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【読書】日本純文学オジサンリベンジ

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若かりし頃に読んでよく分からなかった純文学作品を再度リベンジすることによって、コンプレックスを超克しようとする、オジサンの奮闘記です。 要約するとオジサンが気ままに読書をしてつら…
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【読書】日本純文学リベンジ18 森鴎外『山椒大夫』

【読書】日本純文学リベンジ18 森鴎外『山椒大夫』

山椒の味と演劇

山椒の美味しさ気づいたのは、美味しい鰻を食べるようになってからです。つまり大人になって、しかもお金が自由に使えるようになってからでした。

山椒と山椒大夫が関係あるのかは知りません。
しかし僕にとっては山椒は大人の食べ物で、苦いはずなのに大人が美味しいというビールと同じようなものでした。

「安寿と厨子王」は子供の頃に演劇をやった記憶があります。詳細は覚えていないけど、素敵な名前

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【読書】日本純文学リベンジその17夏目漱石『門』

【読書】日本純文学リベンジその17夏目漱石『門』

『門』は20代では難しい

『門』を初めて読んだ理由は、『それから』にどっぷり浸かったために『それから』の「それから」を知りたくなったからでした。

燃え上がった街へ代助が飛び込んでいく様を『それから』でみて、三部作として続きが読みたくなったわけです。

20代で読んだ時に感じたイメージだけは仄かに残っていますが、『三四郎』のエネルギッシュな若さや『それから』の知性的な趣きとは異なり、くたびれた物

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【読書】日本純文学リベンジその16夏目漱石『それから』

【読書】日本純文学リベンジその16夏目漱石『それから』

『それから』の思い出

夏目漱石の好きな作品を聞かれたならば、どの作品を選ぶでしょうか。

僕は少し悩んで『それから』と答えると思います。
文学として、価値があるとか、完成度が高いとか、そういう客観的な尺度ではありません。

個人的な思い出が多いからです。

『それから』の出会いは、僕にとって夏目漱石との出会いと言っても過言でないかもしれません。

19歳の夏に初めてバックパックで海外旅行した時に

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【読書】日本近代文学リベンジその15坂口安吾「アンゴウ」

【読書】日本近代文学リベンジその15坂口安吾「アンゴウ」

坂口安吾は人物が面白い

坂口安吾は、とても多彩な作品群を残しています。『白痴』や『堕落論』で知られてますが、風土記や歴史物などの毛色の異なる書き物も多数あります。

最近はせっかくならば好きな作家の作品を読もうとリベンジ色が薄れてきていますが、代表作以外があまり読めていない、という意味で安吾へのリベンジとなります。

作品群をあまり多くは読めていないものの、個人的には生き方やテーマや好きで、小説

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【読書】日本純文学リベンジ その14 森鷗外『舞姫』

【読書】日本純文学リベンジ その14 森鷗外『舞姫』

日本近代文学最大の難所

森鷗外の『舞姫』以上にトラウマを与える日本近代文学はあるだろうか。
これまでも長らく、いやこれからも日本国民に純文学のトラウマを与え続けるだろう。

そう、日本近代文学を嗜む人の最初でかつ最大の難所は『舞姫』なのである。

夏目漱石と双璧をなす文豪として名は上がるものの、森鷗外は正しい評価が得られてないのは、『舞姫』要因が大きいにちがいない。

重い重い腰を上げて、とうと

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【読書】日本純文学リベンジ その13 森鷗外『かのように』

【読書】日本純文学リベンジ その13 森鷗外『かのように』

鷗外コンプレックス

あるあるすぎて恥ずかしいのですが『舞姫』を読んで森鷗外から目を逸らしていた口です。

文京区に住んでいた頃、鷗外の旧居跡にできた区立図書館に行ったり、水月ホテル鴎外荘(いつの間にか営業再開してるようですね)で宴会したりなど、鷗外への興味は強かったのですが、なかなか読むには至りませんでした。

『高瀬舟』も個人的にはよくなかったように思います。
理解はできるのだけど、登場人物が

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【読書】日本純文学リベンジ その12 泉鏡花『外科室』

【読書】日本純文学リベンジ その12 泉鏡花『外科室』

文語→森鴎外→共通点?

