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思春期エッセイ集

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思春期時代の短編エッセイ。 ・思春期草創期の幼稚園時代 ・思春期早期の小学校低学年時代 ・思春期前期の小学校高学年時代 ・思春期中期の中学校時代 ・思春期後期の高校時代までを描…
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#部活の思い出

消えた「もみあげ」を描く

消えた「もみあげ」を描く

初対面の人間に、特技を聞かれたときに困ってしまうのは「自慢しすぎていないか」、あるいは「格好つけすぎていないか」という要素を考えすぎてしまうからだ。

その点、僕は特技を聞かれれば、「フラフープを回すことが得意です」とか、「自分でセルフ散髪することが得意です」と即答することができる。フラフープを回すことより、「ギターが弾ける」とか「カラオケ」、「リフティング」とかの方が断然格好いいのだけれども、僕

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髪は短めで白髪です

髪は短めで白髪です

昔から若白髪に悩んできた。現在、22歳の僕の頭に白く光る髪の毛はその当時と比べるとかなり減ったが、小学生の高学年から中学生のときにかけてはその存在が目立った。

特に後頭部にその白髪は顕著に見られ、「若白髪郡」ともいえるほどの量があった。通常、青春というのは恋や友情で悩むのだろうが、僕の場合は白髪を起点にそれらに悩んできた。

「あーA子ちゃんに白髪見られて嫌われたくないなー」

「あーBのやつ、

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青春を射る

青春を射る

弓を引く時、目には見えない青々とした孤独に潰されそうになる。

よく、弓を引くことを「自分との戦い」とかいう格好のいい表現で言うことがあるが、そうやって言えるのはその領域まで足を踏み出せた者だけだ。高校三年間だけ弓を握った僕なんて、そんな領域を知るはずもない。

二年生の秋のことだ。僕の弓道に対する熱は、気温と共に下がっていった。独り弓を引くことほど自分と向き合う時間はない。思春期真っ只中だ。「僕

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ファインプレー、今度はあなたの番。

ファインプレー、今度はあなたの番。

新しいグローブを買いに行く時のワクワクする気持ちといったら、それはそれは格別なものだった。メーカー、色、ウェブと呼ばれる親指と人差し指の間にある部分のデザインを何にするか。あるいは紐の色を何にしようか。

ただ、一番重要かつ悩みだったのはグローブの大きさだった。

野球はピッチャー用・キャッチャー用のミット、ファースト用のミット、内野用、外野用と大きく5種類に分けられる。内野用といっても、ショート

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弓を引いてよかったと思う、たった一つのこと

弓を引いてよかったと思う、たった一つのこと

 「高校時代、弓道部だったの?なんか集中力がつきそうだね。」なんて何度言われたことやら。確かに、的を見て弓を引いている最中は集中するのかもしれないけれど、そんなことをいったら野球でピッチャーがキャッチャーミットに投げ込むのと一緒だ。あるいはサッカーのPKとか、バスケのフリースローとか。なんなら、弓道は一回あたり四本しか射ないから、一試合で何百球と投げる投手と比べたら、弓道は集中力を競うスポーツでは

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