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LAST NIGHTの訳が、まるで詩のようだった。#クリスマス金曜トワイライト文学賞、読み手賞受賞しました。

夕方の電車の中って、みんなそれぞれにいろいろあって

それなりに今日も終わって行こうとしている感じが

そこはかとなく漂っている。

ちょっとだけ、しんどい仕事を終えて。

山梨から帰ってくる最後の帰路。

家にたどり着くまでの最後の交通機関のバスの

デジタル広告を見ていたら。

英語塾の広告が文字だけで出て来た。

この季節になるとよく聞く♬LASTCHRISTMASですが。

あの名曲のタイトルのLASTは、去年のクリスマスと

訳してもいいですが、

ふたりにとってもう2度とないラストなので

最後のクリスマスと訳すこともできます。って

書いてあった。

あ、去年のクリスマスだってずっと長年思ってたよって

思いつつ

まだその広告は続いていて。

ではLASTNIGHTは、どうですか。って

問いかけられた。

昨晩だよねって心のなかで呟いた。

LASTNIGHTは、昨晩ですが。

わたし油断しながら疲れた足をぶらぶらさせながら

ぼんやり広告眺めてた。

昨晩でいいやん。LASTNIGHTってそうやん。

って思っていたら。

LASTは昨日の晩なので昨晩でもあるのですが、

最後の夜とも訳せます。

と、のたもうた。

なぜならLASTNIGHTは、わたしたちがもう2度と

経験することができない最後の夜だからです。

おわり。

みたいな感じでその広告は終わった。

でも、わたしの中ではそこから何かが始まっていた。

みんな幾つもの夜を越えて、いまここにいる。

おはようって言ったあの人とおやすみって告げた

あのひとのことを思いながらここにいることのふしぎ。

わたしは、今週のはじめあたりの日曜日。

小説を久しぶりに書いていた。

#クリスマス金曜トワイライト  文学賞 に応募するために。

もともとある池松潤さんの原作をリライトするというもの。

この作品は広告の仕事をしている彼と、

書道の先生をしている彼女のせつない駅での

別れを描いたものだった。

好きなのにすれちがう。

すれ違ってしまったのが、どこだったのかも、

わからないぐらい。

彼は田舎に帰ってしまうことを手紙で

告げられた彼女を引き留めようと必死に駅を走る。

そしてふたりは、ドア越しに見る互いの姿を目に

焼き付けるようにして終わりを迎える。

彼の手の中にはちいさな手紙が残されたまま。

<あなたが好きです。大好きです>と綴られた手紙。

別れがせつなかった。

この小説を目で追いながら

せつないって、身を切られるような

名付けられない場所が感じる体感なのだと

懐かしい痛みを覚えていた。

この賞は完結してしまったこの作品を、あなたの手で

リライトしてくださいというものだった。

そして、締め切り時間も迫っているのに

夢中になって書いていた。

あのLASTNIGHTの和訳の文字をみかけたのはこれを

書いてしまった後だった。

その時、原作のあのふたりはもう戻ることのできない

LASTNIGHTを生きてしまったのだと、気づいた。

気づいたのが遅すぎた。

わたしは今回の賞で、思いがけなく読み手賞を受賞

させていただくのだれど。

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ほんとうに感謝しています。

これはスキして頂いた数に贈られる賞です。

でもほんとうは、あれはリライトではなくて

講評していただいて気づいたけれど

あれはアフターストーリーだったのだ。

彼らの後日譚になってしまっていた。

今になって、あのふたりが過ごしたあの

LASTNIGHTをかみ砕いて心を尽くして書いても

よかったのかもしれないとちょっと反省しています。

物語を書くと、しばらく自分の中で彼らが生きている。

恋の物語を久しぶりに書いて、わたしは物語の中の

潤がすごく好きになっていた。

そして、潤。

あなたにいつかどこかでこれを読んでほしいという

想いだけで書いてしまっていた。

倒錯しているね。

でも、その時間はとても甘美で。

今まで書いてきた中でそんな時間を味わったのは

これがはじめてでした。

リライトじゃないのに賞まで頂いて、書いている間は至福で。

申し訳ないぐらいです。

そしてスキしていただいたみなさまありがとうございました。

ほんとうにありがとうございました。

またいつかちゃんとリライトっていうことに目をそらさない

そんな作品を書けたらいいなって思ってます。

池松潤さん、企画を立ち上げて頂きありがとうございます。

そして小説をお読みいただいた仲高宏さん、クニミユキさん

イベントを運営して頂いたみなさまほんとうに

ありがとうございました。

そして湖嶋いてらさん、大賞受賞おめでとうございます。

またゆっくり作品を拝読したいと思っています。

ただいちど ふれていた指 まざまざと夢
耳元で 告げられた詩を 風にうばわれ







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