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「なぜ本を読むのか?」に答える一冊

時々「書店員になって何が良かった?」と同僚に訊きます。どういう答えが返ってくると思いますか?

「本を社割で安く買える」「コミックの新刊を発売日にゲットできる」

ガッカリさせたらスイマセン。本当にこのふたつが多いのです。私の答えもさほど変わらないかもしれない。

「好きな本を棚に並べて売れる」「欲しい本を仕入れてゲットできる」

もちろん何を注文してもいいわけではありません。ジャンルごとに担当がいますし、お店の売り上げを伸ばすのが仕事ですから。ただ私はあえて社割を使わず、皆さんと同じ金額を払うことにしています。ゆえに欲しい本を1冊仕入れて自分で買う分には何も問題はないのです。

好きな本を置くのも同じこと。要は売れればいいのです。オススメ本を棚に忍ばせて売れたときの喜びは言葉では言い表せません。

最近は「同じ会社の他店舗では売れてないのにウチだけ売れている良書」を見つけることを意識しています。年末が近くなるとお客さんも入ってくる荷物も急激に増え、なかなか選書まで頭が回りません。でも何とか隙間時間を拾っていい本を探しています。

いま私が注目している「ウチだけ本」は↓です。

これまでも何度かご紹介させていただいた、篠崎にある書店「読書のすすめ」の店主・清水克衛(しみず かつよし)さんの本です。「なぜ本を読むのか?」「本を読むと何が得られるのか?」という根本的な問いに丁寧に答えてくれています。しかも「こういうメリットがある」「成功できる」ということではなく、もう少し違った角度から「成幸」をもたらすヒントを教えてくれるのです。

驚いたのはPART4の章タイトル。「人のために本を読むと力がわく」です。「え?」ってなりますよね。でも読んで納得し、視野が広がりました。自分が好きでやっている読書メーターやnoteにレビューを書く行為も、突き詰めればたしかにそういうことだなと。

他にも名言が多数潜んでいます。たとえば「先人の知恵は、いつも本という形であなたの隣にあり、あなたの知恵を引き出す助けをしてくれるのです」とか。どうしても書店員は新刊を売ることに意識を傾けがち。でも時代や流行に関係なく、ずっと読まれてきた「古典」の良書を見出すことも同じくらい大切なのです(清水さんはこのことを「タテ糸の読書」という言い回しで表現しています)。

清水さんは「埋もれていた良書を探し出し、お客さんにお届けする」ことを己に課しています。自分で言うのも何ですが、私も同じ志を抱いています。しかし彼が紹介している本の一覧を見て「俺はまだまだだな」と痛感しました。本書を読まなかったらまず知ることのなかったタイトルのオンパレード。いまの私にはここまで唯一無二な選書はできません。もっと古今東西、そして小さな出版社の本にも目を向けなくては、と奮い立ちました。

これから本を読みたい人、読むのが好きな人、書きたい人、そして本を売る仕事に就いている人。それら全てに前へ進む熱い推進力をもたらしてくれる一冊です。ぜひ。

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