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自分の作品を、静かに読まれる時間の心細さ。自分が書いたものにコメントをもらう、その不安。逆の立場になったとき、自分は、その人の書いた言葉をどう読み、どんな言葉をかけたらよいのだろ… もっと読む
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故事成語物語「三十分の道のり」

<選んだ故事成語>
杜撰

<選んだ故事成語の由来・意味>
宋の国の杜黙の撰する(作る)詩は、定型詩としての厳格な規則に合っていなかったことから、誤りが多いこと。また物事の粗雑なこと。

<物語>
杜撰な人だった。
大会の出場登録は忘れるし、帯は注文し忘れるし、事務から出禁くらうし。
まだ、中二だったユウタは、川越駅に着くと、師匠と二人で西口を出た。
「かばん、持ちますか」
「別にいいよ」
ユウタ

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例文 星の花が降るころに 後日談「雨の後日談」

例文 星の花が降るころに 後日談「雨の後日談」

翌日は、雨だった。昇降口に置き忘れられた傘が目に入って、「相変わらずだな」と私は思った。その傘が、戸部君の傘だったから。
天気予報を見たお母さんにでも言われて、無理やり持たされたのだろう。戸部君は、雨が降り始める前に家にたどり着いただろうか。途中で降られて、濡れて帰っている方が、戸部君らしい気がする。
「なんかいいことあった?」
隣で靴を履き替えていた女子に聞かれた。
「別に」
知らぬ間に、顔がほ

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