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1日に1万字書けるライターがもっと速く原稿を執筆する方法

「文章の学校」へようこそ。ここでは、文章の学校の主宰である元木哲三が、言葉の力を磨きたい迷える学生からの質問にお答えします。

今回は、文章を書くスピードに関する質問です。


尋ねる人:内川 美彩

あれは、20歳の頃でした。

初めて150字の原稿を書いたのです。

私は当時「自分は文章がうまいほうだ」と思っていましたから、こんなの朝飯前だと余裕でパソコンの前に座りました。

結果。

書き上げるのに、1日かかりました。

修正を含めると、3日。“たった”150字に、です。

あのとき、ガラガラと崩れていった自信のかけらを拾い集めるのに長い時間がかかりました。

10年経った今は、150字なら10分あれば推敲まで済ませられます。

しかし、1万字ともなるとほぼ1日がかり。

もっともっと速く書けるようになりたい。

「タイピングは誰よりも速いのにねえ」なんて意地悪を、もう言われたくない!

(誰が言っているか? それは内緒です)

私が思うに、速く書けない理由は

  • 書きながら構造を考えているから迷う

  • 集中力が散漫


の2点だとふんでいます。

あぁ「わかってるじゃん」なんて言わないでください。

速く書けるコツを、知りたいのです。

部活動みたいに「鍛錬を積むしかない」のでしょうか。


答える人: 元木哲三

あなたの書いた過去の話、ぼくのほうはすっかり忘れていましたが、それにしても、いったい何度、原稿を突き返したんでしょうかね。

あなたも文章を教える側になったのでわかると思うけど、根気のいることなんですよ、150字に3日も付き合うのは。

さて、1日に1万字が書けるとしたら、ライターとして一人前と言ってじゃないかな。そんなに無理をしなくても(つまり適度に休日を楽しんだりしながら)、2週間ほどで書籍を1冊書くことができます。

もちろん、スピードだけでなく、クオリティも大切なのですが、実は書くスピードが速い人の原稿のほうが、質が高い場合がほとんどなので、「1日1万字書ける」というだけで、だいたいどれくらいの実力かがわかる。

だから編集者から「1日にどれくらい書けますか」と尋ねられると、「この人、わかってるな」と密かに思います。「1万5000字」と言いたいし、まあ、それくらいは可能なんだけど、あんまり期待されると後が怖いので、「1万字くらいですかね」と答えることにしています。

いずれにせよ、1日1万字、鍛錬によってもっと速度は高まりますが、合格ラインは突破したと考えていい。おめでとうございます。10年続けると、やっぱりいいことがあるんですね。

プロのライターはスピードが命

さて、質問の「文章を速く書くにはどうしたらいいか」なんですが、まずは「文章を速く書けるようになるんだ」と強く決心することです。

なんて答えると、「あまりにも当たり前のことを!」と怒られそうだけど、ここはとても大切。なぜなら、多くの人が、速く書くことの価値を、それほど重く考えていないからです。

30歳のときのことです。同じ経済誌(みんな知ってる全国誌です)に記事を書いている同世代のライターと食事に行くことになりました。実はライター同士って一緒に仕事をする機会がないから、なかなか知人、友人にならないんです。彼とは共通の編集者を介して知り合い、「酒でも飲みながら、お互いのことを話してみよう」となったわけ。

そこで意外な事実がわかりました。なんと、ぼくの年収は彼の2倍だったのです(それでも同世代のビジネスパーソンよりも少なかったけど)。

同じ雑誌で書いている、つまり文章の品質は同レベルなのに、なぜ? と驚いたわけですが、よくよく話を聞いてみると、彼は「締め切りを落としてしまうのが怖いので、あまり多くの仕事を請けていないのだ」と言います。

一方のぼくは「来た仕事は断らない。睡眠時間を削ればなんとかなる」と、そんな気持ちで書きまくっていました。つまり、ぼくは彼の2倍の量の原稿を書いていたわけです。

いま「睡眠時間を削って」と書きましたが、当然、それでは2倍にならないわけで、ま、ぼくのほうが、ずっとスピードが速かったんですね(ええ、ちょっとだけ自慢しています)。

というわけで、職業ライターになりたいのならば、まず「速く書けるようになる」と強く心に思うことです。多くの人が「うまく書けるようになりたい」とは考えるようですが、それだけじゃ足らない。同じくらい「速く書く」ことを意識して欲しいと思います。

自分がどれくらいで書けるのかを知る

前置きが長くなりましたが、じゃあ、どうすれば速く書けるようになるか。それは「時間を測る」ことです。

単純な話なんですが、「自分は何文字の、どれくらいの難易度の記事を、何時間何分で書けるのか」を知っておく必要がある。そのためにも、まずは測定することなのです。

自分のスピードがだいたいつかめてきたら、今度は目標を立てること。「これくらいの記事だと2時間だな。よし、1時間45分を目標にしてみよう」とかね。

漠然と「速くなるといいな」では能力は伸びません。書き始める前に目標を決めて、時計をちらりと見て、何時までに終わらせると確認してから取り掛かる。これだけでスピードは必ずアップします。

さて、あなたの言っている「書きながら構造を考えているから迷う」というのはそのとおりであり、大問題です。実はここに「速く書けない」「うまく書けない」「まとまらない」といった問題の理由の大半があるのですが、その件については、また別の議論としましょう。

それと、「集中力が散漫」という訴えに対しては一言。


知らんがな。

「福岡Webライティング道場」では、このような話題をおもしろく、深く追求しています。

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