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21グラムの想いにふたをした。#ショートショート

想いにふたをするなって言われたけど、

ぼくはとある骨董屋さんで「想いのふた」を

買ってみた。

その骨董屋さんは、「omoi de」っていう

お店だった。

想い出、なのか。

って思っていたら隣の省ちゃんが

重いで、ってつぶやいた。

関西人やなぁ。

体重をはかっても、体脂肪率はわかるけど。

心の重さは個別にはわからないよねって

思ったら、省ちゃんと一緒にみた映画を

思い出した。

でも、ひとは死んでしまったら、

みんな21グラムだけ軽くなるという。

それが、魂の重さだっていう人も

いるけれど。

ほんとうのところはよくわからない。

省ちゃんも死んでしまったら21グラム

軽くなるん?

ぼくは聞いてみる。

その21グラムが俺にもあったらの話

やでって。

やでって、声がひっそりとしたお店の中に

響いていた。

それは、謙遜か、照れなのか、自虐か、甘えか。

なんかようわからんリアクションだった。

ふたりはいっつもそんな、答えのない

話ばかりしている。

充足しているというのか、この状態。

これは充足?

って尋ねようとしたけど、聞いてしまったら

もうそれは充足じゃなくなるので

そっと黙っておいた。

ぼくらは、「想いのふた」をそれぞれ

買ってみた。

省ちゃんの「想いのふた」のデザインは

水玉だった。

ぼくのはストライプにした。

それを包んでもらって、ぼくらは背中合わせで

じぶんの心のあたりに装着した。

心にふたをつけてみたら、今までは

だらりと、こぼれてしまいそうだった

想いの輪郭がみえるようだった。

想いにふたをしてはいけないと

巷ではいうけれど。

ふたがあったほうが、みえるものも

あるんだなって心のなかでつぶやいたら

たちまちその思いがふたつきの器の

なかに収まった。

「心の欠片たち」を、みていると時々

光った。

ぼくは、省ちゃんの想いの欠片を

みてみたいなって思ったけど。

さっきからじっと省ちゃんは、静かに

それをみているようなそんな気配だけが

背中のあたりに漂っていたので、悲しく

ないといいのになって黙っていたら。

その凪のような思いも、たちまちぼくの

心の器の中に吸い込まれていくのが

わかった。


うまく生きても そうじゃなくても たましいの
重さは変わらない そう信じたい ふたり生きてる



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