Happy Soul prefecture

東京サヴァイバーという小説を書いています。 時折、18禁判定が付与されているような代物…

Happy Soul prefecture

東京サヴァイバーという小説を書いています。 時折、18禁判定が付与されているような代物です。

マガジン

  • 火と華の国

    戦国風小説

  • 意地の悪い猫

    猫が死ぬ話 二話

  • 東京サヴァイバー(18禁

    後藤くんと岸くんが送るちょっとHなBL風ほのぼのゲームライフ 時折、18禁判定が付与されてます。 マガジンの見出し画像は𝕏nii_ottoさんへの有償依頼。 フル画像は私の𝕏でどうぞ。

  • Tokyo Supper Dinner

    東京サヴァイバーのストーリーの外側の話とか、登場人物の紹介等

記事一覧

四ツ蔵の半蔵

半蔵が今までに口にしたことが無いほどに旨い牡丹鍋。 あまい脂の猪肉。 それは猪を飼い米を食わすことで出来るらしい。 「猪に米を食わすんか?」 半蔵が驚きを口にすると…

三、猪鍋奉行

四ツ蔵は、あの醜悪な大黒がかしこまり、その横に物言わぬ人形のように据え置かれたリンの姿を思い浮かべた。 「いや、それはアカンて…」四ツ蔵は思わずそう呟きながら身…

二、半身の半蔵

薄い半纏を羽織り植木鋏を手にした一人の老人が広く枝葉を拡げる黒松や梅に桜といった庭木、鉢に植えられた皐月や銀杏の盆栽を剪定していた。 だがその仕事はとてものんび…

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一、幽世の剣

そこにいた全員が、数十人分の肉塊に目を奪われていた。 とても見るに堪えない光景だが、目をそらすことは出来なかった。 死体。ではなかった。あまりにも凄惨なその光景は…

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意地の悪い猫 後編

何一つ見落とさないようにと近所の道路を見渡しながら歩き続けた 見つけることも見つけないことも安堵にはならないのだがやはり杞憂であってほしい このまま探し続けても…

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意地の悪い猫 前編

客先の倉庫で荷物を降ろしているとどこからか「ニーニー」と小さな泣き声がした それは倉庫の奥の片隅にいた、まだ目も開いていない生まれたばかりの子猫の声だった 倉庫番…

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第四十三話 良い音が鳴る指の鳴らし方

チンピラ二人が明らかにこっちに向かって歩いてくる。 一人はトライバル柄のタトゥーを見せつけるように右腕をまくっている。背丈は岸より少し上、後藤より少し低いと言っ…

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第四十二話 太陽軒

「なにか食いに行こうぜ」 信号でトラックを止めた後藤が言った。 後藤が珍しいことを言ったので岸は少しばかり驚いた。 「佐川のじいさんのアレでだいぶ時間取られたし、…

第四十一話 失踪女性

田中がカフェのドアを開け店内に入るとすでに谷が待っていた。 谷がすぐに手を上げ田中を招き寄せた。 田中はワインバー風神で渡部警部補と高価なワインを楽しんだ後にすぐ…

第四十話 ギャルカフェ111(トリプルワン

那奈と谷は友人となっていた。 九時五時勤務の週休二日で土日が休みの那奈と、365日24時間営業の警察官である谷が時間を同じくする機会は多くはなかったが、それでも…

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第三十九話 壊れ行く女

山井那奈は床に放られたコンビニおにぎりとオレンジ色のキャップの付いたペットボトルを見つめていた。 もちろん長谷部が那奈の身体を十分に楽しんだ後に放り投げていった…

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第三十八話 風神にて

渡部はワインバー風神の前に着いた。 署からゆっくりと歩いてきた。時刻は6時50分だった。 丁度いいな。渡部はドアを開け店内に入った。店内には相変わらず控えめな音量…

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第三十七話 八つ面の渡部

「コーヒー買って来ていいか?」 岸のヤツが言った。 二日酔いもだいぶ収まってきたようだが、まだ本を読むほどではないらしい。 今日はもう配達は終わった。あとは帰るだ…

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第三十六話 誰が佐河を殺したの?

「関本さーん、鑑識呼びますよぉ?」 「いや、待ってくれ」 「自殺でしょう?」 「木下、もう一度大家に話を聞いてきてくれるか?」 「またですかあ!?もう三回も聞いてる…

第三十五話 山葵を食うと死にかける男は玉子巻きがお好き

キンキの寿司はマジで美味かった。 キンキってあんなに美味いんだな。 道路にいた連中は(やっと離れてくれたか)という顔でオレを見ていた。 どうせ寿司の味なんかわから…

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第三十四話 The rolling stones that won't stop until Go To dies.