文語に再度チャレンジしようと考えて、森鴎外にしようか悩んで、結局今回は泉鏡花を手にしました。

ふと偶然に気づきましたが、共通して言えるのは、共に名前の漢字が3文字で構成されていますね。

漢字もシンプル(森、泉)→複雑(鴎、鏡)→シンプル(外、花)、であるということ。

さらによくよく考えると、本名も鏡太郎と林太郎で、不思議なアナロジーが存在します。

何か泉鏡花への影

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【読書】日本純文学オジサンリベンジ その11 永井荷風『つゆのあとさき』

【読書】日本純文学オジサンリベンジ その11 永井荷風『つゆのあとさき』

浅草と荷風

浅草はとにかく美味しい食べ物屋さんが多く感じます。
行っても行っても尽きない大好きな街。
歴史も文化もなんでもある。
浅草は大好きな街です。

浅草の街を知るにつれて、永井荷風の名前をよくみることが多くありました。

特に蕎麦が好きな僕の場合は、尾張屋。いつの間にか閉店してしまったアリゾナキッチン。
さらにはロック座やフランス座など、演芸の場面でも荷風の名前が出てきます。

永井荷風

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【読書】日本純文学オジサンリベンジ その10 谷崎潤一郎『吉野葛』

【読書】日本純文学オジサンリベンジ その10 谷崎潤一郎『吉野葛』

谷崎体験は文学初心者には良い

谷崎潤一郎の文章はあまり読みづらさを感じるものではありません。
前回の記事にも書いた通り、性的倒錯という普遍性が高いテーマ?であることもあって、むしろ読みやすい部類の文章かとしれません。

一般的に日本の近代文学は、すでに100年近い年月を経ているものも増えてきています。

背景となるその時代の文化や風俗がわからなかったり、そこに関わる心理描写が理解しづらい部分があ

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【読書】日本純文学オジサンリベンジ その9 谷崎潤一郎『猫と庄造と二人のをんな』

【読書】日本純文学オジサンリベンジ その9 谷崎潤一郎『猫と庄造と二人のをんな』

猫コンプレックス

猫が好き
このひと言で僕は一気に劣等感が爆発します。

夏目漱石の『吾輩は猫である』から始まり、内田百閒『ノラや』、萩原朔太郎『猫町』など、文学作品で猫が取り上げられた作品はキリがありません。しかもどれもこれも通っぽい作品ばかり。

文学的なアイテムは多数あれど、「猫」ほどに確固たる地位を確立しているものはなかなか思い当たりません。実際、僕の周りの人間で猫を好きな人はセンスが良

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『読書』日本純文学オジサンリベンジ その8 田山花袋『蒲団』

『読書』日本純文学オジサンリベンジ その8 田山花袋『蒲団』

田山花袋は文学史の枠を越えるのか

『蒲団』は良くも悪くも一言で片付けられることが多いと思います。
年配の男が布団の匂いを嗅ぐ、これが当時は画期的だった、と。

確かに一言で表現してしまえば、そうだとは思います。

同じく年配の男が女性を追いかける作品を描いた作家を考えると谷崎潤一郎が思い出されます。
耽美な作品の多い谷崎は、今でも普遍的な文学的な価値を語られることが多いです。

一方で、田山花袋

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【読書】日本純文学オジサンリベンジ その7 中島敦『山月記』

【読書】日本純文学オジサンリベンジ その7 中島敦『山月記』

教科書的な作品

自分が選択する作品をみていると、いくらか傾向があって、その一つに
学生時代にまじめに勉強していなくて、教科書的なものをまともに読んでない、
というコンプレックスがあるように思います。

大体、大学生過ぎてから挑戦はしたことはあるのですが、まだ読書の量が少なかったからか、素晴らしさがわからないものが多かったのです。

どうして教科書に掲載されるほどのものなのに、僕の頭はついていけな

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【読書】日本純文学オジサンリベンジその6 幸田露伴『五重塔』

【読書】日本純文学オジサンリベンジその6 幸田露伴『五重塔』

文語体という厚い壁

日本の文学を味わい尽くすために乗り越えなくてならないものは、様々あるのであろうが、その代表格として文語体がある。

夏目漱石と並ぶ文豪の森鴎外は口語体の小説を多数残しているにもかかわらず、漱石ほどに読まれていないのは『舞姫』の文体所以であろうことはよく言われる。

日本「近代」文学が好きというならば、口語体となった作品から楽しめばいいわけだが、何か言い訳じみているので、読んだ

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【読書】日本純文学オジサンリベンジ その5 川端康成『伊豆の踊り子』

【読書】日本純文学オジサンリベンジ その5 川端康成『伊豆の踊り子』

好きな作家といえば誰?

吾輩は変態である。犯罪者ではない。

少々こだわりが強いだけである。

そのため、こだわりをもって女性を上手に描く作家は昔から好きだった。

その代表格が川端康成だった。

ノーベル賞受賞いうお墨付きある作家でもあったので、
人間性を疑われることはなかったが、
実際はかなり特殊な嗜好をもった作家だと思っている。

『みづうみ』、『片腕』、そして『眠れる美女』など
文字通り

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