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【読書】日本純文学オジサンリベンジ その7 中島敦『山月記』

教科書的な作品

自分が選択する作品をみていると、いくらか傾向があって、その一つに
学生時代にまじめに勉強していなくて、教科書的なものをまともに読んでない、
というコンプレックスがあるように思います。

大体、大学生過ぎてから挑戦はしたことはあるのですが、まだ読書の量が少なかったからか、素晴らしさがわからないものが多かったのです。

どうして教科書に掲載されるほどのものなのに、僕の頭はついていけないのだ、と自己を責め立ててコンプレックスが形成されてきたように思います。

そして、今回も個人的に、教科書にありそうだけどよくわからなかったランキングに入っている作品を選びました。そう、中島敦『山月記』です。

【山月記】読みづらいのか

結果からいいますと、今回は特に苦労することなく読了できました。
作品の面白さも単純にわかり、久しぶりにコンプレックス解消できそうな心持ちです。。。

あらすじを簡単にまとめると、以下のような内容。

李徴という優秀な人が、役人を辞めて詩を書いて立志しようとするが上手くいかず、耐えられなくなって、人の世を捨てて虎になってしまう。
虎の姿となった李徴は、かつての友人の再会し、これまでの自分を語る。

漢文調で、一見読みづらそうであるし、中国が舞台というのも少しハードルが高まります。
しかしとても分かりやすいストーリーであるとともに、文学的な要素として、悩み苦しむ李徴にとても共感が持てました。

社会と個人の間の衝突。個人の鬱屈とした思索。
人それぞれではありますが、僕が純文学としてコアとなる部分はこういうものだと思ってます。

このコンフリクトが痛切であれば胸に刺さります。
李徴の人間から姿を変えてしまうほどの悩みや苦しみは、とてもシンプルに描かれてますが、痛みを持って伝わるように思っています。

教科書的、ということ

今回わかったのは、山月記が極めて教科書的であった、ということです。

※専門分野ではないので正確なところはわかりませんが、調べると意外と文献が多くないような気がしました。

  • 短くて引用しやすい

  • 漢文調、で見た目はゴロゴロとしてる
    ※ラテン語的な位置付け

  • 道徳的な解釈ができる

  • 変な色恋も描かれてない

どの側面からみても教科書に最高な気がしてきました。

そういう意味でも、無駄に僕が感じていたコンプレックスがふわりと軽くなるような気もしています。

つまり教科書に掲載される作品は、国家の教育という機能面で最適な文章なものであって、文学的な立ち位置を何か意味しているわけでもない、と改めて感じました。

山月記に関して言うと、作品として作家として興味は持ちましたが、教科書に掲載されることとは別問題、ということです。

教科書にあったけどよくわからなかったランキング

教科書に掲載されてたけどよくわからなかったランキング、ということで誰かアンケートとってほしい、なんて今回思いました。

教科書というと、夏目漱石の『こころ』が思い浮かびますが、あの作品は誰もが面白い、思うはずです。
そうではなくて、なんかつまらなかった、よくわからなかった、という作品はなんだったのかが知りたいところです。
※どなたか思うところあれば、コメントいただけると嬉しいです。

今回は少し気の晴れた読書です。
中島敦をもっと読みたくなる経験でした。
すでに読み出した『悟浄出世』があまりに面白くてびっくりしています。

時間は有限ではありますが、喉に刺さった魚の骨をとるようなコンプレックス解消を少しづつ進められれば、と思っています。

また今度!ボツラクボツラク

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