金の問題じゃない。山崎。アレは大事な酒だったんだよ……。 オレと和さんの様子がおかしかったから?和さんの機嫌を取るためにアレを、山崎を開けちまったってのか・・。…

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四ツ蔵の半蔵

半蔵が今までに口にしたことが無いほどに旨い牡丹鍋。
あまい脂の猪肉。
それは猪を飼い米を食わすことで出来るらしい。
「猪に米を食わすんか?」
半蔵が驚きを口にすると高田は事も無げに言う。
「稲を刈ってな、中秋を過ぎた頃にもう一度、田に水を張っておくと冬前の刈られ後に細稲を実らすのじゃ。これも米は米じゃがな食うには難いからの、それを猪に食わすと脂が増え実に旨く育つのじゃ」
「はぁ猪に米を食わすんかぁ

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三、猪鍋奉行

四ツ蔵は、あの醜悪な大黒がかしこまり、その横に物言わぬ人形のように据え置かれたリンの姿を思い浮かべた。
「いや、それはアカンて…」四ツ蔵は思わずそう呟きながら身を乗り出した。
「将軍と居を同じくするか!!」
陽下将軍が目を血走らせるかに怒りを露わにし、すでに空となっている茶碗を手に掴み振り上げた。
リンと高田が反射的に手で制した。
「母様!」「陽下様!」
既で陽下将軍は茶碗を投げつけるのを思いとど

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二、半身の半蔵

薄い半纏を羽織り植木鋏を手にした一人の老人が広く枝葉を拡げる黒松や梅に桜といった庭木、鉢に植えられた皐月や銀杏の盆栽を剪定していた。
だがその仕事はとてものんびりしたもので一枝を一寸落とすだけで四半刻も悩むので一向に進まなかった。
老人の名は四ツ蔵と言う。

四ツ蔵のいる屋敷から遠く離れた所を畑仕事を終え籠を背負う百姓がその孫達に引っ張られる様に家路についていた。
百姓は四ツ蔵の姿を認めると深々と

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一、幽世の剣

そこにいた全員が、数十人分の肉塊に目を奪われていた。
とても見るに堪えない光景だが、目をそらすことは出来なかった。
死体。ではなかった。あまりにも凄惨なその光景はそれらが元は生きていた人間だとは思えないほどのものだったからだ。
血の流れる音もなく死を拒絶しようとする断末魔も絶えた静寂の中で漂い始めた死臭だけがそれらがただの肉塊ではなく人の死体であることを主張し始めていた。

爺さんが一振りの刀を手

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意地の悪い猫 後編

意地の悪い猫 後編

何一つ見落とさないようにと近所の道路を見渡しながら歩き続けた
見つけることも見つけないことも安堵にはならないのだがやはり杞憂であってほしい

このまま探し続けても何も見つからず家に戻れば数年過ごした家ではなく庭の草むらの奥で大事に子供を守っている親猫の姿があって欲しかった

しかし見てしまった
道路脇の植え込みに半ば隠れるように黒猫が横たわっていた
進みたくなかった
だが見ないわけにはいかない

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意地の悪い猫 前編

意地の悪い猫 前編

客先の倉庫で荷物を降ろしているとどこからか「ニーニー」と小さな泣き声がした
それは倉庫の奥の片隅にいた、まだ目も開いていない生まれたばかりの子猫の声だった
倉庫番は「朝にはもういた」と言う
親猫に見捨てられたか、もしくは親猫が先に死んでしまったかは分からないがいずれにせよ戻ることはないのだろう

倉庫番は子猫を助けてやるつもりはないようだったがゴミ箱に放り込むのを死ぬまで待ってやる程度の温情は持ち

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第四十三話 良い音が鳴る指の鳴らし方

チンピラ二人が明らかにこっちに向かって歩いてくる。
一人はトライバル柄のタトゥーを見せつけるように右腕をまくっている。背丈は岸より少し上、後藤より少し低いと言ったところか。もう一人は岸と同じくらいだろう。年齢は二人ともこちらよりだいぶ下だ。20代、おそらく前半だろう。歩き方、肩の怒らせ方、タトゥーを見せつけるかのように腕を振る様。全てが幼い。

後藤はキーをシリンダーに差しエンジンをかけ怯えた様子

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第四十二話 太陽軒

「なにか食いに行こうぜ」
信号でトラックを止めた後藤が言った。
後藤が珍しいことを言ったので岸は少しばかり驚いた。
「佐川のじいさんのアレでだいぶ時間取られたし、今から晩飯作るのもなぁ」
岸は本のページの端を少しだけ破り折り込むとを本を閉じダッシュボードに置いた。時間はもう18時を少し過ぎていた。確かに佐川が死んだことで和さんの店で刑事に事情聴取をされだいぶ時間を取られた。あの渡部という年かさの刑

