写真って苦手で。無理に笑おうとしたら、彼がかけてくれた言葉。
写真を撮られるのが今も苦手で。
たまに集合写真を撮らなければいけない時
なども、この時間が嫌だなって思ってる。
どの面で笑えばいいのかわからない。
笑ってくださいって写真館の方が言う
けれど。
なんもないのに笑えない。
役者じゃないし。
幼稚園の時からそれが嫌だったみたいで、
入園して早々の写真撮影の時にそこの場所から
逃げたことがあった。
後でみんなにすごく叱られたけど。
自由参加だったらよかったのにって思ったり
していた。
なんでこういろいろ不得手なこと多いんだろう。
そして幼稚園から十数年経って好きな人が
出来た時、写真を撮ろうってなった。
写真とかあまり好きじゃない嫌、
撮るのは好きだけどって言ったら
そうなん?
ってなったけど。
やっぱり撮ろうよっていう流れになって。
写真学科の男の子だったから本格的な
カメラを持っていてそういうので
撮られるの緊張するよっていって、
わたしはファインダーの前で無理に笑った。
写真撮られる時はみんな笑うよねって。
こういう時はこういう笑い方であって
いるのかなって感じで。
無理くりに笑ったら。
そういうのいらんよって彼が言った。
それってふだんの栞ちゃん(仮名)じゃ
ないやんって言われて。
どんな顔したらいいん?
って言ったら、
どんな顔っていつもの顔やん
って言ったから。
いつもの顏って自分ではようわからん。
その時いつもの顔を見ているのは
持ち主であるわたしじゃなくて
福田君(本名)だよねって思って
人とふかくつきあうと相手の方が
わたしの顔を知ることになるんだと
あほみたいにびっくりした。
そしてどんな顔してる?
って確かめたら。
つまらなさそうな顔してるやん
ってたたみかけた。
そういうつまらなさそうなほんまの
顏が撮りたいって言われて。
ふつうはそういうの喜ばないのかも
しれないけれど。
わたしはうれしかった。
つまらなさそうな顔はわたしの素の顏で
そんなに社交よろしく微笑んだりできないので
福田君(本名)の前ではわたしあまり無理して
ないんやなって思ったから。
瞬間的にその言葉を聞いた時この人とは
ずっと付き合っていけそうな
予感がしていた。
結果8年付き合ったけど。
その後結婚しなかったけど、わたしが
色濃く他人といちばん会話したのは彼だと
思う。
そしてこうやって何か書こうとした時に
彼と話した他愛ない言葉をちょくちょく
思いだしてしまう。
つまらなさそうな顔してるやん
って言った後すごく彼が声をださずに
笑ったのだ。
彼は微笑み上手だった。
営業マンになれるわってからかったほど。
社交べたと社交上手なふたりだった。
あの言葉を思いだす時、彼のあほやなぁって
感じのやらかい表情と一緒にいつも思い
だしてしまう。
会話って記憶の中ではちゃんと生きている
んだなってちょっと懐かしい。
いつの日も わらえない顔で わらってる
それでもね パッションがないわけじゃ ないからね