彼が絵を描いたこと、それを見せに来てくれたことが嬉しかった。彼の絵は、すてきな絵だった。 以前、自分の受け持った子に聞いたことがある。 「美

          エッセイ「絵を描く」

          エッセイ「一緒に走る」

          部活。校舎の外周を走るトレーニングは、定番の練習だ。自分が中学生だったころ、運動部はみんな走らされた。自分の意思で、走ったわけじゃない。まさしく、「走らされた」のだった。楽しくバドミントンをしたいだけの自分にとっては、「ガチ」の人たちだけが、一生懸命やる時間だった。 勤めているこの学校は、1周何メートルくらいなのだろう。暇なときは生徒に混ざって走る。個人的には、1周でギブアップしたいところではあるものの、アラサーとなり、思いの外、走れなくなっている事実に、走らなくてはなあ、

          エッセイ「一緒に走る」

          水平線の夜

          夏の匂いはうだって、彼方、水平線から吹く潮風は、海沿いの家の蛇口を錆びつかせている。テトラポッドの上に座る女の子は、独りぼっちになったサワガニを右手の指に乗せた。てくてくと歩くカニの足がくすぐったくて、ちょっと笑うとえくぼができる。 退屈で、暑い……。 カニを岩場に戻してあげると、女の子は立ち上がった。カニは、テトラポッドの隙間に消えた。蛇口に吹き付けていた風は、翻って、水色のワンピースをはためかせる。夏の陽射しを全身に、大きく伸びをすると、女の子は、限界まで吸い込んだ息を勢

          水平線の夜

          故事成語物語「三十分の道のり」

          <選んだ故事成語> 杜撰 <選んだ故事成語の由来・意味> 宋の国の杜黙の撰する(作る)詩は、定型詩としての厳格な規則に合っていなかったことから、誤りが多いこと。また物事の粗雑なこと。 <物語> 杜撰な人だった。 大会の出場登録は忘れるし、帯は注文し忘れるし、事務から出禁くらうし。 まだ、中二だったユウタは、川越駅に着くと、師匠と二人で西口を出た。 「かばん、持ちますか」 「別にいいよ」 ユウタは、そっけなく断られた。 今日の演武会は、駅から二十分の姉妹道場でやる。 歩きタ

          故事成語物語「三十分の道のり」

          電話越しのあいつに

          ちょうど3年前の話になる。 受話器の向こうのあいつは、その日、6日前に13歳になった。 俺が電話をかけると、あいさつもそこそこに、「悲しいお知らせがあります」とあいつの方から言ってきた。「誕生日パーティ、なかった。プレゼントもケーキも」 そりゃ不運だったな、と笑ってやった。 しょうがないから、桃太郎を話してやることにした。 「聞きたいか?」 「別に聞きたくない」 断られたが、話し始めた。 緑の公衆電話の上に10円玉を山にした。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

          電話越しのあいつに

          Latter1「行方不明者」

          次話 Latter2「亡霊を追って」 記録によれば、裏山の桜は、二百年前にはすでに枯れていて、緑の広葉樹が広がる山の中腹、花を咲かせることはおろか、葉をつけることさえもない。あの巨大な桜の枯れ木は、そこだけ山が死んだかのように、ぽっかりとした穴となって佇む。 村の人間たちは、朽ちることもなく「生き続ける」枯れ木を不吉だとして、その桜を切り倒す計画を立てた。 「お前も行くか」 ヨウエイに突然声をかけられて、我に還った。 「何に」 「切り倒しだ」 なぜ? まず、そう思った。もう

          Latter1「行方不明者」