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第四十一話 失踪女性

田中がカフェのドアを開け店内に入るとすでに谷が待っていた。
谷がすぐに手を上げ田中を招き寄せた。
田中はワインバー風神で渡部警部補と高価なワインを楽しんだ後にすぐに谷にとりあえずの報告のつもりで連絡したのだが谷は「今すぐに来てください」と言ってきたのだった。仕方なく田中は谷との待ち合わせ場所に指定された、カフェと言うより喫茶店と言った方がしっくりくるこの店に来たのだった。
田中は店内を一通り見まわ

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第四十話 ギャルカフェ111(トリプルワン

那奈と谷は友人となっていた。

九時五時勤務の週休二日で土日が休みの那奈と、365日24時間営業の警察官である谷が時間を同じくする機会は多くはなかったが、それでも二人は流行りのカフェに連れだったり、谷の数少ない日曜の休みには二人でショッピングへ行くこともあったし、那奈の通う空手教室に谷が見学に来ることもあった。

「グーテンモルゲン!」
調べてきたのだろう、谷がドイツ語のつもりで挨拶をするが残念な

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第三十九話 壊れ行く女

山井那奈は床に放られたコンビニおにぎりとオレンジ色のキャップの付いたペットボトルを見つめていた。
もちろん長谷部が那奈の身体を十分に楽しんだ後に放り投げていった物だ。
那奈は相変わらず薄汚れたチューブトップを身に付けてはいたがショーツはもう無かった。長谷部がお楽しみの最中に引き裂いてしまったからだ。そんな長谷部でさえ那奈のチューブトップを剥ぎ取ろうとはしない。そこに長谷部を含む全ての男が望むものは

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第三十八話 風神にて

渡部はワインバー風神の前に着いた。
署からゆっくりと歩いてきた。時刻は6時50分だった。
丁度いいな。渡部はドアを開け店内に入った。店内には相変わらず控えめな音量で洋楽がかかっている。ロストインザリズムだ。この店は流れる曲まで実に良い。
こういう静かに酒を飲む店ではどんな曲を流すかというのは非常に大事だ。特に気ならず、時に酒が美味くなる曲を流せばいい。酒を不味くする日本や韓国のくだらん歌謡曲を一切

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第三十七話 八つ面の渡部

「コーヒー買って来ていいか?」
岸のヤツが言った。
二日酔いもだいぶ収まってきたようだが、まだ本を読むほどではないらしい。
今日はもう配達は終わった。あとは帰るだけなんだがコーヒーなら帰ってから淹れてくれればいいんだが今すぐに飲みたい何かがあるんだろう。
「ああ、ドトールでいいか?」
「ああ」岸は指で目頭を押さえながら答えた。

オレたちは間違っても缶コーヒーなんか飲まない。
岸に言わせれば缶コー

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第三十六話 誰が佐河を殺したの?

「関本さーん、鑑識呼びますよぉ?」
「いや、待ってくれ」
「自殺でしょう?」
「木下、もう一度大家に話を聞いてきてくれるか?」
「またですかあ!?もう三回も聞いてるじゃないですかぁ、すげえイラついてますよ大家さん。さっさと鑑識呼びましょうよぉ」
「いいから聞いてこい!全部だぞ!」
木下と呼ばれた刑事は舌打ちをして部屋を出て行った。

何かあるはずだ。
関本はきつい便臭のする老人の死体から距離を取り

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第三十五話 山葵を食うと死にかける男は玉子巻きがお好き

キンキの寿司はマジで美味かった。
キンキってあんなに美味いんだな。
道路にいた連中は(やっと離れてくれたか)という顔でオレを見ていた。
どうせ寿司の味なんかわからないくせに!と思うのは良くないな。
キンキの寿司の味なら道路で飲んだくれている外人連中よりオレの方が分かっている自信はあるが、冷静に考えるとオレは一人前の寿司を出されても食えるのは半分くらいだからな。山葵が入っていなくてもだ。
それならこ

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第三十四話 The rolling stones that won't stop until Go To dies.

金の問題じゃない。山崎。アレは大事な酒だったんだよ……。

オレと和さんの様子がおかしかったから?和さんの機嫌を取るためにアレを、山崎を開けちまったってのか・・。違う、機嫌が悪かったのはオレの方だったんだぜ。
アレは、山崎はあの女が買って来てくれたんだ。しょっちゅう海外に連れまわされていたのに安い給料で買って来てくれた大事な酒なんだ。でもあの女の名前が思い出せない。
いや、オレはあの女を思い出しち

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