#昔話
月の砂漠のかぐや姫 第41話
大伴は、静かに話を続けました。
「羽磋よ。月の巫女と言うのはな、器だ。器なのだ。いつの頃からかは、わからん。ひょっとしたら、我らが祖が月から降りてこられたときに、人となったもの、獣となったもの、そして、風や水と一体となったもののほかに、器となったものがおられたのかも知れん。あるいは、もっと後に、なんらかの行いにより形作られたものかも知れん。とにかく、俺たちが調べた結果判ったのは、月の巫女とは器
月の砂漠のかぐや姫 第34話
馬だまりでは、朝の餌を喰いつくした馬たちが、自分たちの近くにぽつぽつと生えている下草を喰いちぎって、口さみしさを解消していました。しかし、大伴がいつも騎乗している馬だけは、飼い葉桶に首を突っ込んで朝食の真っ最中でした。
「すまんな、朝飯はしばらく待ってくれ」
大伴は話しかけながら愛馬を引き出すと、その背に鞍と革袋を置きました。その横で自分の愛馬に鞍を置きながら、羽は大伴に尋ねました。
大
月の砂漠のかぐや姫 第33話
「くそ、くそっ」
羽は、小さな声で罵りながら、小走りで自分の天幕に戻っていきました。
そもそも自分は誰に対して憤っているのか。竹姫に対してなのか、それとも他の誰かに対してなのか。
極度の興奮で混乱している羽には、それすらもわからなくなっていました。
考えてみると、大事なことを忘れてしまった竹姫に対しての怒りがありますが、それ以上に、感情的になってしまって竹姫を傷つけるための言葉を発してし
月の砂漠のかぐや姫 第23話
「姫っ」
「弱竹姫っ」
阿部と大伴は、祭壇の弱竹姫に声をかけました。いえ、声をかけずにはいられなかったのです。計画は阿部が立てたものですし、大伴もその内容を知っていました。ですから、弱竹姫が行う儀式が、目的を達成するための大事な儀式であることを、彼らは理解していました。
でも、その儀式を司る秋田に、彼らは信用を置けなかったのです。「秋田は何かを隠している」、その思いが彼らの内に、この儀式に