没落坊ちゃんの生活

会社を追い出されたお坊ちゃんの奔走記 雑記、読書、回想をポツポツと書きます。 妻子あ…

没落坊ちゃんの生活

会社を追い出されたお坊ちゃんの奔走記 雑記、読書、回想をポツポツと書きます。 妻子ありながら借金にあえぐ無職 日本の純文学、西洋哲学を好みます。 数学・プログラム・法律・経営学を勉強したい。

マガジン

  • 【読書】日本純文学オジサンリベンジ

    若かりし頃に読んでよく分からなかった純文学作品を再度リベンジすることによって、コンプレックスを超克しようとする、オジサンの奮闘記です。 要約するとオジサンが気ままに読書をしてつらつらと駄文を垂れ流します

  • 【読書】海外SF小説入門

  • 【没落物語】無職の不器用なおじさんができるまで

    人生の振り返りをしています。借金にまみれながら、もがき苦しむ不器用な無職のおじさんの人生を考えてみます。

最近の記事

【読書雑記】加藤周一『文学とはなにか』を読んでぼんやり考えたこと

中年のおじさんになっても「ブンガク」という響きに魅せられて、大きな価値を見出して、読書を続けています しかし文学とか小説といった類はやはり不毛な行為と考えられていることが少なくないです これはパフォーマンス至上主義と言っていいような費用対効果を気にする近年の価値観が背後にあるように感じています。 科学が客観性に優れているからとか、発明を産んでいるから素晴らしいのではなく、コストパフォーマンスやタイムパフォーマンス(タイパ!)が働くような技術を産むから選ばれるように、パフ

    • 【読書雑記】舞城王太郎『わたしはあなたの瞳の林檎』

      文体でも饒舌、と表現されるほどに流れるような言葉があると思う 舞城王太郎の描く若い女性の言葉はそういった類のものだと思う そしてワードの力がすごい いまだに『好き好き大好き超愛してる』のタイトルが凄すぎて(語彙力。。)それだけでも歴史に残るような気になるほど 300%濃縮ジュースのようなこのタイトルと冒頭の文章の美しさは変え難い魅力なので、未読の方には強く薦めたい作家です そうはいっても舞城王太郎は20年近く読んでいませんでした ※そもそも小説を読める状況ではなかった

      • 【読書雑記】大江健三郎『死者の奢り』

        『死者の奢り』は、東大新聞で賞をとった『奇妙な仕事』をさらに分かりやすくそして意識的に特殊な題材としているように思える 都市伝説の元ネタとなったなんてどっかに書いてあったが、死体を処理するバイト、というありそうでない仕事をする主人公のお話 死人と人間、絶望と希望、戦争と平和、など二つの世界が語られているが、主人公は、極めて死人に近く、生に対して希望を持たない 同じバイトをする女が妊娠していようと「僕にはどんな関係も持たない」ほどに 当時の大江自身の言葉が印象的だ 「

        • 【読書雑記】中島らも『今夜、すべてのバーで』

          いつもの通り、Amazonをなんとなく眺めていると本書がリコメンドされていました。 全く関連のない本ばかり読んでいる僕の画面に出るくらいだから、売れているのでしょう。 書籍名は何度もみたことがあって、オススメの本として本書をあげる人を何度も見聞きしたことがあるように思います。 僕個人としては、中島らもとかナンシー関とか米原万里とか、昭和の週刊誌が象徴するようなサブカルというかオルタナティブというか、少し違う感じを出したい人が読みたくなる作家のイメージを持っていました。

        【読書雑記】加藤周一『文学とはなにか』を読んでぼんやり考えたこと

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        • 【読書】日本純文学オジサンリベンジ
          18本
        • 【読書】海外SF小説入門
          2本
        • 【没落物語】無職の不器用なおじさんができるまで
          1本

        記事

          【読書】日本純文学リベンジ18 森鴎外『山椒大夫』

          山椒の味と演劇 山椒の美味しさ気づいたのは、美味しい鰻を食べるようになってからです。つまり大人になって、しかもお金が自由に使えるようになってからでした。 山椒と山椒大夫が関係あるのかは知りません。 しかし僕にとっては山椒は大人の食べ物で、苦いはずなのに大人が美味しいというビールと同じようなものでした。 「安寿と厨子王」は子供の頃に演劇をやった記憶があります。詳細は覚えていないけど、素敵な名前と感じたことと兄妹でもこんなに仲良くなるものか、不思議に感じた違和感が残っていま

