『忍ぶ川』(熊井啓監督. 1972年)評
原作は三浦哲郎さんの芥川賞作品。既にカラーワイドが普通の時代に、あえて白黒スタンダードサイズでのフィルム撮影にこだわった意図は、モンタージュされる文章と、海鳥の飛びかう映像との調和であろうか。それとも、後半の津軽の雪の白さを撮るためのものか。いずれにせよ雪の津軽の美しさは、豊田四郎監督の名作『雪国』を越えるだろう。当たり前のことだが、映画は文字ではなく映像と音の芸術である。ロングショットを重ね合わせ、緩やかに女優のクローズアップをのぞかせる、いわば日本映画の伝統にのっとった最