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心情を吐露する道長と志を説くまひろの哀しい逢瀬/大河ドラマ『光る君へ』第10回

(以下、ドラマの内容を含みます)

月明かりに照らされた廃屋で、ついにまひろと道長は結ばれた。幻想的で美しいのに、哀しい逢瀬。もしかして、これが最初で最後なのかもしれない。

直秀の死から立ち直れない道長は、自分と「家」との繋がりにも嫌気が差して、まひろに「藤原を捨てる。このまま遠くの国へ行こう」とまで言う。MAX色気が漂う佑@道長。けれどこの回では、若さゆえの勢いと幼さの残るふるまいの方が目立つ。私自身がまだ直秀ロスを引きずっているので、余計にそう思うのだろう。「一緒に行くか?」「行かねえよな」と、まひろにやさしく笑いかけた直秀。世の中を俯瞰していた彼はいつも冷静で、大人のふるまいだった。

直秀に比べると、今の道長はかなり幼い。好きな女と逃げ出したい。そんな彼に対して、「あなたは右大臣家の息子だから、世を正すことができる。直秀の死を無駄にするな。一緒に遠くの国へは行かない。でもあなたがこの国を変えていく様子を死ぬまで見つめ続ける」と一喝するまひろ。

直秀の死がふたりに与えた影響はとても大きいが、それに耐えられなかった道長と、ますます大人になっていくまひろには、身分という壁以上に思考の壁が垣間見える。「理不尽に友を亡くしたのに、そんな世の中を女の自分は変えることができない」という、まひろの悔しさもうかがえる。

互いへの思いは断ち切れず、ふたりはついに一線を越えた。

道長は「振ったのはお前だぞ」とまひろに言いながら、また会いたいと願う。

「人は幸せでも泣くし、哀しくても泣くのよ」
まひろの中で、この逢瀬は始まりではなく終わりなのではないか。そんな風に感じることばだった。

折しも、彼女は父・為時が余命いくばくもない貧しい妾の看病をする姿を目にしたばかり。女は男を待つしかなく、まひろのように下級貴族の娘には生き方の選択がない。そうした現実を、まひろは身に沁みて感じている。嫌でも道長より大人になる。

この先、倫子と道長の縁談が進めばどうなるのだろう。この回で初登場となった瀧内公美さん演じる明子の強い眼差しも気になる。さらに、まひろに「この国を変えてくれ」と言われた道長が、今後どのように政治の中心で手腕をふるうようになるのか。

まひろの願いが、道長にとって呪いになりはしないのか? 道兼が父親の愛を得たいと躍起になるように、道長もまひろの愛欲しさに動くのだろうか。

まひろは一時期「遠くの国」(越前)で過ごすことになっており、劇中では5月~6月頃に描かれるようだ。誰にも理解できない深い部分でつながっているふたりが今後すれ違っていくのを想像すると、より哀しみが増す。けれどまひろが、自身の心の葛藤や道長の鬱屈とした心情に触れることによって、いずれ『源氏物語』を生み出すのだと思うと、わくわくもする。


美しいふたりの逢瀬のことばかり書いたけれど、劇中では大事件が起きている。世に言う「寛和の変」。本郷奏多くん、うっとり美坊主!(そこじゃない) ついに藤原兼家によるクーデターが実行された。その影響は、まひろの家を直撃。為時は再び無職になってしまう。貧乏暮らしを強いられる一家が心配だ。己を含む一族の起こしたクーデターによって、またも愛する人を苦しめることになる道長のメンタルはどうなるのか。

毎回あっという間の45分。次回も一瞬で終わりそうな勢いである。癒しの存在・乙丸&百舌彦よ、次回もがんばれ。そして妾に嫉妬する乳母・いとさんも、ここが踏ん張りどころかと。



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