「連体修飾格の話だね」と言ってカッコつける
尋ねる人: 内川美彩
今さら聞けない国語の疑問です。
正しい助詞の使い方について教えていただきたいのです。
2つの文章は、どちらも意味は同じです。
でも、書くときにいつも手が止まってしまいます。「の」と「が」、どっちが正しい使い方なのだろう……と。
「おらが村」「おらの村」で考えてみると、なんとなく前者のほうが好きなのですが、果たしてそんなフンワリとした理由でつかい分けてもいいものかどうか……。
恥をしのんで聞きます。
明確なルールは、存在するのでしょうか?
答える人: 元木哲三
ははあ、これは簡単に答えられます。「主格」と「連体修飾格」の話ですね。
なんか、こう言うと、ものすごく難しい話のように聞こえるので、「頭が良さそう」と思われたい人は「連体修飾格」という言葉を覚えてください。
全然、覚えなくてもいいし、文章の技術にはほとんど影響はしないと思うけど、一応、この連体修飾格とは何か、というと、ぼくたちがよくつかっている「の」のことです。じゃあ、「の」でいいじゃん、と言われたら、ええと答えるしかない。例を出せば、
こんなふうに、上の品詞を体言に結びつける「の」を連体修飾格と言います。
という順番ですね。
英語っぽい言い方になるかもしれないし、同じとは言えないのだろうけど「所有格」と考えてもいいんじゃないか、とも思います。「my」は「私の」、「your」は「あなたの」と訳しましたよね。この「の」も連体修飾格。普通、ぼくたちは「の」を、この役割で認識しています。
「が」が連体修飾格になってしまう
その上で「おらが村」を考えてみましょう。
普通、「が」は主格でしょ。「私が総理大臣です」「君が悪い」とかね。
ところが「おらが村」と言うとき、この「が」は連体修飾格になっているんですね。
古い言い方で、「君が代」とか「人間万事塞翁が馬」とかに残っている。これらは「の」と読み替えたほうが意味はわかりやすい。
霞ヶ関とか、千鳥ヶ淵とか、あるいは「なんとかヶ丘」とか言うのも、「ヶ」つまり「が」が連体修飾格として使われているケースです。古い表現だから、地名に残っているとも言えますよね。となれば、「〜〜ヶ浜」より「〜〜の浜」のほうが、新しい土地、新しい名前なのかな、とか想像できるわけです。
あと、やっぱり福岡出身者としては、「梅ヶ枝餅」を忘れて欲しくないものです。「我が福岡」の名物です。
主格の「の」を使ってみよう
それで、今度は反対に「の」が主格になることがある。たとえば「私の書いた文章」といったとき、これは「私が書いた文章」と意味は同じになりますよね。
連体修飾格が
という順番であるのに対して、主格の「の」として使われている場合は
の順番になることが多い。「大好きな人の選んだ曲」。うん、意味はわかる。でも、「大好きな人が選んだ曲」のほうが、ぼくにはしっくりきます。一方で、あなたが例に挙げた
だと、ぼくは「私の〜」のほうが好きだ。これは個人の好悪の感覚で決めていいと思います。
他にも「の」が別の格として使われることがあるけど、まあ、その話はいいでしょう。
まとめると、「が」と「の」は、しばしば入れ替えることができる。「が」が主格ではなく、連体修飾格として使われる場合は、「古語的言い回し」という印象が出る。
一方、「の」が主格になっている文章は多いが、これは「が」にしたとしても、印象の変化がほとんどないので、好みで使い分けていいのではないか。ぼく個人としては、こういう見解です。
※「福岡Webライティング道場」では、このような話題をおもしろく、深く追求しています。
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