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「スター」は間接的に育てる

かつて脚本家の内館牧子さんが週刊プロレスで「プロレスラー美男子列伝」というコラムを連載していました。その中で秋山選手のことを「智将」と呼び、戦国大名の毛利元就にたとえていたのを覚えています。

たしかにプレイヤーとしての彼は優れたアイデアマンでした。いきなり新日本参戦をぶち上げたり、ほぼ独断でハードコア王座のベルトを新設したり(製作費も自腹で出そうとしたら三沢社長が払ってくれたとか)、日本武道館のシングルマッチで相手を秒殺したり。

保守的な空気が強くて言葉のプロレスに否定的な全日本プロレスやノアで、彼の前例に縛られない発想力及び有言実行力は際立っていました。

でも本当の意味でその知性がいかんなく発揮されたのは、むしろ指導者としてではないか、と思っています。

数々の偉業を成し遂げた秋山選手ですが、コーチとしても高い評価を受けています。「陰湿」キャラで支持を集めている全日本プロレスの青柳優馬選手や新日本プロレス・鈴木軍の金丸義信選手など、彼の影響下にいたレスラーは渋い仕事のできる頭脳派が多い。彼自身が小橋建太という大スターを対戦相手の側から輝かせていたことと関連がありそうです。

故・野村克也さんいわく「エースと4番は育てられない」。生まれ持った素質の占める割合が大きいと。でも逆に言えば「エースと4番以外は育てられる」わけです。ファンやマスコミはスターにばかり目を向けますが、彼らを支えたり輝かせたりできる存在がいなければ何も始まりません。

ヴォーカルがどれだけ歌唱力とカリスマ性に溢れていても、演奏がB級ならバンドとしての評価もそこまで。つまりスターを作りたければ、ライバルであれ仲間であれ、彼らのポテンシャルを最大限に引き出す存在を育てないといけない。それが育てられないはずのスターを間接的に育てることに繋がるのです。

この仕組みを早くから看破し、しっかり実践して成果を出している点にこそ、私は秋山選手の恐るべき知性を感じます。「智将」がいざなうDDTの未来に期待しましょう!



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