見出し画像

アリバイ横丁駆け抜けていたラッシュアワー。ちょっとウルって。

朝っていやですよね。なんかテンパっていますよね。
どうしてなんだろうって、むかしっから思ったりしてます。
他校の中学生と一緒になったりしていた、通学の電車の中
だって。

前は向いているけど、斜め四十七度くらいの角度。
若いってぜんぜんうれしくないって表情で歩いていたりする。
でもオジサン達に言わせるとそれが若いっていうことらしいんだ
けれど。今となっては、あれそうだったんだねみたいな感じですが。

平日の雑踏とか満員電車の中って殺伐としてみんな、知らねーよ
カンけーねよみたいな雰囲気。
みんな仲良くした方がいいとかっていう話じゃなくて。
いや、仲良きことは良きことですが。
こうやって毎日馴染んだ電車でさえ、敵地に乗り込むみたいな
風情に厭世的な空気がじぶんの口から鼻から、瞬く間に致死量
近くまで入り込んでしまうようで、いやだっていうか、
なんとかしろっていうか。

昔通学してた頃を思い出してたら、社会人1年生になった頃の
雑踏も思いだしたりしていた。

いつだったか、5年位前。え? アリバイ横丁ってもうないん?
なくなってしまったん? なんでなんでってほんのり
ショックだった。

大阪で暮らしていたのは、もうずいぶん昔だから。
御堂筋線の梅田駅。阪神デパート寄りで降りて、改札でて
右に歩くと、それはあった。

そこには、行ってないのにそこに行って買ってきたよ
みたいな、確かなブツのアリバイをこしらえる場所。

この間の出張でさ、これ土産買ってきたみたいな。
利用範囲、使途などはそれぞれだと思うんですが。
全国四十か所以上の物産品が所狭しと並んでる。
それがアリバイ横丁。

大阪ってネーミングがね、通称とはいえ、すごすぎる。
正直すぎる、もっとコーティングした方がええよ
みたいな。でもそういうとこ、好きですけどね。

記憶では朝からおばちゃんたちが、そのちいさな何坪
ぐらいかのちいさな店のシャッターを、がらがらがらって、
シャッター棒みたいなんで開けていて。
いつか仕事にあぶれたら、おばちゃんに頼み込んでみよかって。

その頃わたしは、あまり会社にも馴染めなかったし、
上下関係もおそろしくほんとうに、やりたいことじゃ
ないかもしれないと。うつうつ悩んでいた。

朝のラッシュアワーにアリバイ横丁勤務のおばちゃん
見かける度、いっつも、一人用の椅子に腰かけて店番
しているのを眺めつつ、本気で思い描いていた。
わたしがあの椅子に座っているっていう図はどうだろう?
おばちゃんと並んでそこにいたら、狭いかもしれない
けれどって。

ちょっとだけ、そこに思い出があって。
アリバイ横丁にじゃなくて。その先の地下街。

画像1

朝の8時30分ごろ。
アリバイ横丁ではちょっと、軽くランニングぐらいの感じで
ランニングをします。そして、
横丁のドン付きを左に曲がると、ドーチカになってて。
ドーチカ、堂島地下街。そこをですね、まぁ死ぬ気で、
全速力するわけです。

なんで?
なんでって。遅刻したらチーフのみゆき姐さんに口で
どつかれるか、もしくは罰金とられるからです。
いやなんです。薄給の見習いコピーライターやのに、
そこから天引きの嵐なんてとても、いやなので。
だから、遅刻しないように、too late って言われないように。
毎日走ることにしたわけです。

ドーチカの一直線勝負に賭けて。
なにがなんでも、走るぞ、走らんとあんた終わるぞみたいな
感じで走るためには、まず声かけが大事でして。

声かけ。

つまり、朝の出勤ご苦労様ですの皆様方は、これから朝、
デスクに着いたら、まずあれしてこれして朝一でアポ取っとかんとな、
とかの段取りなんかを頭ん中で、シミュレーションしてるわけで。
ぜったいこの時間は皆様方、死守したいわけです。
すっごっくわかります。
誰にも譲れない、譲らせない、邪魔するもんがおったら、
ただじゃ置かんぞ、みたいな殺気が漲っていますから。

そこを、すこし右なり左なりにお寄り頂く為に、すみません!
って、声をだします。恥ずかしいですけれど、声出しです。

なに?
みたいな視線をばんばん浴びるのを承知で、口角挙げてにこやかに
すみません! を背後から叫び、ようやっと、その皆様の地下街を
少しだけ走り抜ける、わたしのためにどいていただくわけです。

それが2.3日経った頃、わたしがドタドタとシューズのソールを
鳴らし、鞄に入ってるカンのペンケースを、カチャカチャと
轟かせると、すみません! って言わなくても、真ん中に
いらした方は、決められたかのように右に左にお寄りになって。
道を開けてくださいました。

え? モーゼが海を割ったのかと思うほど。

それが幾日も続いて、朝の走り込みのお陰で、遅刻することなく
みゆきお姐さんに叱られることもなく、滞りなく出社する
ことは、きわめてスムーズでした。

会社に着いてからじゃない、通勤から仕事はもう始まってんねん

みたいなそんな朝の黄金の時間を。
今思うと、そんなにまでして協力的だったなんて。
のちのち。近くのオフィスコピーライターの専門学校
「S伝K議」の事務局にお勤めの渡辺さん(仮名)が、
わたしが8時半頃にそこを通らなかったその日も、
モーゼが海を割ってたで、ってご報告を受けました。

もうなんていうか、年季の入った勤労者の方達の朝のルーティン
ってすごすぎるって。

リスペクトな思いと一緒に、何もかもうまくいっていない日々
だったので、ちょっと、ウルってしまって。

今頃になって、あの時、朝のスーパード級のラッシュアワーの
ドーチカを歩いていらっしゃったおじさまおばさま、おねえさま、
おにいさま、おかあさま、お子達、ほんとうにありがとうございます

複雑な思いで雑踏を歩かなければいけない今。
ちょっと、あの頃の雑踏を思い出してしまって。
アリバイ横丁はとうの昔になくなるし、朝の通勤風景もマスクやし。
記憶が渦となって駆け巡りつつ、感謝の思い出マックスです。

この記事が参加している募集

スキしてみて

いつも、笑える方向を目指しています! 面白いもの書いてゆきますね😊