          【読書】日本純文学リベンジ18 森鴎外『山椒大夫』

          【読書雑記】『今を生きる思想 ショーペンハウアー 欲望にまみれた世界を生き抜く』梅田孝太

          「現代新書100(ハンドレッド)」キャンペーン なにやら講談社さんが新しい試みをしていました。 本が100円!と貧乏性で本好きな私は飛び付きました。なぜ100円か理由もあります。 (すでにキャンペーンが終了し499円となっています) 第一弾がなんとショーペンハウアー、という渋い選択で驚きましたが、缶ジュースを買うようにポチッとKindle版を購入しました。 値段ばかりが目立ちますが、100ページ程度の短さも大きな特徴で、缶ジュースを一気に飲み干すように読み終えることが

          【読書雑記】『今を生きる思想 ショーペンハウアー 欲望にまみれた世界を生き抜く』梅田孝太

          【読書】日本純文学リベンジその17夏目漱石『門』

          『門』は20代では難しい 『門』を初めて読んだ理由は、『それから』にどっぷり浸かったために『それから』の「それから」を知りたくなったからでした。 燃え上がった街へ代助が飛び込んでいく様を『それから』でみて、三部作として続きが読みたくなったわけです。 20代で読んだ時に感じたイメージだけは仄かに残っていますが、『三四郎』のエネルギッシュな若さや『それから』の知性的な趣きとは異なり、くたびれた物悲しい雰囲気という印象でした。 ひっそりと生活を育む宗助とお米の姿は、僕にとっ

          【読書】日本純文学リベンジその17夏目漱石『門』

          【読書雑記】久しぶりに哲学に関する本(「現代思想入門」千葉雅也)を読んでみた。

          社会人になると哲学はできない SFに手を出してみたのだが、やはりあまり肌合わないらしく、面白くない。 そこで気晴らしにいくつか新書に手を出してみた。 学校で哲学を専攻していたこともあり、なんとなくその分野の本を眺めることがある。 しかし社会人になると社会との馴れ合いを許容しなくてはならず、あまりこういった分野を志向していると精神的な蕁麻疹が起きてしまう。 社会と馴れ合うことは没入することである。 俯瞰したメタの視点は持ってはいけない。 問いは持ってはいけない。 大体

          【読書雑記】久しぶりに哲学に関する本(「現代思想入門」千葉雅也)を読んでみた。

          【読書】海外SF小説入門 フィリップ・K・ディック『ユービック』

          海外SFへの一歩。選書について とにかく読むしかないというところで、有名どころの作家の作品を読んでいこうと手にしたのは『ユービック』でした。 ディックといえば、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』が最も有名です。僕が初めて目にした海外SF作品はこれなのではないかと思います。 ここまで魅力的なタイトルはなかなか見たことありません。「アンドロイド」という、SF向けの一般的な単語に、「電気羊」という聞いたこともない単語を結びつけ、「夢を見るか」という命題を投げかける。 ど

          【読書】海外SF小説入門 フィリップ・K・ディック『ユービック』

          【読書】海外SF小説入門 ロバート・A・ハインライン『夏への扉』

          読書家たるものの嗜み 日本の近代小説を読んでいても、文化的背景がわかっていないと理解が進まないことがあります。 海外の小説はいわんやをや、です。 昔から意味づけることや理解することに取り憑かれてしまったところもあり、あまり海外の作品は触れてきませんでした。 ただこの歳で諦めきれないカテゴリがあります。 それが海外SF小説です。 この分野はサイエンスや思想を語る人々によって譬え話としてスマートに語られたり、映画などを語るにしてもSFの原作が必須だったりします。 勝手な偏

