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ハードボイルド書店員の「2023年夏・芥川賞予想」

芥川賞・直木賞の候補作が発表されました。

とりあえず今回は芥川賞の話。

千葉雅也「エレクトリック」はすでに店頭に並んでいます。市川沙央「ハンチバック」は6月22日、乗代雄介「それは誠」は6月29日、石田夏穂「我が手の太陽」は7月13日、そして児玉雨子「##NAME##」は7月15日に発売となっています(多少前後すると思いますが)。

最近の芥川賞は、若い層を純文学へ誘う入り口になることを自ら任じていると映ります。その観点で眺めると、まず目を惹くのはアイドルグループやアニメ主題歌に詞を提供している児玉さん。↓の表紙やあらすじを見てもわかるとおり、いい意味で文学文学していない。単行本の小説を買ったことのない人に一歩踏み出させてくれる訴求力が伝わってきました。

市川さんの「ハンチバック」は第128回文學界新人賞受賞作です。デビュー作でいきなり芥川賞候補。

「私の身体は生きるために壊れてきた」という一文が頭に焼き付いて離れません。先天性の難病と闘っている著者は己の置かれた苦境をいかに創作へ落とし込み、世に認められる文学へと昇華させたのか。その軌跡に触れ、いろいろ学ばせていただきたい。

そして私の受賞予想は↓です。

昨年3回目の候補作となった「皆のあらばしり」が斬新でした。小劇場の二人芝居で観たくなる歴史学とミステリィのキメラ。「それは誠」もあらすじから近い匂いを感じます。いかにも青春小説っぽい趣き。今度は何を企んでいるのかな、とワクワクします。

ちなみに乗代さんは学生時代、テキストサイト「侍魂」に影響を受けていたとか。実は私も同じです。特に「ヒットマン事件簿」はノンフィクションだと思うけど構成が一級品でした。これについてはまた別の機会に。

7月19日の発表が楽しみです。

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