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照魔機関(ショウマキカン)

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怪異による人的被害の対策を行う秘匿された捜査機関(照魔機関)に所属する捜査官——日暮逢と神無四辻。逢は原因不明の記憶障害を抱えているものの体に染みついた分析技術を駆使して、四辻は…
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#ホラー小説部門

照魔機関 第1話 ■■の巫女

照魔機関 第1話 ■■の巫女

あらすじ
 怪異による人的被害の対策を行う秘匿された捜査機関(照魔機関)に所属する捜査官——日暮逢と神無四辻。逢は原因不明の記憶障害を抱えているものの体に染みついた分析技術を駆使して、四辻は機関が収集した怪異の記録を元に推理を組み立て怪奇現象に挑む。
 派遣先で二人を待ち受けていたのは呪いを恐れて錯乱する村人、建物を泥で満たす怪異、行方不明者の遺体が天井からぶら下がる現象。断ち切れない因習、渦巻く

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照魔機関 第2話 保護施設の怪異

照魔機関 第2話 保護施設の怪異

第1話はこちら

10月14日 6時31分 北みとし山中「ウギャアアアア」

 山の中でキノコ狩りをしていた男性は手を止めた。甲高い叫び声が聞こえた気がして辺りを見回すも、紅葉した木々の隙間から朝日が差し込んでいるだけで人影はない。耳を澄ますも、鳥の声すら聞こえない。不気味なほど静かだと思った。

 男性は首を傾げ、視線を地面に戻した。

「ヒイイイイイイ」

「誰かいるのか!?」
 気の所為じゃ

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照魔機関 第3話1/2 神の目と死の穢れ

照魔機関 第3話1/2 神の目と死の穢れ

第1話はこちら

10月14日 北みとし山中 
「そろそろ村の境界ですね」
「今のところは異常なしだね。少し休憩しよう」

 逢は頷くと、リュックサックから飲み物を取り出して口に運んだ。その間も警戒を怠らず、視線を周りに這わせる事は忘れなかった。木々の間を吹き抜ける風は冷たいが、額に汗を滲ませた今は心地良い。陽の光に照らされた紅葉の天井は美しく、思わず気を緩めてしまいそうだった。

「ただの散策で

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照魔機関 第3話2/2 神の目と死の穢れ

照魔機関 第3話2/2 神の目と死の穢れ

第3話1/2はこちら

第1話はこちら

10月14日 みとし山 神の目前 四辻と逢が遺体の場所に戻る途中、機関の捜査員とすれ違った。現場近くの木に帽子を目印にくくり付けておいた事を伝えると、二人は山を登った。遺体の場所まで戻ると、四辻の予想通り、機関と警察の混合チームが遺体の周りで作業を行っていた。

「あ、あの……クワバラですよね?」
 振り向くと、緊張した面持ちの青年が立っていた。
「しょ、

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照魔機関 第4話 六敷商事泥足事象

照魔機関 第4話 六敷商事泥足事象

第1話はこちら

六敷商事泥足事象10月14日 10時45分 六敷商事

「あれ、今日少ないですね」

 聞きなれた声が聞こえ、夏目は作業の手を止めて顔を上げた。思った通り、他部署の手塚が書類の束を持ってデスクの横に立っていた。

「腕木君はトイレに行ってますよ。お腹を壊したみたいだけど、手塚君は大丈夫? 昨日二人で飲みに行ったって聞いたけど」

「俺は平気ですよ、鉄の胃腸を持ってるんで」
 腹を

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照魔機関 第5話 イレイザーの弊害

照魔機関 第5話 イレイザーの弊害

第1話はこちら

10月15日 取調室 橋爪と向かい合うように四辻は座り、逢は四辻の後ろに控えた。その他、機関の人間が二人、何かを警戒するように橋爪の後ろに立った。

「こんにちは、橋爪さん」
 四辻が微笑むと、橋爪は嫌そうな顔をした。
「またあなたか。たしか、刑事じゃないと言ってませんでした? どうしてここにいるんです?」

「僕の所属する機関には、警察機関と切っても切れない縁があるんです。明治

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照魔機関 第6話 天井下り事象 引継ぎ

照魔機関 第6話 天井下り事象 引継ぎ

第1話はこちら

「天井」「異界」で、照魔機関データベース内を検索します天井下《てんじょうくだり》(天井下り・天井下がり)——天井から落ちてくる怪異。

初動捜査(四辻と逢が支部に派遣される前日)
 10月13日 午前2時34分 みとし村にて 異常現象発生。
 被害者は錯乱状態で通報。
 約15分後、警察官2名が到着した。
 
