ふたりで、元気になろうと思った。
この人、好きだってなるときって
何？
たぶん、その人をみているうちに元気に
なってるって実感するときかもしれないって
思った。
年末は家事からなんから山積みで色々ありまして
みられなかったので一週間前ぐらいに
やっとみられたドラマ『岸辺露伴は動かない』。
これは漫画家の荒木飛呂彦の
『岸辺露伴は叫ばない 短編小説集』の実写版で。
たまらなかった。
わたしは荒木飛呂彦の熱心な読者ではないので
あれだけど。
マンガを実写するってことは、こういうことだよって
それを体感させてくれたのがこの人だった。
なんなんだ、森山未來という人は。
知っていたよ、知っていたけど。
どうしようって思うぐらい、彼の動きに魅了された。
漫画家、志士十五を演じる森山未來は、使用禁止された
言葉「くしゃがら」に憑りつかれてしまい、昼夜を問わず
くしゃがら探しに没入してしまう。
辞書のページの隅までを探しつくそうとする。
そして魂のぬけがらになっても、なおその言葉の尻尾を
影を追い求めるのだが。
彼の動きは、一分たりともじっとしていない。
エネルギーに満ちたマンガのコマを見ている時って、
こんな感じだ。
絶えず何かが動いている。
マンガの事は詳しくないけど、彼の動きを見ていたら
わたしに何が起こったかっていうと、
この人好き。
この人好きって思える時って元気になってるなって
気づいた。
前から気になっていたけど。
前見た時も好きやったって。
前見た舞台を想いだしていた。
その時見た舞台には、背もたれのあるやさしい
革の風合いが伝わってきそうな、誰も座っていない
ロッキングチェアが舞台の上で揺れていた。
その隣では小刻みに割れた筋肉を持つ髪を黄色く
染めた人が踊っている。
それが森山未來だったと思う。
まぎれもなく、踊ってるんだなって思った時、ふと彼の
隣が気になってそっちに目をやると、ゆっくりとした
リズムで椅子がゆれていた。
あそこに飛び乗れば、すこし眠くなりそう。
眠れるかもっていうそんなリズムばかりを追っていたら、
いつのまにかそれをじぶんの身体が憶えてしまって、
憶えてしまったものを忘れないように、そっと刻んだまま
踊る森山未來に視線を移した。
彼は、手をぶらぶらんとさせて心地よいリズムで揺れていた。
あの椅子の揺らぎと彼のゆらぎが、おなじ質のように
みえてくるそんな踊り。
終わらない揺れ。
彼を見て、椅子を見て。チクタク両目を動かして、
やっとわたしは、彼とあのロッキングチェアは共演
しているのだと気づいた。
互いのリズムをわけあうように、何かを演じている
ことに気づいた。
ちょっとセクシャルだった。
なんだかそこにある空気と溶け合ってからだの輪郭が
そこにひとつになってるような動き。
日々の夜のまんなかで、ただただゆれていると
ちょっとだけ、あいがっちゅーの気分に
なりそうだった。
なにを、がっちゅうしたのかは、
わからなかったけど、とにかくそういう気分。
そしてアーカイブスで映像を見ていた。
舞踏家の大野一雄が、インタビューに答えて、
いらっしゃった。
元気が踊りのテーマだという彼は、
元気ってひとりでなれるものじゃないですよ。
って、おっしゃっていて。
うれしいことに出会うと、突然まいっていた身体がはつらつと
してくるらしい。
＜自分の中の気と、外の気がうまく巡り合った時に
元気になるし。身体を開いていると、元気の量が
多くなるんです＞
これだって思った。
元気がなかったわたしに元気がでそうなことしようって
彼に言われて、わたしは祖父がよくしてくれていた
足の上ダンスをリクエストした。
彼の甲の上に裸足で乗って、右に左に音楽に
あわせてゆれる。
自分の身体が宙に浮いているようで。
身体から気持ちとかがすっかり抜けて、ゆだねている
ことの気持ちよさを感じていた。
少しめをつむって、身体を揺らしていると、身体とそこら
あたりの空気の隙間を縫って幸福感が漂ってきた。
わたしは彼の元気の気をすこしわけてもらった。
誰かの元気の気を感じると、元気になるってことを
あの日わたしは知ったのだ。
だから年老いても踊り続けた大野一雄の肉体から
絞り出すように出た元気という言葉は、わたしが昔
知っていた感覚であることを呼び覚ましてくれていた。
元気ってやっぱりひとりでなってもつまらない。
ふたりで元気になろうねって思ってくれた彼に
ありがとうと言いたかった。
彼が好きだった映画のキャッチフレーズを彼に贈りたい。
おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。
くつひもを 結ぶ時の せなかの曲線
ひだりあし みぎよこどっち 未明にゆれて
いつも、笑える方向を目指しています！ 面白いもの書いてゆきますね😊