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第四十三話 良い音が鳴る指の鳴らし方
チンピラ二人が明らかにこっちに向かって歩いてくる。
一人はトライバル柄のタトゥーを見せつけるように右腕をまくっている。背丈は岸より少し上、後藤より少し低いと言ったところか。もう一人は岸と同じくらいだろう。年齢は二人ともこちらよりだいぶ下だ。20代、おそらく前半だろう。歩き方、肩の怒らせ方、タトゥーを見せつけるかのように腕を振る様。全てが幼い。
後藤はキーをシリンダーに差しエンジンをかけ怯えた様子
第四十一話 失踪女性
田中がカフェのドアを開け店内に入るとすでに谷が待っていた。
谷がすぐに手を上げ田中を招き寄せた。
田中はワインバー風神で渡部警部補と高価なワインを楽しんだ後にすぐに谷にとりあえずの報告のつもりで連絡したのだが谷は「今すぐに来てください」と言ってきたのだった。仕方なく田中は谷との待ち合わせ場所に指定された、カフェと言うより喫茶店と言った方がしっくりくるこの店に来たのだった。
田中は店内を一通り見まわ
第四十話 ギャルカフェ111(トリプルワン
那奈と谷は友人となっていた。
九時五時勤務の週休二日で土日が休みの那奈と、365日24時間営業の警察官である谷が時間を同じくする機会は多くはなかったが、それでも二人は流行りのカフェに連れだったり、谷の数少ない日曜の休みには二人でショッピングへ行くこともあったし、那奈の通う空手教室に谷が見学に来ることもあった。
「グーテンモルゲン!」
調べてきたのだろう、谷がドイツ語のつもりで挨拶をするが残念な
第三十九話 壊れ行く女
山井那奈は床に放られたコンビニおにぎりとオレンジ色のキャップの付いたペットボトルを見つめていた。
もちろん長谷部が那奈の身体を十分に楽しんだ後に放り投げていった物だ。
那奈は相変わらず薄汚れたチューブトップを身に付けてはいたがショーツはもう無かった。長谷部がお楽しみの最中に引き裂いてしまったからだ。そんな長谷部でさえ那奈のチューブトップを剥ぎ取ろうとはしない。そこに長谷部を含む全ての男が望むものは
第三十八話 風神にて
渡部はワインバー風神の前に着いた。
署からゆっくりと歩いてきた。時刻は6時50分だった。
丁度いいな。渡部はドアを開け店内に入った。店内には相変わらず控えめな音量で洋楽がかかっている。ロストインザリズムだ。この店は流れる曲まで実に良い。
こういう静かに酒を飲む店ではどんな曲を流すかというのは非常に大事だ。特に気ならず、時に酒が美味くなる曲を流せばいい。酒を不味くする日本や韓国のくだらん歌謡曲を一切
第三十七話 八つ面の渡部
「コーヒー買って来ていいか?」
岸のヤツが言った。
二日酔いもだいぶ収まってきたようだが、まだ本を読むほどではないらしい。
今日はもう配達は終わった。あとは帰るだけなんだがコーヒーなら帰ってから淹れてくれればいいんだが今すぐに飲みたい何かがあるんだろう。
「ああ、ドトールでいいか?」
「ああ」岸は指で目頭を押さえながら答えた。
オレたちは間違っても缶コーヒーなんか飲まない。
岸に言わせれば缶コー
第三十六話 誰が佐河を殺したの?
「関本さーん、鑑識呼びますよぉ?」
「いや、待ってくれ」
「自殺でしょう?」
「木下、もう一度大家に話を聞いてきてくれるか?」
「またですかあ!?もう三回も聞いてるじゃないですかぁ、すげえイラついてますよ大家さん。さっさと鑑識呼びましょうよぉ」
「いいから聞いてこい!全部だぞ!」
木下と呼ばれた刑事は舌打ちをして部屋を出て行った。
何かあるはずだ。
関本はきつい便臭のする老人の死体から距離を取り
第三十五話 山葵を食うと死にかける男は玉子巻きがお好き
キンキの寿司はマジで美味かった。
キンキってあんなに美味いんだな。
道路にいた連中は(やっと離れてくれたか)という顔でオレを見ていた。
どうせ寿司の味なんかわからないくせに!と思うのは良くないな。
キンキの寿司の味なら道路で飲んだくれている外人連中よりオレの方が分かっている自信はあるが、冷静に考えるとオレは一人前の寿司を出されても食えるのは半分くらいだからな。山葵が入っていなくてもだ。
それならこ
第三十四話 The rolling stones that won't stop until Go To dies.
金の問題じゃない。山崎。アレは大事な酒だったんだよ……。
オレと和さんの様子がおかしかったから?和さんの機嫌を取るためにアレを、山崎を開けちまったってのか・・。違う、機嫌が悪かったのはオレの方だったんだぜ。
アレは、山崎はあの女が買って来てくれたんだ。しょっちゅう海外に連れまわされていたのに安い給料で買って来てくれた大事な酒なんだ。でもあの女の名前が思い出せない。
いや、オレはあの女を思い出しち