 それを見た警察官達は、困惑した顔を被害者に向けた。
 しかし、説明を

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照魔機関 第7話 天井下り事象 捜査開始

照魔機関 第7話 天井下り事象 捜査開始

1話はこちら

10月16日 16時24分 天井下り事象 発生  先程まで逢と四辻は、最初に事象を目撃した被害者、大野茂が滞在しているホテルで話を聞いていた。その途中、協力関係にある警察官から事象が発生したと連絡があり、急遽みとし村へ向かう事になった。

「おみとしさまは、村の中に怪異が入り込むのを嫌うんですよね? 怪異と怪異を持ち込んだ人間を祟ると聞きます。あたし達、本当に入って大丈夫でしょうか

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照魔機関 第8話 天井下り事象 情報整理

照魔機関 第8話 天井下り事象 情報整理

第1話はこちら

情報整理 おみとしさま「外に出よう。田原さんの様子が気になる」
「田原さんですか? でも、ついさっき中島さんと遺体を運んでいきましたよ。別に何もおかしくは——」

 しかし玄関を出ると、逢は駆けだした。

「ぎいいいいいあああたすけぇいたいいやああ」

 中島と大野が、絶叫しながらのたうち回る田原を、どうにか取り押さえようとしていた。

 駆け寄って顔を覗き込むと、田原は焦点の合

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照魔機関 第9話1/2 天井下り事象 禍害降る家

照魔機関 第9話1/2 天井下り事象 禍害降る家


田原の証言 中島は遺体を町に運んでいった。遺体は町で機関に引き渡され、検死が進められることになっている。

 祖母を気にかけ、帰ろうとする田原を、四辻は思い出したように呼び止めた。

「すみません、田原さん。もう何点か確認することがありました」
「なんでしょう?」

「消えた遺体は、全員発見されていますか?」

「報告漏れの心配でしょうか? 今日発見した田畑さんも含め、消えた村人6人とそちらの捜

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照魔機関 第9話2/2 天井下り事象 禍害降る家

照魔機関 第9話2/2 天井下り事象 禍害降る家


異界天井と新しい仮説「おかえりなさい。異界の入口と遺体を見つけたんですか?」

「どちらも見つからなかった。でも、だからこそ分かったことがある」

 子供部屋に戻ってきた四辻は、埃まみれのマスクとゴーグルを外し、天井を眺めた。

「天井下り——妖怪の名を借りたこの事象。案外、的を射ているかもしれない。
 大昔、天井は異界視されていた。現在でも、天井裏というものは、普段見通す事のできない身近な異界

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照魔機関 第10話  辻のおみとしさま

照魔機関 第10話 辻のおみとしさま

大野家と空き家の間にある神の目まで来ると、
「逢さん、念のため離れていて。絶対に見ちゃ駄目だよ」
と、釘を刺した。

「四辻さんは大丈夫なんですか? 村に来た時、辻の前で失神しちゃったじゃないですか」
「さっき何とかなったから、今度も大丈夫」

 逢は頷くと、辻とは反対側の土手に歩いていった。
 駄目だと言われると、余計に気になってしまう。辻から意識を逸らす為、逢はノートを取り出した。捜査の進捗や

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照魔機関 第11話 アイは名前を書けない

照魔機関 第11話 アイは名前を書けない


当機関が有する桑原珠月についての記録
————閲覧中のページは、フィルターにより保護されています————【神無四辻 事象】
 当機関が初めて存在を確認した時、■■神は、守り神の■護が及ばぬ辻に顕現し、辻神を食らっていた。
 その食欲たるや凄まじく、中世以前は朝に■■、夜には三百の■■■■を飲干ししていたと推測される。

 その凶暴さから、■■■辻神と混同され■■■■、■■辟邪■に描か■■■■と同

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照魔機関 第12話 囲

照魔機関 第12話 囲



【みとし村事象についての報告】————フィルターの一部解除に成功しました————
(1939年6月2日)
 みとし村の神:おみとしさま
 特徴:村人を見ている

 みとし村には【囲】という奇妙な風習があり、村人は死後、おみとしさまになってもそれを続けている。

 囲は、1年ごとに村人が投票で1人を選び、迫害するというもの。

 迫害の対象者が出た家は、次の投票が終わるまでの1年間、対象者を座敷

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