          【読書】海外SF小説入門 ロバート・A・ハインライン『夏への扉』

          【読書】日本純文学リベンジその16夏目漱石『それから』

          『それから』の思い出 夏目漱石の好きな作品を聞かれたならば、どの作品を選ぶでしょうか。 僕は少し悩んで『それから』と答えると思います。 文学として、価値があるとか、完成度が高いとか、そういう客観的な尺度ではありません。 個人的な思い出が多いからです。 『それから』の出会いは、僕にとって夏目漱石との出会いと言っても過言でないかもしれません。 19歳の夏に初めてバックパックで海外旅行した時に、なぜかこの本しか持っていなくて、何度も繰り返し読みました。 クーラーのない、

          【読書】日本純文学リベンジその16夏目漱石『それから』

          【読書】日本近代文学リベンジその15坂口安吾「アンゴウ」

          坂口安吾は人物が面白い 坂口安吾は、とても多彩な作品群を残しています。『白痴』や『堕落論』で知られてますが、風土記や歴史物などの毛色の異なる書き物も多数あります。 最近はせっかくならば好きな作家の作品を読もうとリベンジ色が薄れてきていますが、代表作以外があまり読めていない、という意味で安吾へのリベンジとなります。 作品群をあまり多くは読めていないものの、個人的には生き方やテーマや好きで、小説そのものより、人物としてシンパシーを感じてきました。 自らの過去を振り返ったエ

          【読書】日本近代文学リベンジその15坂口安吾「アンゴウ」

          【読書】日本純文学リベンジ その14 森鷗外『舞姫』

          日本近代文学最大の難所 森鷗外の『舞姫』以上にトラウマを与える日本近代文学はあるだろうか。 これまでも長らく、いやこれからも日本国民に純文学のトラウマを与え続けるだろう。 そう、日本近代文学を嗜む人の最初でかつ最大の難所は『舞姫』なのである。 夏目漱石と双璧をなす文豪として名は上がるものの、森鷗外は正しい評価が得られてないのは、『舞姫』要因が大きいにちがいない。 重い重い腰を上げて、とうとうこの本を取り上げる日がやってきた。 最大のトラウマリベンジ、森鷗外『舞姫』チャ

          【読書】日本純文学リベンジ その14 森鷗外『舞姫』

          【読書】日本純文学リベンジ その13 森鷗外『かのように』

          鷗外コンプレックス あるあるすぎて恥ずかしいのですが『舞姫』を読んで森鷗外から目を逸らしていた口です。 文京区に住んでいた頃、鷗外の旧居跡にできた区立図書館に行ったり、水月ホテル鴎外荘(いつの間にか営業再開してるようですね)で宴会したりなど、鷗外への興味は強かったのですが、なかなか読むには至りませんでした。 『高瀬舟』も個人的にはよくなかったように思います。 理解はできるのだけど、登場人物が生き生きと頭の中に再生される夏目漱石とは違って寓話的なような感触がありました。

          【読書】日本純文学リベンジ その13 森鷗外『かのように』

          【読書】日本純文学リベンジ その12 泉鏡花『外科室』

          文語→森鴎外→共通点? 文語に再度チャレンジしようと考えて、森鴎外にしようか悩んで、結局今回は泉鏡花を手にしました。 ふと偶然に気づきましたが、共通して言えるのは、共に名前の漢字が3文字で構成されていますね。 漢字もシンプル(森、泉)→複雑(鴎、鏡)→シンプル(外、花)、であるということ。 さらによくよく考えると、本名も鏡太郎と林太郎で、不思議なアナロジーが存在します。 何か泉鏡花への影響があったのでしょうか、詳しい人に教えてもらいたい。 あとは、感覚的な話ではあ

          【読書】日本純文学リベンジ その12 泉鏡花『外科室』

          【読書】日本純文学オジサンリベンジ その11 永井荷風『つゆのあとさき』

          浅草と荷風 浅草はとにかく美味しい食べ物屋さんが多く感じます。 行っても行っても尽きない大好きな街。 歴史も文化もなんでもある。 浅草は大好きな街です。 浅草の街を知るにつれて、永井荷風の名前をよくみることが多くありました。 特に蕎麦が好きな僕の場合は、尾張屋。いつの間にか閉店してしまったアリゾナキッチン。 さらにはロック座やフランス座など、演芸の場面でも荷風の名前が出てきます。 永井荷風の作品は全くと言っていいほど、読むことができていませんでした。 そのため、浅草を

          【読書】日本純文学オジサンリベンジ その11 永井荷風『つゆのあとさき』