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父の手紙は捨てたのに、あの言葉は覚えてる。

noteでは、もう書きたいことはすべて

書いてしまったような気がいつもする。

じぶんの心の中をのぞきまくっていると

内省ばかり積みあがって行って、

小学校のホームルームの時間みたいに

反省タイムみたいでつまらない。

そしてなぜか今日は日曜日だからか

敬老の日が明日だからかわからない

けれど。

父のことを思い出していた。

それは懐かしくとかやわらかくとか

ではなくて。

すこしだけ棘っぽい感情も含んでいた

感じで思い出していた。

高校の頃から、おとなの事情があって

父とは離ればなれで暮していたけれど。

ことあるごとに、こう生きろ、この本を

よんでおけみたいな手紙が届いた。

そこには長いお小言が書かれていた。

読むとつらいので、その後その手紙は、

家族が再びこじれそうになった時

ほとんど処分してしまった。

傷口に塩をぬってタバスコかけたみたいな

そんな心の状態から逃れたくて。

でも一通だけは置いてある。

その手紙をもらった後、電話がかかってきた。

昔、わたしが拙い歌集を(紙の本)、出版した

ことがあって、父が読んだよって電話を

くれた。

やっと形になったんやなって喜んでいて、

まぁねって言いながら、長すぎだよね

と思いながらも父の声を聞いていた。

おめでとうを言いながらも、でもなって

何か言いたげだった。

なに?

おめでとうなんやけど、気になるねんって

父は口ごもりながら話す。

こういう歌みててなって電話口でわたしの

はじめての本のページをめくる音がする。

溜息といっしょに聞こえて来たつたない

短歌のいくつか。

両耳を押さえて床を蹴る 破れかぶれってこんなステップでいいの?
噛みすぎたガムはやがて存在さえも溶かしてゆくでしょう
ポケットに住むビスケッツ やがてこっぱみじんになってゆくことを知ってるさ

この幾つかの歌を読んだ時にな、

パパはなんか悲しかったって。

なんていうか、○○子(私)が冷酷で冷徹な

視線を持ちすぎていることを、パパが

そうさせてしまったんやないかって

つらかったんやって言った。

ちょっと知らんがなって想いもあった。

そんなに影響受けててたまるかって

想いも正直あった。

ああいう家族のあれこれがわたしを

揺らがせていたなんて信じたくも

なかった。

でも、一方でどう読もうと勝手だけど、

おまえは冷たいんやなって責められてる

みたいで、落ち込みそうだった。

あんなに嫌いだった父にまで好かれようと

していたのかと。

誰がいやとかじゃなくてわたしがわたしを

イヤになりそうな瞬間だった。

そして、ビスケッツの歌はわたしにとって

それほど含みのある歌でも比喩でもなかった

けれど。

父は、自分がばらばらにしてしまった家族の

ことを思ってわたしに書かかせてしまった

と感じたんやと言った。

わたしは、そんな残酷なことは書かない。

書くほどの覚悟もない。

後に物を書くという仕事を生業にしている

人と知り合った時も、意地悪な視線って

ないと書けないのよそれ大事なのよって

聞かされた。

あってるやんか。

だからそういう視線でいいんやって

自分を納得させようともしていた。

その時、父にそう思われたことに多少の

心の淀みが生じたのも、もしかしたら

どこかでやさしい子だと思われたかった

自分の心を覗いてしまったみたいで

嫌だったのかもしれない。

そして今の所、毎日書いているnote

だけど。

時々、じぶんのことをどこまで開示して

どこまで言わなくていいのかが、

わからなくなることがある。

そしてまた父とのことを書いているじゃ

ないかって。

父からの手紙は捨てたというのに、父が

書いた手紙の文面は覚えていたりする

ということは、言葉って心に降り積もって

いくものなのだと思う。

精神科医で作詞家のきたやまおさむさんが

おっしゃっていたことがずっと、気に

なっている。

<でも、こころって、まだまだことばになることを
待っていると思う>

目にしたときも、いま、こうして書き写して

いるときも、もやもやのもやが晴れたような、

あたらしい気持ちになる。



こころの奥底を文字に翻訳したりすることに、

引け目を感じていたのに急に、

かれら(言葉)の居場所の風通しがよくなった

ような。

すーすーとした感触がなんとなく伝わって

くる。

ことばを紡ぐというけれど、そのことばのふたを

そっと開けるとそこにあらわれるのは、こころの

輪郭を縫い取ったような形なのかもしれないと、

あたらしい場所にゆきついた気持ちになって

くる。

まだふわふわとした輪郭線しかないこころを、

ちゃんとみて、名づけることこそが、だいじ

なんだときたやまさんの言葉のつらなりを

眺めながら、つらつらとそんなことを

思っていた。


あのことば こころのどこかに 刺さったままで
月満ちて ひとりしずかに 棘をぬくとき

 

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